ディオが好き。理由はない。でも、その愛は本物だった

かつて、これほど多くのディオがひと所に並ぶ光景を見たことがあるだろうか。取材スタッフも訪問前になんとなく想像はしていたものの、いざ実車の群れを目の前にすると、思わず笑ってしまうほどの迫力だった。オーナーのペコさんに「ディオのどこがそんなに良いんですか?」と聞くと、返ってきた答えは実にシンプルだった。
「僕にとってディオは、かわいいじゃなくて“カッコいい”なんです! カワサキのマッハやKH125など、バイクはいろいろ所有してきましたけど、長い付き合いなのは二十歳過ぎから乗り続けているディオだけなんです」
とくにペコさんが惹かれているのは、初期の縦型2ストエンジンを搭載したディオ。かつては中古車が手に入りやすく、人気車ゆえにタマ数もパーツも豊富だった。部品取り車を丸ごと入手し、必要なパーツを確保することも珍しくなかったという。しかし気付けば、余剰気味だったはずの中古車は急速に姿を消し、外装や純正デカールも入手困難な存在に。だからこそペコさんは、可能な限り良いコンディションで残しておきたいと考えている。



カウルほしさに1台購入!? もう誰も止められない

「この色のカウルが欲しかったから車体ごと買いました」。そんな話も、ペコさんにとっては特別なことではない。年々入手が難しくなる純正外装やデカールは、部品単体で探すより車両ごと手に入れた方が早いこともある。その積み重ねが、現在の40台規模というコレクションにつながっている。
コレクションのポイントは“特別仕様車”だという。ロスホワイト、アーバングリーンなど、大好きなカラーから集め始め、そのうち「全部を揃えたい」という思いへ発展。気が付けばガレージは、まるで歴代ディオの資料館のような空間になっていた。
ただ集めるだけじゃない。美しく整理されてこそ価値がある

圧巻なのは台数だけではない。ガレージの壁面収納には、ディオ用の外装パーツやシート、ハンドル周りの部品が色ごと、種類ごとに美しく整理されている。互換性が効きにくく、今となっては貴重な外装パーツも多く、まさに“必要なものを必要なときに取り出せる”コレクターの理想形だ。


さらに、懐かしのKRP、マルゼン、Be2、リアライズ、ビームーンファクトリーなど、当時を知る人なら思わず反応してしまう、チャンバー等の社外製パーツもストック。なかにはレガスピード製チャンバーのように、付属品も未開封のまま保管されたデッドストック品まである。車両だけで満足せず、当時の空気ごと残そうとしているところに、ペコさんの本気度がにじむ。

新品のレガスピード製Dio用チャンバー。付属品まで残るデッドストック品で、当時を知るスクーターファンなら思わず反応してしまう逸品。
新居のガレージにはディオ、雨ざらしの駐車場にはクルマ!?

ペコさんはプロのメカニック。新居には屋根付きのガレージが設けられ、その中にはディオがぎっしりと収められている。一方で、クルマは屋外の駐車場へ。バイク好きなら思わずうなずいてしまう光景だが、家族の理解がなければ到底成立しない。奥さんはきっとおおらかな女神に違いない。
所有車の多くは、基本的にノーマル状態で保管されている。旧車スクーターというとカスタムベースとして見られがちだが、ペコさんにとっては“当時の姿を残すこと”も大切なテーマ。ディオを1台のスクーターとして見るだけでなく、その時代のカルチャーや記憶ごと愛している。だからこそ、ペコさんのガレージには単なるコレクション以上の魅力がある。
“好き”を残すことが、未来への財産になる

40台ものディオが並ぶ姿はもちろん圧巻だが、本当にすごいのは、それぞれの車両を“ちゃんと残す”ための情熱と手間を惜しまないところ。入手困難な純正デカールや外装パーツを保管しているのも、いつか必要になる日を見越してのこと。ここまで来ると、それは単なる趣味ではなく、80〜90年代スクーター文化の保存活動と言ってもいい。
次回は、この膨大なコレクションの中から、ペコさんが大切に守り続ける珠玉の5台をピックアップ。アーバングリーン、ロスホワイト、シルバーパープルなど、今となっては希少な歴代ディオをじっくり紹介していこう。

入手困難な純正デカール類。古いスクーターをノーマル状態で維持するうえで、外装パーツやデカールの確保は避けて通れない。

当時の販促グッズも大切に保管。広末涼子×ライブディオのビジュアルは、30年近く経った今見ても青春の記憶を刺激する。

KRP、マルゼン、Be2、リアライズ、ビームーンファクトリーなど、懐かしの社外チャンバーもストック。当時のカスタムシーンを物語る重要アイテムだ。
※この記事は月刊モトチャンプ2020年12月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】
