連載

【歴史を飾ったライバル対決】

ダイハツ・シャレードから始まったコンパクトカー

1950年代から1960年代にかけての日本の大衆車黎明期は、名車と呼ばれる「ブルーバード」や「コロナ」、そして「サニー」や「カローラ」は、1.0Lクラスのエンジン搭載モデルから始まった。しかし、1970年を迎える頃には市場の要求に応えて徐々にボディも大きく、エンジン排気量も1.5L以上が主流となった。

1977年11月にデビューしたリッターカーの元祖、ダイハツ「シャレード」

ところが、1970年代の排ガス規制強化やオイルショックによって、省エネと省資源化が叫ばれるようになって、再びコンパクトなクルマ、コンパクトカーが求められるようになった。これに応えたのが、リッターカーの元祖とも言えるダイハツ「シャレード」である。シャレードは、1977年11月に登場して、1.0Lクラス乗用車としては世界初となる3気筒4ストロークエンジン、最高出力55ps/最大トルク10.5kgmを発揮する1.0L 直3 SOHCエンジンを搭載。車重が630~660kgと非常に軽量だったので、燃費の良さとともに軽快な走りによってヒットモデルとなった。

1977年11月にデビューしたリッターカーの元祖、ダイハツ「シャレード」

そのような状況下で、軽並みの燃費が狙えて、それでいて室内空間が確保でき、高速道路での長距離でも余裕の走りができる排気量1.0L~1.3Lエンジンを搭載したコンパクトカーが1980年代に注目されるようになった。

シャレード以降、多くのコンパクトカーが市場に登場したが、なかでも大ヒットしたのが、ホンダ「シティ」と日産「マーチ」だった。見た目もコンセプトも大きく異なるシティとマーチだったが、当時の市場が求めていたコンパクトカー像に上手く合致したのだ。

トールボーイの愛称で大ヒットしたホンダ・シティ

1981年10月にデビューしたトールボーイ、ホンダ「シティ」

「シティ」は、「シビック」の下に位置するベーシックカーという位置付けで1981年10月にデビューした。全長の短いコンパクトカーの室内空間を最大にするため、1570mmの全幅に対して1470mmの全高を持った“トールボーイ”と称した背高ノッポのユニークなスタイリングが最大の特徴である。“カッコいいクルマ=背が低い”というクルマの常識を打ち破った画期的なスタイリングを採用したのだ。

ホンダ「シティ」のサイドビュー

ボディは2ドアの2BOXのみで、インテリアは欧州風のシンプルかつ使い勝手の良さを追求。ヘッドスペースが十分確保されたので、前席・後席とも開放感がある広い空間が実現され、トールボーイとしてのメリットが室内空間に最大限生かされた。

ホンダ「シティ」のコクピット
ホンダ「シティ」の室内

パワートレーンは、コンパクト化された新開発の最高出力67ps/最大トルク10.0kgmの1.2L 直4 SOHCエンジンと、4速&5速MTおよびホンダマチック4速ATの組み合わせ。エンジンもユニークで、ホンダが得意とする高速型のショートストロークでなく、低速トルクや燃費に有利なロングストローク(φ66mm×90mm)とした。また、チューニング違いでグレードによって67psだけでなく、63psと61psが用意された。

ホンダ「シティ」搭載の1.2L直4 COMBAXエンジン

車両価格は、若者でも入手可能な76万円&78万円(5速MT)に設定。当時の大卒初任給は12万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約146万円&150万円に相当する。

1981年10月にデビューしたトールボーイ、ホンダ「シティ」

発売当初は独特なスタイリングに否定的な意見もあったが、蓋を開けると常識にとらわれない、斬新で個性的なモノを好む若者の心を掴み、大ヒットモデルになった。

世界基準のリッターカーを目指して誕生した日産・マーチ

1982年10月にデビューした”マッチのマーチ”、日産「マーチ」

盛り上がりつつあったコンパクトカーブームに対応して、日産は発売前年の東京モーターショーでプロトタイプを公開し、車名を一般公募した。そして、選ばれた車名は「マーチ」と決まり、1982年10月に市場デビューを果たした。

日産「マーチ」のコクピット
日産「マーチ」の室内

マーチは、当時の人気アイドルであるマッチ(近藤真彦)をTVコマーシャルに起用し、“マッチのマーチは、あなたの街にマッチする”というキャッチコピーが使われた。“シティに対抗して街(マチ)になったのでは?”という冗談も飛び交ったという。

1982年10月にデビューした日産「マーチ」の優れた空力性

ボディは、3ドアハッチバックのみで、空力特性はクラストップレベルのCd値0.39を実現。内外装は、著名なイタリア人デザイナーのジウジアーロが中心となってデザインし、フラッシュサーフェス化されたウェッジシェイプのフォルムを特徴とし、親しみのあるスタイルと運転のしやすさが特徴だった。

日産「マーチ」搭載の1.0L直4エンジン

パワートレーンは、最高出力57ps/最大トルク8.0kgmを発揮する日産初のアルミ製1.0L 直4 SOHCと4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式はFF。エンジンは約69kgの軽量化に成功し、60km/h定地走行で32.5km/Lという優れた燃費性能が達成された。

1983年9月に追加された5ドアの日産「マーチFT」
1983年9月に追加された5ドアの日産「マーチFT」

車両価格は、廉価な4速MT仕様で63.5万~79.8万円(5速MTは2.6万円高、3速ATは6.2万円高)。現在の価値で約117万~147万円に相当する。初代マーチは欧州でも「マイクラ」の車名で販売され、日本と同様欧州でも人気を獲得した。

マーチ スーパーシルエット:初代マーチは、歌手で俳優の近藤真彦さんをイメージキャラクターに迎え、「マッチのマーチ」や「スーパーアイドル」といったキャッチコピーで、若い女性を中心に高い関心を集め、一躍人気モデルの仲間入りを果たした。この車両は、その近藤真彦さんのために製作されたスペシャルカーで、当時スカイライン・ブルーバード・シルビアの迫力ある走りで人気の高かった「スーパーシルエット(グループ5)」レース仕様を模している。エンジンは160psにまでチューンされたコンパクトな1.5L・OHCのE15型を搭載。コンパクトカーとは思えない迫力のボディと走りっぷりが多くのファンの目を釘づけにした

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トールボーイという奇抜なデザインで若者をターゲットにした「シティ」、ジウジアーロのデザインで世界で通用する正統派デザインで女性も含めた幅広い層をターゲットにした「マーチ」と、両モデルのコンセプトは対照的だ。若々しいチャレンジ精神のホンダ、正統派の王道を行く日産という、当時のホンダと日産の車づくりの違いやメーカーの特色をよく表している。

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