ハーレーダビッドソン ロードグライド3……5,535,200円~(2026年3月27日発売)



リヤの接地感が大幅アップ! 段差で振られにくくなった

筆者がハーレーのトライクに試乗するのはこれで2回目だ。最初は6年前の2020年で、車種はCVOトライグライド(638万円~)だった。トライク特有の挙動や操縦技術に最初は戸惑うものの、絶対に立ちゴケしないという安心感の中でハーレーのビッグツインを堪能できることから、気が付けばウェット路面のライドを楽しんでいた。

そんなハーレーのトライクが、2026年モデルでシャシーを刷新し、主にリヤサスペンションを大幅にアップデートしたという。デファレンシャルギヤなどの構造に詳しくない人でも、リヤのホイールトラベル量が倍増したと聞けば、その進化ぶりが容易に想像できるだろう。

今回は旧型シャシーのトライグライドウルトラとの比較試乗ができたことで、その進化ぶりがより明確となった。Uターンのような小回りでは、ホイールベースが50mm短く、アウト側への車体の傾きが少ない旧型シャシーの方がクイックに曲がれる印象だが、それ以外のほぼすべてのシーンにおいて新型シャシーの方が好印象だ。
特に新旧の差が顕著なのは、リヤの左右輪が交互に段差を乗り越えるような状況だ。こういうシーンにおいて、旧型シャシーはライダーの頭が左右へ強く振られるのに対し、新型シャシーのロードグライド3は、その強さと幅が1/3ほどに軽減されている。
また、新型シャシーはホイールトラベル量が増えた影響か、旋回中にイン側のリヤタイヤが長く路面を捉え続けてくれるようで、総合的な接地感が向上している。加えて旧型シャシーは、凹凸の多いアスファルトを走っていると常に落ち着きがなく、ハンドル操作で舵を修正しつつ真っ直ぐ走らせる必要があったが、新型はその度合いがだいぶ減っているのだ。
トライク=3輪という特性上、バイクほどコーナリングスピードを上げられないが、ハンドルを切り始めた瞬間から旋回力が立ち上がり、横Gを感じながら曲がる感覚は、レーシングカートに近いと言えるだろう。ハンドル操作には腕や体幹の筋力、そして独特のコツが必要だが、ハードルが高いからこそ、これを乗りこなせたらさぞクールだろうなと思ってしまうのは自分だけではないはずだ。
500kgオーバーの車体を余裕で加速させる潤沢なトルク

エンジンは排気量1923ccの空油冷45度OHV4バルブV型2気筒で、170Nmもの最大トルクを3500rpmという低い回転域で発生する。

同一排気量のパワーユニットを搭載するローライダーSTやブレイクアウトなどは、スロットルを急開しようものなら凄まじい突進力を見せる。これに対してロードグライド3は、それらよりも車重が200kg以上も重く、しかも3輪タイヤによる転がり抵抗の増加もあってか、常に余裕のある力量感といった印象だ。もちろんスロットルの開け方次第では、たいていの4輪を置き去りにできそうなダッシュ力を見せるが、速度を上げるほど操舵に腕力が必要となるので、潤沢なトルクを味わいつつ加減速を楽しむのが似合っているだろう。
今回は試乗時間が短かったため、4種類から選べるライディングモードは「ロード」しか試せなかったが、スロットルの開度変化に対するレスポンスは適切で、実に扱いやすい。特にトライクの場合、旋回中に開けると弱アンダー、閉じると弱オーバーステアとなるので、スマートに乗りこなす上においてこの優良なレスポンスは大きな武器となろう。
今回は大柄なカメラマンをパッセンジャーシートに乗せてもみたが、2名乗車であってもエンジンの出力的にはまだまだ余裕があることを確認。そして、何より感心したのは、微速~低速域でのタンデム走行時の安定感だ。3輪なので当然ながらフラつかないし、Uターンのような小回りも楽にこなせてしまう。二輪特有の微速域でのフラつきは、パッセンジャーにとって慣れるまでは恐怖でしかない。そうした心理的負担を最初から取り除けるトライクは、そこにこそ大きな需要があるのだろう。

2026年モデルの進化ポイントで忘れてはならないのが、リバースシステムの操作方法だ。従来は右側スイッチボックスにあるボタンを押すことで後退していたが、新型はこの操作がスロットルに変更された。これにより、ハンドルをしっかり握って操舵できるようになったのはプラス要素だ。一方で、モーターの反応がオンとオフしかなく、どんなにていねいに操作してもギクシャクしがちなのは難点と言える。とはいえ、またがったまま足の力だけで車両をバックさせるのはほぼ不可能なので、現状はこのリバースシステム自体に慣れるしかないだろう。
普通自動車MT免許で乗れるほか、法的にはヘルメットの着用義務すらないハーレーのトライクは、まさにフリーダムを象徴するような乗り物だ。その一方で、高速道路での法定最高速度は80km/hという足枷もある。よって、東京から名古屋辺りまで合法的に移動するなら、トヨタのアルファード並みに高額なロードグライド3であっても、N-BOXのような軽自動車の方が快適かつ速く到着するはずだ。それでも、「圧倒的な安定感の中でハーレー特有のエンジンフィールが味わえる」という点では唯一無二であり、いつかこれでロングツーリング(自動車に分類されるから“ロングドライブ”か)を試してみたいと思っている。
ディテール解説











ロードグライド3(2026年モデル)主要諸元
●ディメンション
長さ 2,615 mm
幅 1,460 mm
シート高、非積載時 710 mm
最低地上高 140 mm
レイク 26°
トレール 96 mm
ホイールベース 1,720 mm
タイヤ、タイプ Dunlop™ハーレーダビッドソンシリーズ、バイアスブラックウォール(フロント)、ラジアルブラックウォール(リア)
タイヤ、フロント仕様 MT 130/60B19 M/C 61H
タイヤ、リア仕様 P215/45R18 83T
燃料容量 22.7 l
オイル容量(フィルターあり) 4.7 l
車両重量 537 kg
ラゲッジ積載容量(容積) 0.06 m³
●エンジン
エンジン Milwaukee-Eight™ VVT 117
ボア 103.5 mm
ストローク 114.3 mm
排気量 1,923 cc
圧縮比 10.3:1
フューエルシステム 電子シーケンシャルポートフュエルインジェクション(ESPFI)
エキゾースト 2-1-2 デュアルエキゾースト
●パフォーマンス
エンジントルクテスト方法 EC 134/2014
最大トルク 170 Nm
エンジントルク(rpm) 3500
馬力 105 HP / 78 kW @ 5020 rpm
燃費テスト方法 EU 134/2014
燃費経済性 6.9 l/100 km
●ドライブトレイン
プライマリードライブ チェーン、ギア比:34/46
ギア比(全体)1st 10.534
ギア比(全体)2nd 7.302
ギア比(全体)3rd 5.423
ギア比(全体)4th 4.392
ギア比(全体)5th 3.742
ギア比(全体)6th 3.157
●シャシー
フロントフォーク 49 mmデュアルベンディングバルブ
リアショック 手動調整可能なエマルジョンリアサスペンション
ホイール、フロントタイプ グロスブラック、機械加工による5スポーク、アルミキャスト
ホイール、リアタイプ グロスブラック、機械加工による5スポーク、アルミキャスト
ブレーキ、キャリパータイプ フロント:32 mm、4ピストン、リア固定/36 mmフロートピストン統合パーキングブレーキ
ブレーキ、ロータータイプ デュアルフローティングローター(フロント)、固定ローター(リア)


