ML55
本格オフローダーではなくクロスオーバーとして

1990年にW460からW463へと進化を遂げた際に、扱いやすさが増したことで世界的なヒットを記録した「Gクラス」。これを機に高級SUV市場は活況を呈することとなるのだが、その傍で、メルセデス・ベンツはその後継モデルの開発を水面化で進めていた。
当初そのパートナーとなったのは三菱自動車(パジェロとの共有化を進めていたという)だったが、お互いの技術的問題から1990年代初頭に計画は頓挫。その代わりメルセデス・ベンツ製乗用車初の海外生産拠点となるアメリカ・アラバマ州タスカルーサ工場で生産するモデルとして、メルセデス・ベンツ社内で開発が継続されることとなった。
ここで彼らはGクラスのようなハードコアな本格的オフローダーではなく、SUV需要の広がりによって脚光を浴びていた、より乗用車的なクロスオーバーSUVへとシフトすることを決意する。こうしてタスカルーサ工場初のプロダクトモデルとして1997年に発表されたのがW163型「Mクラス」である。
347PSを発生する5.4リッターV8を搭載

シャシーは新規開発のスチールラダーフレーム。特筆すべきはフロント、センター、リヤにデフを配置しフロント48%、リヤ52%にトルクを配分するフルタイム4WDシステムで、デフロックを廃して2速トランスファーケースに自動ブレーキ制御でその代わりを担う4輪電子トラクションシステム(4-ETS)を装備していること、そしてこのクラスのSUVとして、初めて電子式のスタビリティコントロールシステムを装着していることが大きなトピックといえた。
エンジンは2.3リッター直4、4.3リッターV8ガソリンから2.7リッター直5ディーゼルターボなど様々なエンジンが搭載されたが、1999年に「E55 AMG」や「CL55 AMG」と同じ347PSを発生する5.4リッターV8 SOHC M113E55ユニットを搭載した「ML55 AMG」がデビューした。
トランスミッションは5Gトロニック(5速AT)で、0-100km/h加速6.9秒、最高速度232km/hを記録している。またエクステリアには専用のフロントバンパーやオーバーフェンダー、前後285/50R18サイズのタイヤ、9J×18インチの専用アロイホイールを装着。
コンパクトなサイズと扱いやすさで

一方のインテリアは基本はそのままに、高品質なレザーやウッドパネルが奢られ、ハイパフォーマンスバージョンというより、高級フラッグシップとしてのキャラクターを強調した内容となっていた。
その後Mクラスは2002年モデルでライトやバンパー周りのフェイスリフトを中心としたマイナーチェンジを実施。それに伴いML 55も後期型へと進化するが、エンジンスペックなどは基本的に同一。しかしながら0-100km/h加速6.7秒、最高速度235km/hとカタログデータはわずかながら進化を遂げている。
発売当初はタスカルーサ工場でのクオリティ管理の問題が露呈したMクラスだったが、1999年からヨーロッパ市場向けにオーストリアのマグナ・シュタイアでも生産が行われるようになると品質も安定。全長4650mm、全幅1895mm、全高1805mm(数値はML55 AMG)というコンパクトなサイズと扱いやすさもあって、多くのカスタマーの支持を集めることとなった。
歴史に残るパイオニアとして

他のモデルと違い、W163型MクラスではML55以外のモデルがAMGから送り出されることはなかったが、その存在はライバルに影響を及ぼし、以降高級SUV界ではスーパーカーも顔負けのパワーウォーズが展開されることになる。
その意味においてもML55 AMGは歴史に残るパイオニアとして君臨し、やがて2005年に2代目W164型へとバトンタッチした。

