1970年式ホンダLNⅢ360デラックス。

旧車イベントを取材していると、特に関東近辺の場合同じクルマを何度も見かけることが多い。ところが2026年4月5日に埼玉県毛呂山町で開催された「第1回ゆずの里 毛呂山町 昭和平成名車展示会」では、初見のクルマを数多く見つけることができた。と同時に懐かしいクルマに再会することもできた。それがこのLNⅢなのだ。

上下に開くテールゲートが特徴。

12年ほど前にG-ワークスという雑誌で取材したホンダLNⅢで、オーナーも同じ杉本一彦さん。その当時は50代だった杉本さんも今では67歳になられた。ずいぶんと久しぶりの再会だったのだが、お互い顔を見合わせて「ご無沙汰してます」と改めて取材させていただくことにした次第なのだ。

合わせホイールなので純正の裏側を組み合わせてワイド化している。

実に杉本さんがこのLNⅢを手に入れたのは1980年のこと。以前の取材時でも長年乗っていることを強調させていただいたものだが、それから12年を経た今も乗り続けられている。都合46年間も車検を継続していることに感嘆するほかないが、さすがにLNⅢも経年による疲れが見えてきたことも事実。購入してすぐに全塗装されているのだが、その下からは容赦なくサビが侵食してきた。また当時は新品部品が豊富に揃ったのでメッキパーツはほとんどを新品に交換したのだが、メッキの輝きも徐々に薄れてきた。

本来シングルキャブ仕様だがツーリング用のツインキャブをシリンダーヘッドごと入れ替えた。

杉本さん曰く「売り時を逃してしまった」ということで、もはや手放すことはないだろう。実はLNⅢの前にもN360に乗っていたのだが、どうせならワゴン風に乗りたくなって乗り換えたのだ。その当時は中古車も豊富だったが、杉本さんは自動車雑誌の個人売買欄に出ていたLNⅢを手に入れた。気づきかもしれないが、フロントのデザインはNⅢになる前のN2までのもの。このデザインが好きだったし、新品部品がまだまだ供給されていたから顔面ごと入れ替えているのだ。

自作したケースを用いたエアクリーナーにしている。

とはいえ新品部品を大量に買ったので塗装する予算が残っていなかった。そこで考えたのが自動車整備学校の生徒たち。彼らの教材として提供するからと、塗料代だけで全塗装することに成功したのだ。塗装を終えたボディはローダウンさせるとともに合わせホイールをワイド化。これだけでもスタイルは大きく変わる。さらにはエンジンにも手を加えた。輸出用純正ピストンに変更してツーリング用のツインキャブをシリンダーヘッドごと入れ替えた。だが、ハイカムや圧縮比は変えず耐久性を重視して仕上げられた。

モトリタのウッドステアリングがよく似合っている室内。

以前よりよく回るエンジンになると欲しくなるのがタコメーター。ただ、後付けメーターにはしたくなかったので、メーターパネルごとツーリング用に変更している。今では信じられないことだが、それほど当時は純正部品の供給具合が良かったのだ。とはいえ長年乗っているとトラブルにも遭う。エンジンから振動と異音が発生するようになり、原因を調べるとクランクベアリングが寿命を迎えていた。またプライマリーギアも欠けてしまったので、エンジンを降ろして組み直すことになった。

タコメーターは驚きの1万rpmスケール。

基本的にカスタムもオーバーホールも杉本さん自ら行っている。以前の取材時には自宅の車庫でホンダZを全塗装されていたほど。LNⅢは塗装してもらったが、その後は板金塗装にもチャレンジするようになった。そこまで腕を上げると欲しくなるのがガレージ。ご自宅の車庫は屋根もない普通の駐車場。そのため作業するにも天気に左右されてしまう。そこでどうされたかといえば、なんとガレージではなく少々離れた場所にある古民家を買ってしまうのだ。

シフトレバーを社外品に変更している。

自宅から離れているものの、折を見ては古民家に向かい自分好みの仕様へリフォームを続けた。リフォームもほぼ終わった今は自宅にいるより古民家にいる時間が長いそう。環境が整うと趣味のクルマは自然と増える。今ではサニートラックやシボレー・シェビーⅡ NOVAワゴンまで揃い、バイクも3台になった。いずれ古民家を見せてくださいと頼んで取材を終えた。

運転席にクッションを敷いて保護している。