スクーター界のレーサーレプリカとして誕生したチャンプRS

ペリカンJOG(27V)から始まった原付スポーツ戦線も80年代中盤から一気に加速して各社がパワフルなモデルを続々と投入。ホンダはDJ・1やG’、スズキはカーナやHiなどを開発し、レーサーレプリカやフルスケール原付ミッションとともに若者を虜にした。

その中でも話題を集めたのがチャンプRSだろう。前身のチャンプをベースにスポーツ路線へとシフトし、さらに当時のレースシーンを彷彿とさせるスポンサードカラーをモチーフにしたボディ色を採用して、さながら「スクーター界のレーサーレプリカ」と言わんばかりのスタイルを獲得。

87年から2年間という短期間の販売とは思えないほどのインパクトを残した。

【車両解説】ヤマハ・チャンプRS

ヤマハ・チャンプRS■1987年登場

1987年に登場したチャンプRSは、ヤマハのスポーツスクーター「チャンプ」をベースに開発された高性能モデルだ。

空冷2スト単気筒エンジンは最高出力6.3psを発生し、乾燥重量59kgという軽量な車体と組み合わされることで軽快な走りを実現。さらにフロントディスクブレーキやエアインテーク付きアンダーカウル、専用チャンバー、280mmロングリアショックなど、当時の50ccスクーターとしては異例とも言える豪華装備を採用していた。

全長1590mmというコンパクトな車体ながら、そのキャラクターは極めてスポーティ。現在でも熱狂的なファンを持つ、80年代ヤマハを代表する1台である。

走行風を取り込んでエンジン周りの温度を一定に保つエアインテーク機能付きアンダーカウルを装備。「効果はともかく、この見た目がスタイリッシュですよね!」とけんじぃさんもお気に入り。
リアカウルに沿うように備わる小さなリアキャリアもRS専用品。「荷物は載せられませんが、取り回しやスタンド掛けの持ち手として便利ですね」とオーナー。
「当時RSを選んだ一番の理由がフロントのディスクブレーキでした。原チャリなのにスゴイですよね!」とけんじぃさん。φ155mmローターと1POTキャリパーの組み合わせは当時としてはかなり先進的だった。
社外チャンバーのように滑らかな膨らみを持つ専用チャンバー。丸穴デザインのヒートガードとステンレスカバーが標準装備され、見た目のスポーティさも演出する。
メタル素材のバーエンドもチャンプRSらしい装備のひとつ。「純正ミラーが当時らしい角型デザインなのもカッコいいんですよね。今ではなかなか手に入りません」とけんじぃさん。
鮮やかなイエロースプリングを採用するリアショックもRSの特徴。「ヤマハ車は235mmが多いですが、RSは280mmとロングサイズなんです」とけんじぃさん。
champのロゴが入ったシンプルなメーター。走行距離が1kmなのにも注目。
シート下には小物入れとオイルタンクを装備。後端がガソリンタンクとなっている。

年式や製造時期によるデザインや装備の違いをチェック

1987年の初期型
1988年の後期型

1988年モデルからはフロントフォークのアウターチューブに「DISK BRAKE」ステッカーを追加。細かな仕様変更もマニア心をくすぐるポイントだ。

初期モデル
別時期のモデル

シート後方のロゴは初期型が「RS」のみだったのに対し、その後のモデルは「YAMAHA」のロゴが追加されている。

純正のヨコハマ製タイヤ
純正のIRC製タイヤ

純正タイヤはヨコハマ製E802とIRC製MB38の2種類が存在。サイズはいずれも3.00-10で統一されていた。

YAMAHA チャンプRS 主要スペック

項目内容
車名YAMAHA チャンプRS
販売期間1987〜1988年
全長×全幅×全高1590×660×1015mm
ホイールベース1125mm
最低地上高95mm
シート高750mm
車両重量59kg(乾燥)
エンジン空冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ
総排気量49cc
最高出力6.3ps/7000rpm
最大トルク0.65kgm/6500rpm
燃料タンク容量3.5L
タイヤサイズ3.00-10(前後共通)
ブレーキフロント:ディスク/リア:ドラム
当時価格14万4000円

全7色コンプリート! 自宅ガレージはRSミュージアム

今回は、そんなチャンプRSとその魅力にとりつかれた男性のお話。

チャンプRSのベース車やエンジン単体が並ぶ倉庫は、まさにRS専門店さながら。今や貴重な縦型2ストエンジンも複数ストックされていた。

ズラリと並ぶRSはけんじぃさんの私物だ。2年間で発売された全7色を網羅しており、半分は総走行距離1kmの新車! 自宅兼ガレージはRSのミュージアムと化している。

「16歳で初めて買ったバイクがRSのマルボロカラーでした。それから数年後、ネスカフェを新車で購入したのをキッカケにあとは泥沼ですね(笑)。レプリカ世代ってこともあり、全色揃えたくなって全国を探し回りました。今でこそ結構なプレミアがついてますけど昔は安かったんですよ。車体も部品も定価以上ではなるべく買いたくないですね」

それでは早速、けんじぃさんのコレクションを拝見させてもらおう!

35年以上を共に過ごしたチャンプRSとの人生

けんじぃさんの自宅は広い敷地に作業場を備えたガレージハウスと大小の物置が置かれ、中にはスポーツカーと排気量問わず数多のバイクがキレイに並べられている。誰に見せるでもない、自分だけの秘密基地だ。

倉庫の奥にはチャンプRS関連の車両やパーツだけでなく、初代RG250Γ(GJ21A)が複数台鎮座。さらにFZR750やFZR1000といった80年代ヤマハレーサーレプリカ、奥サマ用のXJR1200、セロー225やRA125などのオフロードモデルまで並び、その守備範囲の広さに驚かされる。ジャンルレスにバイクを楽しむ姿勢も、けんじぃさんらしさのひとつだ。

「もはや自己満足ですね。チャンプRSだけでも新車、部品取り車まで合わせて今までに29台購入しました」

と、けんじぃさんはプラモデルを買うような口ぶりで言ってのけた。彼が筋金入りの変態……もといマニアなのはその〝年期〟が示している。

RSに興味を持ったのはここ5年10年の話ではない。発売時(87年)からマルボロカラーを乗り続け、並行して全色を揃え、自分で分解・整備を繰り返し、そうして一度も途切れることなく人生の7割以上をチャンプRSと共に過ごしてきた。

チャンプRSのエンジンをレストア中。車両や部品が増えすぎたため、最近は修理して売ることもあるそうだ。「次の人に乗ってもらえればRSも幸せですから!」。
ヤマハのツナギ(作業着)を着て整備に勤しむ姿は、まるでバイクショップのメカニックそのもの。ツールキャビネットのほか、ボール盤など小加工に対応する工具も揃い、80〜90年代の音楽を聴きながらバイクをイジる時間が何よりの楽しみだという。なお、オブジェ代わりに置かれたYSR50は限定UCC仕様だ。

九州往復に北海道一周! チャンプRSと走った日本縦断

さらに、けんじぃさんの偉業はこれだけに留まらない。過去にチャンプRSで九州の往復と北海道一周をしたというのだ!

「4ℓの携行缶にガソリンを入れて、2ストオイルも大量に積んで自走しました。積載力が乏しいので大変でしたね。ツーリングでは他のライダーに声をかけてもらったり、お店に立ち寄る時に挨拶したりするのも醍醐味ですが、車両が車両なので地元の人だと思われてしまって、悲しかったですね(笑)」

ほかに中型〜大型バイクを所有しているにもかかわらず、彼はチャンプRSで旅に出る。家族を持った現在は何日も家を空けることは難しいが、250kmほどの日帰りツーリングには頻繁に赴くという。

「とにかく走っていて気持ちがいいんですよね! チャンプ80のエンジンに載せ替えたこともありますけど、やっぱり50ベースの加速フィールがたまらなくて、オーバーサイズピストンを入れて黄色ナンバー(原付二種登録)にして乗っています」

大量のストックパーツと、次世代へ託す夢

そんなけんじぃさんだけに、チューニング志向ではなく実用性重視でチャンプRSと付き合っており、新品のカウル、チャンバー、ホイールのほか、ライトやレンズ類、ホースなどの消耗品を中心にストック。すぐにでも専門店を開けるほど大量の部品が整頓されて保管されている。

新品外装をはじめ、今や入手困難となったチャンプRS用パーツがズラリ。ほとんどは90年代に集めたもので、現在では考えられないほど手頃な価格で入手できたという。
リヤのチューブレス化に欠かせないアクティブ純正アルミホイールや、マニアにはおなじみのニシモト製サイドスタンドなど、今となっては貴重なアイテムも多数ストックされている。
修理のキモとなるピストン類も純正品から社外品まで幅広く保管。消耗品から希少パーツまで網羅する姿は、もはや個人ガレージというよりチャンプRS専門店そのものだ。

「先日初めてエンジンブローしましたが、それまでは幸いなことに大きなトラブルはありませんでした。過去にパンクが1回あったくらいかな? 意外にタフだから予備パーツを使う機会は訪れないかもしれません。チャンプRSはレストアするのも面白いんですよね。縦型エンジンだから手を入れやすいし。ただサスを硬めにセットしたり、できるならチューブレス化が好ましいですね」

と、酸いも甘いも知り尽くしている。

このように充実したバイクライフを送るけんじぃさん。一家の大黒柱として励む中、チャンプRSに触れる時だけは16歳の頃に戻って青春を謳歌しているのだ。

そんな彼の次の夢は子供にチャンプRSを託すこと。

「息子が免許を取ったら2台でツーリングしたいですね!」

と嬉しそうな笑顔で語ってくれた。今や希少となりつつあるだけに、今後もぜひ大切に育ててもらいたい。

35年以上乗り続けるけんじぃさんの愛車をチェック!

高校生の頃から乗り続け、まもなく走行距離9万kmに達するけんじぃさんの愛車。フロントホイールにはJOG ZR用のアルミ5本スポークを流用し、リアはアクティブ純正ホイールを組み合わせてチューブレス化。長距離ツーリングを見据えた実用的なモディファイが施されている。なお、ゼッケンの「19」は、当時大ファンだったアメリカ人ライダー、J・コシンスキーのナンバーだ。

小物入れとして便利なチャンプRS純正インナーラックも追加。ちょっとした荷物を置けるだけでも、街乗りやツーリング時の使い勝手は大きく向上する。
チャンプ用リヤキャリアに交換し、GIVIのトップケースを装着。積載力の少ないチャンプRSでも、ロングツーリングに対応できる実用性を確保している。
夜間走行に備えてHIDキットも装着。見た目だけでなく、実際に走り続けるための実用的なモディファイが随所に施されている。
チャンプRSの定番カスタムである前後タイヤのチューブレス化も抜かりなし。さらにメッシュブレーキホースやデイトナ製リアショックを組み合わせ、長距離ツーリングにも対応する信頼性と快適性を手に入れている。
ヘルメットもコシンスキーレプリカを愛用する。

ちょっとだけ乗らせてもらった!

「現在は駆動系をほぼ純正に戻しているそうで、過激さは抑えられているけれど変速ショックも少なく、高回転までスムーズに回っていくのは日ごろの整備の賜物か? 6.3psをフルに使い切っている感覚で、とくに50〜60km/h前後の加速フィールがすこぶる気持ちいい! 硬めにセットした足周りのおかげで車体の挙動もつかみやすく、安心してスロットルを開けていける。これなら街乗りが快適だし、北海道ツーリングだって……いや、やめとこうかな(笑)」【モルツ】

けんじぃさんのチャンプRSコレクションを拝見!

マールボロカラー「Silky White(two-town type)」

WGPで活躍したYZR500、そして市販のTZR250やYSR50にも採用されたヤマハレーサーを象徴する筆頭カラー。中でもチャンプRSは、フロント周りのデザインなど「マールボロ」のタバコパッケージを最も忠実に再現している(と思う)。

ネスカフェ・アメリカーナ「Marble Silver」

銀ボディに星条旗を載せた「ネスカフェ・アメリカーナ」は、1987年鈴鹿8耐で女性ライダーペアでも話題を呼んだカラーリング。市販車ではFZR250にも同様のグラフィックが採用され、今なおコアなヤマハファンから支持を集めている。

ゴロワーズ「Faraway Blue」

WGPからパリダカまで活躍したソノートヤマハのフレンチブルーに、青ストロボが映える1台。日本で「ゴロワーズ」と言えばタバコではなく、やっぱりヤマハを連想する人も多いはず。もちろんホイールもゴールドだ。

TECH2

資生堂の男性化粧品ブランド「TECH21」は、1985〜1990年にかけて鈴鹿8耐でスポンサーを務め、2度の総合優勝を果たした。派手なデザインが多いチャンプRSの中で、シンプルなカラーに秘めた闘志に血が騒いだ男子も多かったはず。なお、年式でグラフィックが異なる(写真は1988年製)。

けんじぃさんのガレージで、なんと当時の整髪料「TECH21」の試供品(?)を発見! パッケージには1987年型YZR500を駆る平忠彦選手の雄姿がプリントされており、当時のヤマハレプリカブームの熱気を今に伝えてくれる。

「Silky White(STROBO type)」

ホワイト×レッドのストロボグラフィックがレーシーな雰囲気を演出。マールボロカラー同様、インナーカウルやホイールには赤、シートには白表皮を組み合わせ、全身を使ってアグレッシブさを表現している。

Black2

2年目となる1988年に追加された、ちょっと渋めのオールブラック仕様。ゴールドのピンストライプやディスクブレーキ周りの差し色が絶妙なアクセントとなり、派手なスポンサーカラーとはひと味違う大人っぽい魅力を放っている。


こちらの記事はモトチャンプ2023年4月号に掲載したものを加筆修正しています。