
マツダの新車ラインナップからロータリーエンジン搭載車が消滅して早くも13年が経った。もはやEVの発電用エンジンとしてしか存続していないが、2023年のジャパンモビリティショーに展示されたMAZDA ICONIC SPには次世代ロータリースポーツとして期待を込めるマニアが多い。やはりRX-7やRX-8と続いたロータリースポーツに心酔しているユーザーは少なくないはずだ。

2026年5月24日に開催された「富士山オールドカーフェスタ2026」にもFC3S型のサバンナRX-7が展示されていた。こちらはオーナーを見つけることができず取材を断念したのだが、ロータリーエンジンのご先祖であるコスモスポーツのオーナーを見つけることができた。この1971年式コスモスポーツのオーナーは82歳になる佐野年充さん。82歳という年齢を聞いて驚いてしまったほど、佐野さんは若々しい。今も電気工事を請け負う仕事を続けられているせいだろう、年齢を感じさせない外見や話し振り。お話しを聞かせていただくと、折々にジョークを交えながら快活に説明していただけた。

佐野さんがコスモスポーツと出会ったのは、まさに偶然。地元にできたばかりのユーノス店へ出向き発売されて話題になっていたユーノス・ロードスター(もちろんNA6)を買うためだった。お気に入りでずいぶんとドライブを楽しまれたそうだが、数年経って点検のためディーラーへ持ち込むと見慣れぬクルマが展示されている。それこそが現車のコスモスポーツだった。それが今から32年前のこと。当時はまだコスモスポーツの売り物がショップ広告などに散見されたもの。とはいえ珍しい物件には違いない。その場でマジマジとコスモスポーツを観察すると、結構程度が悪い。ボディはボコボコで塗装も傷んでいる。どうしたものかと思っていると担当セールスがやってきた。

冷やかし半分で売値を聞いてみると、なんと155万円だという。その当時でも倍以上の相場だったから程度の悪さには目を瞑り購入することに決めてしまった。当時すでに20数年落ちのロータリースポーツだから手がかかることは当初から織り込み済み。とはいえ数度ドライブに出かけるも自走で帰ることができない状態が続いた。そこで考えたのがオーナーズクラブへの加入だ。

その当時はコスモスポーツオーナーズクラブの会長が同じ静岡県在住の方だった。そこで連絡を取り合いクラブへ加入することになる。するとクラブ内には猛者が揃い、エンジンのオーバーホールなどお手のものという人が数人いることが判明。そこで親しくなったクラブ員に相談することにされた。

その結果、エンジンのフルオーバーホールを敢行することになる。すると佐野さんのコスモスポーツは快調なコンディションを取り戻した。ボコボコだったボディも修理することとなり、手に入れたばかりの頃とは見違えるようになった。それ以来、長年乗り続けているが、トラブルらしいトラブルには遭っていない。やはりエンジンの種類を問わず古いクルマは一度徹底的に修理するのが長い間維持する近道になるのだ。

同クラブでは2009年にドイツ在住のロータリーエンジンマニアでクラブ員でもある人物の元を訪ねる国際ミーティングを実施した。実に国内メンバーのコスモスポーツを船で輸送して現地を走るという壮大なイベントだった。筆者も同行取材する幸運に恵まれたが、その時に佐野さんをお見受けした記憶がない。尋ねてみると「飛行機が嫌いなんだよ」とのお答え。「あんな恐ろしいものに乗りたくない」ということで旅行はクルマか列車に限られている。お話ぶりも思考もユニークな佐野さんなのだ。