ハーレーダビッドソン・パンアメリカ1250リミテッド……3.155.900円

ボディカラーは、Olive Steel Metallic、Dark Billiard Gray、White Onyx Pearl (写真)の3色を準備。

かなり低めのシート高

2021年から発売が始まったパンアメリカ1250は、ハーレーダビッドソンが初めて手がけたアドベンチャーツアラーである。

パンアメリカ1250用として開発された水冷60度Vツインのレボリューションマックスは、後にスポーツスターSとナイトスターも採用。

3分割式構造のフレームや水冷60度Vツインエンジンを筆頭とする全パーツを新規開発したこのモデルは、当初はスタンダードとスペシャルの2機種展開だったものの、日本市場では2023年にスタンダードが廃止となり、その代わりにオンロード指向のSTが登場。

そして2026年の新作となるリミテッドは、スペシャルの後継にして上級仕様と言うべきモデルだ。

パッと見でわかるリミテッドの特徴は、SW-MOTECHと共同開発したアルミ製パニア/トップケース、アンダーガード、前後に追加された補助ランプ、STから継承したクイックシフターなど。

ただし、前後ショックの設定を刷新することで、アドベンチャーツアラーの世界ではかなり低めとなる815/840mmのシート高を実現したことも、スペシャルとは一線を画する要素である。

総容量120ℓのパニア/トップケースは、SW-MOTECHと共同開発。もちろん、ワンタッチでの脱着が可能だ。

なおパンアメリカ1250は世界で初めて、停止車に自動で車高が下がるアダプティブライトハイトを導入したモデルで、スペシャルの最も低いシートは830mmだった。

その数値もアドベンチャーツアラーでは低い部類なのだが、リミテッドの数値から推察すると、おそらく市場では、さらなる低さを求める声が多かったのだろう。

激戦区で勝利を収めるのは難しい?

今だから言うわけではないけれど、2021年に初めてパンアメリカ1250スペシャルを試乗したとき、僕はこのモデルが市場で大成功を収めるのは難しそうな気がした。

何と言っても、近年の大排気量アドベンチャーツアラー市場は超が付くほどの激戦区になっていて、このジャンルの先駆者であるBMWの独走を許すまじと、トライアンフやドゥカティ、KTM、ホンダ、スズキなどが、各社各様の魅力的な車両を販売しているのだから。

もっとも、パンアメリカ1250スペシャルの性能が、他メーカーのライバル勢に露骨に劣っていたわけではないし、全世界に膨大な数が存在するハーレーダビッドソンオーナーの中には、“待ってました‼”と感じた人がいたに違いない。また、ライバル勢とは明らかに方向性が異なる独創的な外観に惹かれた人も存在するだろう。

ただし、すでに豊富な選択肢が存在する中で、あえて新参者のパンアメリカ1250を選ぶライダーは、あまり多くはないんじゃないか?……と、僕は思ったのである。

ライバル勢とは異なる資質

ところが、2026年型リミテッドを体験した僕の中では印象が大きく変化。もっとも、その主な原因はパンアメリカ1250リミテッド自身ではなく、近年になって登場した、あるいは大幅刷新を受けた他社の大排気量アドベンチャーツアラー、ドゥカティ・ムルティストラーダV4や3代目のトライアンフ・タイガー1200、BMW R1300GSなどが、現代的な旋回性や俊敏さや速さを追求していること。

逆に言うならそれらを念頭に置いて今回の試乗に臨んだ僕は、パンアメリカ1250リミテッドにいい意味で昔ながらの資質、1980年代以前のオーソドックスな大排気量車に通じる、牧歌的で穏やかなフィーリングを感じたのだ。

まあでも、パンアメリカ1250は初代の時点でそういった資質を備えていたのである。可変バルブ機構のVVTを導入したエンジンは、高回転域まで軽やかに回る一方で、常識的なスピードで行うマッタリ巡航が心地良かったし、ライバル勢と比較すると着座位置が後方寄りで、軸間距離が長い(1585mm)ためだろうか、ハンドリングは敏捷性よりも安定性を重視している印象だった。

2021年の僕には、その乗り味がいまひとつピンと来なかったのだけれど、前述した他メーカーのライバル勢の進化に加えて、スペシャルよりも着座位置が低くなり、パニア/トップケースの導入によってリア荷重が増えたからだろうか、2026年型リミテッドを乗った僕は昔ながらの資質に“貴重”という印象を抱いたのである。

さて、何だか昔ながらを強調する展開になってしまったものの、最高出力が150HPで最大トルクが129Nmのパンアメリカ1250は決して遅いバイクではないし、ハーレーダビッドソンが昔ながらの特性を狙って作ったのかと言うと、それは何とも言えないところ。とはいえ、近年の大排気量アドベンチャーツアラーの進化の方向性に疑問を持っているライダーなら、ライバル勢とは一線を画するキャラクターにグッと来る可能性は十分にあると思う。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

現在のアドベンチャーツアラーの基準で考えると、パンアメリカ1250のガソリンタンクは前後に長い印象で、着座位置は後方寄り。撮影はイグニッションオフで行ったが、オンにしてアダプティブライトハイトが作動すると、無積載時のシート高は815/840mm、積載時は772/797mmとなる。

ディティール解説

スクエア基調で押し出しが強いフロントマスクは、4輪のアメリカンSUVを思わせる雰囲気。横長のヘッドライト上部には、バンク角に応じて照射範囲が変わるコーナリングランプを設置。
ワイドなハンドルバーは、近年のアドベンチャーツアラーで定番になっているテーパータイプ。ナックルガードは標準装備で、スクリーンは4段階の高さ調整が可能。
6.8インチTFTディスプレイはタッチパネル式で、ほとんどの情報は日本語表示。ライディングモードは、スポーツ、ロード、レイン、オフロード、オフロードプラス、カスタムの6種を準備。
左側スイッチボックス中央の十字ボタンは、ディスプレイの表示内容や電子デバイスの設定を変更する際に使用。上部にはクルーズコントロール用レバー/ボタンが備わっている。
右側スイッチボックスの十字ボタンはオーディオの調整用。セル/キルスイッチとハザードボタンは上部に設置。左右ともボタンが非常に多いが、操作性はなかなか良好だった。
シートは前後分割式で、メイン部は2段階の高さ調整が可能。なお容量21.2ℓのガソリンタンクはアルミ製。
メインシート下は電装系部品でギッチリだが、タンデムシート下にはETCユニットの収納に最適そうなスペースが存在。
レボリューションマックスのシリンダー挟み角は、かつてのV-ROD系/ストリート750系と同じ60度。ただし30度位相クランクを採用しているので、爆発間隔は90度Vツインと同じ0→270→450→270→450°……となる(位相ナシの60度Vツインは0→300→420→300→420°……)。
フロントブレーキはφ320mmディスク+ラジアルマウント対向式4ピストンキャリパー。純正タイヤはミシュラン・スコーチャーアドベンチャーで、サイドウォールに刻まれた社名ロゴはハーレー・ダビッドソンならでは。
ショーワ製前後ショックは、状況に応じて設定が変わるセミアクティブ式で、停止時に自動で車高が下がるアダプティブライドハイト機能を装備。トップブリッジ後方に横置きされるステアリングダンパーはオーリンズ。
アルミスイングアームは左右非対称デザイン。チューブレスタイヤを前提としたリムのサイズは、フロント:3.00×19・リア:4.50×17。リアブレーキはφ280mmディスク+片押し式2ピストンキャリパー。

主要諸元

車名:PAN AMERICA 1250 LIMITED
全長×全幅×全高:2345mm×1095mm×──mm
軸間距離:1585mm
最低地上高:154mm
シート高:815/840mm
キャスター/トレール:25°/108mm
エンジン形式:水冷4ストローク60度V型2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:1252cc
内径×行程:105mm×72.3mm
圧縮比:13
最高出力:150HP/8750rpm
最大トルク:129N・m/6750rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:圧送式ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:13.11
 2速:9.687
 3速:7.509
 4速:6.057
 5速:5.080
 6速:4.436
1・2次減速比:1.816・2.526
フレーム形式:トレリス(3分割構造)
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ47m
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR19
タイヤサイズ後:170/60R17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:299kg
使用燃料:無鉛ハイオクガソリン
燃料タンク容量:21.2L
乗車定員:2名
燃料消費率:5.6ℓ/100km