MASERATI 200S
マセラティの歴史を守る「マセラティ クラシケ」

マセラティは、ブランドの歴史的車両を単なる過去の遺産ではなく、未来へ受け継ぐべき重要な資産と位置付けている。その取り組みの中核を担うのが、2021年にモデナでスタートしたマセラティ クラシケだ。
同ブランドの伝統的な技術と職人技を受け継ぐ「BOTTEGAFUORISERIE(職人工房)」プロジェクトの一部として活動している。歴史的モデルのレストアや認定を行う「Officine Classiche」に加え、歴史資料やコレクションの保存・管理も行っている。
マセラティ クラシケの象徴的な取り組みが、真正証明書(Certificate of Authenticity)の発行だ。専門家による委員会が各車両について技術仕様や履歴資料、マセラティのアーカイブを詳細に調査し、オリジナル性や歴史的背景を確認する。この認定制度は製造から20年以上が経過した車両のほか、特別仕様車や限定モデルにも適用される。
30台のみ生産された希少なマセラティ 200S

今回公式認定を受けた200Sは、1955年から1957年にかけて製造された2シーターのレーシングカーだ。アルミ製ボディを採用し、生産台数はわずか30台。1950年代のモータースポーツシーンを彩ったマセラティの代表的なレーシングモデルのひとつとして知られている。
今回認定された車両には特別な歴史もある。1980年代に、「マセラティの歴史そのもの」とも称されるエルマンノ・コッツァ氏の主導でレストアされた。1933年生まれのコッツァ氏は1951年にマセラティへ入社。メカニックとしてキャリアをスタートした後、実験部門や技術部門で経験を積み、後にマセラティ歴史アーカイブの設立にも携わった。現在もモデナにある本社を定期的に訪れており、今回の認定作業でもチームを支援したという。
フェラーリへの対抗策として生まれた200S

200Sの開発は1950年代前半に始まった。当時のマセラティは、競争が激化するスポーツカーレースの世界で存在感を維持するため、ニューマシンの開発に迫られていた。その背景には、「フェラーリ500モンディアル」の登場によって、それまで活躍していた「A6GCS」の競争力が低下しつつあったことがある。
200Sには軽合金製の2.0リッターエンジンを搭載。ロッカーアームで駆動するDOHC機構、ツインイグニッション、ウェーバー製キャブレターなどを採用し、パフォーマンスと扱いやすさの両立を目指した。
デビュー戦は1956年6月24日にイタリアで開催されたスポーツカーレース「トロフェオ スーペルコルテ マッジョーレ」だった。当初は期待した結果を残せなかったものの、マシンのポテンシャルは高く評価され、量産化が決定する。その後の量産型では、イタリアのシャーシメーカー、ジルコ(Gilco)製のチューブラースペースフレームを採用するとともに、ボディ製作も当初の小規模なカロッツェリア、フィアンドリ(Fiandri)からレーシングカー製作で知られるファンツッツィ(Fantuzzi)へと引き継がれた。
200Sが残したモータースポーツの足跡

レースシーンでは、フランス人ドライバーのジャン・ベーラが200Sの性能を引き出しバーリGPで速さを見せると、カステルフサーノやカラカスで勝利を収めた。また、ジョルジョ・スカルラッティは200SIで1957年のジロ ディ シチリア(シチリア1周レース)を制覇した。
今回の200Sの公式認定は、単なるクラシックカーの認証にとどまらない。認定車両が100台を超えたマセラティ クラシケの活動は、ブランドが築いてきたモータースポーツの歴史と技術的遺産を未来へ引き継ぐ取り組みとして、今後も重要な役割を担っていくことになりそうだ。

