
「第1回ゆずの里 毛呂山町 昭和平成名車展示会」は埼玉県毛呂山町の町長が先頭に立ち、有志や日本旧軽車会の協力を得て初開催に漕ぎ着けることができた。町長の情熱は熱く、旧車イベントを開催することで町おこしの一環にしたいという思いを開会式で熱弁されていた。町長である井上健次さんは自らも旧車ファンであり、当日もご自身の所有車であるベレットで参加されていた。そこでまず、井上町長のベレットを取材させていただいた。

聞けば井上町長は大のクルマ・バイク好きであり、実に9台もの旧車と5台のバイクを所有されているそうだ。だから今まで旧車イベントを開催されなかったのが不思議なくらいの人物。なかでもお気に入りは3代目トヨペット・コロナで2台も同時に所有されている。さらにはライバルである410ダットサン・ブルーバードも所有されているという根っからの旧車マニアだ。

そのほかの所有車はネオクラシックカーに分類される比較的新しい年式のモデルが多い。5台あるバイクのうち、ホンダCBX400Fは新車から維持されてきた貴重な個体。スズキ、ヤマハ、カワサキとそれぞれ所有されているが、お気づきだと思うが所有車はすべて国産車。2輪も4輪も国産旧車で統一されているのだ。

そんな井上町長がベレットと出会ったのはまさに偶然。たまたま通りかかった解体業者の軒先に青いベレットが置いてある。若い頃から憧れてきた車種であり、叔父がその当時ベレット1600GTRに乗っていた。いわばベレットは思い出のクルマなので気にはなったが、その日はそのまま通り過ぎた。その数日後、同じ場所を走っていると青いベレットがそのまま置いてある。これは運命かとばかりクルマを止め、業者に話を聞きに行くこととした。

それが10年ほど前のことで、車検が残った状態で140万円とのこと。さらに話を聞けば前オーナーはいすゞディーラーの工場長だそうで、売りに出すために知り合いの解体業者の敷地に置かせてもらっていたという。解体業者の敷地にあるから解体予定車であることも考えられたが、前オーナーがディーラーの工場長であるなら安心できる。その場で即決されたのだ。

手に入れたベレットはヘッドライトにグリルが装着され、テールランプが角形になった最終モデル。グレードは1800GTで、実はDOHCエンジンを搭載するGTRに肉薄する性能の持ち主。もちろん1600GTより瞬足なので密かな人気グレードなのだ。しかも当時の新車価格はGTRより24万円も安かったから売れた数も少なくない。最終モデルはスタイル面で不人気であり、最上級グレードのGTRでもないため実は狙い目のグレードでもある。

井上町長の場合、狙って探したわけではなく偶然の出会いだったが、これも運の一つだろう。購入時に車検が残っていたので現金を支払うとそのまま乗って帰ることができた。だが、乗り出してしばらくするとエンジンがノッキングを起こすようになる。ノッキングとはエンジンからカリカリと音がしたり振動が出る症状。キャブレターの調整が狂ったり点火プラグが寿命を迎えたことなどが原因になる。

そこでいすゞ車の専門店に問い合わせてみたが、自社で販売した車両のメンテナンスで手一杯とのこと。基本的に他店で購入した車両の面倒を見てくれないのだ。とはいえ、これは店を責めるべきではなく、むしろ自社販売車両を優先するのは補修部品が少ない国産旧車なら当然のこと。そこで井上町長は地元で旧車に強いショップへ依頼して修理をしてもらうことにした。

ノッキングが解消されるとベレット1800GTらしい走りを取り戻した。また購入時から全塗装とアルミホイール以外は比較的ノーマルだったこともあり、井上町長としてもそのままの状態を維持している。時折最終モデルを中期の前後スタイルへ変更されている個体を見かけることもあるが、スタイルもあえてそのまま。大きなトラブルでもない限り、このまま乗り続けられることだろう。

