70-80年代ホンダの “ちょっと攻めた原付” に注目!

自転車のように気軽に乗ることができる女性向けの乗り物としてのソフトバイク、「ホンダ・ロードパル」が76年に発売。その後、「ヤマハ・パッソル」の登場によってソフトバイクは独自の進化を遂げることとなる。70-80年代のホンダといえば、バイクだけでなくクルマの世界でも、ちょっと攻めたモデルや個性派が目立った時代。もちろん、すべてが大ヒットしたわけではない。ただ今振り返ると、「なぜこれを作った!?」と思えるモデルほど、妙に心をくすぐってくる。今回の主役であるパルディンとランナウェイも、そんな時代の勢いを感じさせる原付たちだ。
「男性向けソフトバイク」は個性が爆発するスタイル
「男性向けのソフトバイク」として78年に登場したパルディン。スポーツ自転車のようなダイヤモンドフレームにアップハンドルを組み合わせた独特のスタイルゆえに販売は苦戦した。ところが、80年にヤマハがタウニーを発売するとこれがヒット。あらためて男性向けソフトバイクが注目され、82年にランナウェイが登場。しかし、注目度はいまいちだったと筆者は記憶している。
つまり、どちらも当時の主役にはなりきれなかったモデル。けれども、いま見るとその“ハズし具合”がむしろ魅力として映る。スクーターでもスポーツバイクでもない、自転車にエンジンを付けたような独特の存在感。効率や売れ筋だけでは生まれない、当時の原付ならではのクセが詰まっているのだ。
パルディンは“エンジン付きピストバイク”風に変身
そんな希少な二台を、神奈川県にあるカスタムショップ「サブアーム」がカスタマイズ。パルディンはフレームのトップチューブをわざわざカットして位置を変更。ワンオフで製作したペッタンコなシートとフラットになるように、タンクの形状も変更している。

細身のフレーム、セパハン、細いタイヤで一気にレーシーな雰囲気へ。原付というより、まさに“エンジン付きピストバイク”と呼びたくなる姿だ。
ホイールはグリメカのマグネシウム製16インチ、セパハンを装着するなど、レーシーなスタイルに変貌。しかもパーツのほとんどが当時物のヨーロッパ製というこだわりだ。元のパルディンが持っていた細身のフレームワークを活かしつつ、どこか1960年代のイタリアンレーサーのような雰囲気も漂わせている。

樹脂製パネルからシートへ自然につながるラインが見どころ。低く長いシルエットを作るため、シートだけでなくタンク形状にも手が入る。自転車っぽさを隠すのではなく、むしろそこを強調してクールに見せる。素材のクセを理解しているからこそ成立するカスタムだ。

メトラ製キットで70ccへボアアップし、スマート製Φ28mmキャブレターを組み合わせる。見た目だけでなく、エンジンにもきっちり手が入っている。

足周りにはグリメカ製マグネシウムホイールを加工して装着。2.00-16という極細サイズが、クラシカルなレーサー感をさらに高めている。

可能な限りナロードに仕上げたリヤ周り。縦に立ち上がるチャンバーと細い車体が、普通の原付とは違う存在感を作っている。

燃料タンクに残る車名ロゴ。メジャーな名車ではないからこそ、こうした細部に残る純正らしさが妙に愛おしい。
ランナウェイは縦目二灯の謎アメリカンへ
対するランナウェイは、タイヤを純正の2.25/2.50から3.00/2.75へ変更。さらにチャンバーを装着することで、得体の知れない雰囲気を醸し出している。こちらはまだ発展途上。インチキアメリカンをテーマに独自路線を突き進む⁇

純正のロングホイールベース感とハイバックシートを活かし、アメリカンルックへ。角目ライト・縦目二灯のフロント周りが強烈な個性を放つ。
ランナウェイはもともと、ロングホイールベース気味の車体バランスやハイバックシートによって、どこかアメリカン風の雰囲気を持っていたモデル。そのキャラクターを活かし、純正ヘッドライトを2段重ねにした“縦目二灯”スタイルをプラスしているのが面白い。普通なら「なぜそうした?」となりそうなところを、全体の怪しさとして成立させているのがサブアーム流だ。

純正ヘッドライトをニ段重ねにしたフロントマスク。まだ仮付けとのことだが、隙間にぴったり収まっているのがまた不思議。

ランナウェイらしさを象徴する高級ソファー風ハイバックシート。ガタイのいい男性でもゆったり座れるサイズ感だ。

サブアーム製のモトコンポ用ステンレスチャンバーが無加工で装着できるという点も見逃せない。エンジンはロードパル系でモトコンポと同じだが、駆動系はVベルト無段変速式。最高出力は3.1ps。速さを競うというより、この見た目と雰囲気を楽しむ一台と言えるだろう。

エンジンはロードパル系で、駆動系はVベルト無段変速式。小さな原付ながら、眺めているだけで時代の空気感が伝わってくる。

流れるような書体の車名ロゴも、どこかアメリカンな雰囲気。車名まで含めて、このモデル独特の世界観がある。
売れ筋じゃなかったからこそ、今見るとおもしろい
パルディンもランナウェイも、当時の大ヒットモデルではない。むしろ原付の主流がスクーターへ移り変わっていく中で、少し影の薄かった存在と言えるかもしれない。けれど、だからこそカスタムベースとして見ると自由度がある。誰もが知る名車ではないから、完成形の正解も決まっていないのだ。
ピストバイクのように仕立てるのもよし、謎アメリカンとして遊ぶのもよし。日本経済が元気だった70-80年代に生まれた、原付のクセをそのまま活かし、今の感覚でクールに見せる。売れた、売れなかっただけでは語れないおもしろさが、このニ台には詰まっている(と思う)。
ベースマシンはコレ! ホンダ・パルディン&ランナウェイ
ここで改めて、ベースとなったニ台のノーマル車を見ておきたい。カスタム後の姿を見たあとだと、どちらもかなり素朴に映るが、その中に今回のカスタムにつながる“クセ”がちゃんと残っている。

1978年に登場したホンダ・パルディン。スポーツ自転車のようなダイヤモンドフレームとアップハンドルを組み合わせた、男性向けソフトバイクだった。

1982年に登場したホンダ・ランナウェイ。ロングホイールベース気味の車体にハイバックシートを組み合わせ、独特のアメリカン風味を漂わせていた。
ノーマルのパルディンは、スポーツ自転車のようなフレーム構成が特徴的。今回のカスタムではその細さや軽さが活かされ、エンジン付きピストバイクのような方向へ振られている。いっぽうのランナウェイは、ゆったりしたシートや長めの車体バランスが印象的で、そのクセが縦目二灯のアメリカン風カスタムへとつながっている。
サブアームが仕上げた珍車カスタムはやっぱりひと味違う。懐かしいけど、ただのノスタルジーでは終わらない。ちょっと変で、妙にカッコいい。そんな“旧車ミニ”の楽しみ方、まだまだ奥が深そうだ。
※この記事は月刊モトチャンプ2022年4月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】