ヤマハ発動機本社の最寄り駅が『JR御厨駅「ヤマハ発動機前」』になった。

2026年7月6日、JR東海道本線の御厨駅(静岡県磐田市)で、副駅名「ヤマハ発動機前」の掲出を記念するオープニングセレモニーが開催された。駅名に企業名が付くことは珍しくないが、この副駅名は単なる企業PRにとどまらない。社員の誇りを育み、地域とのつながりを深め、世界中から訪れる社員やファンを迎える「玄関口」としての役割も担う。ヤマハ発動機が副駅名に込めた思いと、その先に描く地域共創のビジョンを探った。
御厨駅はヤマハ発動機本社及び本社地区の工場や研究・開発部門など、関連施設が立ち並ぶ最寄り駅であり、多くの社員が日常的に利用している。今回の取り組みは、静岡県内では初、JR東海全体でも3例目となる副駅名標の導入で、駅を通じて社員と地域のつながりを可視化するとともに、駅利用者に対してヤマハスタジアムや企業ミュージアム「コミュニケーションプラザ」といった地域の魅力を発信する狙いがある。

「ヤマハ発動機前」という副駅名掲出のセレモニーには、主催者であるヤマハ発動機代表取締役社長の設楽元文氏に加え、磐田市長の草地氏、東海旅客鉄道株式会社専務執行役員事業推進本部長の谷津氏が来賓として出席した。会場には磐田市の公式イメージキャラクター「しっぺい」も駆けつけ、式典を盛り上げた。しっぺいは市内に伝わる霊犬伝説「悉平太郎(しっぺいたろう)」をモチーフにしたもので、「磐田の平和を守る賢くて優しい犬」とされ、市の魅力発信を担うマスコットとして各種イベントに登場している。悉平太郎は、毎年、白羽の矢が立った家の娘が人身御供として生きたまま神に捧げられるしきたりがあり、この原因となる怪物を退治した犬こそが長野県駒ヶ根市で飼われていた悉平太郎であるというヒーロー伝説が残っている。なお、磐田市は駒ヶ根市と友好都市となっている。

設楽社長「地域とのつながりを改めて実感するきっかけに」
冒頭の挨拶で設楽社長は、御厨駅が「まさに会社と地域をつなぐ玄関口」であるとしたうえで、副駅名標の掲出について次のように述べた。
「この場所にヤマハ発動機前という名称が加わることで、社員一人一人が自らの仕事と地域との繋がりを改めて実感し、誇りを深めるきっかけになると考えております。今後も感動創造企業として世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供し続けてまいります。この取り組みを通じ地域の皆様に親しみを持っていただける存在であり続けるとともに、磐田や地域のさらなる発展と活性化に貢献していく所存です」

ヤマハ発動機は2026年7月で、創立71周年を迎えているが、1972年に本社が磐田へ移転して以来、地域に支えられてきたことへの感謝とさらなる展望が地域との繋がりに他ならない。
磐田市長の草地氏は、静岡県内で初となる副駅名標の導入に触れ、地域とヤマハ発動機が「共に作る共創」を実現したことへの謝意を述べた。1987年に地元からの要望を受けてJR東海に開業を働きかけて以来、長い年月を経て御厨駅が誕生した経緯を振り返り、その間も変わらず地域と共にあり続けたヤマハ発動機、そしてヤマハスタジアムを拠点とするジュビロ磐田や静岡ブルーレヴズの存在が地域に感動を届けてきたと述べた。副駅名標の導入やコミュニケーションプラザのリニューアルを機に、周辺地域のさらなる発展に取り組んでいく考えを示した。
続いて登壇したJR東海の谷津氏は、副駅名標の取り組みが2024年から始まり、今回が全体で3例目、静岡県内では初の導入となることを説明した。駅利用者の利便性向上に加え、沿線企業や施設の認知向上を狙いとしており、世界的にモビリティ事業やマリン事業を展開する一方で地域に根差した経営を続けるヤマハ発動機との共生を歓迎する意向を示した。また同社が取り組む浜名湖サイクリング事業においても、ヤマハ発動機から電動アシスト自転車の提供を受けるなど、これまでも地域連携を重ねてきた関係性を紹介し、今後も機会があれば副駅名標の展開を検討していく考えを述べた。
除幕式、しっぺいも登場し記念撮影
来賓挨拶の後、しっぺいも加わった紅白のロープを使った除幕式が行われた。除幕式のあとにはホームに降りて、しっぺいと共に駅名表示看板の下で記念撮影が行われた。
セレモニー後、設楽社長は駅名に社名を入れることでの社員のモチベーションやエンゲージメントへの効果を問われ、「ヤマハ発動機の売上の9割以上を海外が占める中、世界各国から訪れる社員やスタッフにとって御厨がまさに『ヤマハの起点・玄関口』であると認識できることが、社員のやる気につながるきっかけになる」との見方を示した。

また、社外に向けたメッセージとしては、企業目的である「感動創造企業」を挙げ、「モビリティや同社製品に触れることで新たな感動を得て生活が豊かになる、その起点としてこの場所を位置づけたい。あわせて、2028年に新社屋として本社棟と品質保証棟をリニューアルする計画があり、ますます流動性も高まり、地域との共創による色々な感動創造の提案が出てくることを期待している」と結んだ。
なお、副駅名標の掲出開始を記念し、ヤマハ発動機は7月24日(金)より「御厨駅・ヤマハ発動機前キーホルダー」を発売する。価格は550円(税込)で、販売場所はヤマハ発動機コミュニケーションプラザ限定だ。
2026年6月にコミュニケーションプラザの1階を魅力あふれるヤマハを体感するスペースとして刷新し、今回最寄り駅の御厨駅に副駅名として「ヤマハ発動機前」を掲げることになった。2028年には新社屋もオープンする。御厨駅が今後、世界中のヤマハファンや二輪車・四輪車などのモビリティ愛好家にとっての新たな「聖地」やフォトスポットになっていくことは間違いない。現状、通勤時間帯以外は比較的静かな駅だが、今後は駅周辺にバイクを安全に停めて、この記念すべき副駅名看板とともに愛車を美しく写真に収められるようなエリアや仕掛けができると、ライダーにとっても嬉しい限りだ。いや、我々が想像する以前に、ファンのことを第一に考えているヤマハ発動機ゆえに、きっとそうした感動を創造する計画は既にあるに違いない。
