納車はいつ?デリバリー数は当初の3倍近くに増やしたが……

2025年1月30日の発表から1年半以上の歳月を経て、遂にジムニー「ノマド」の試乗会が開催された。MotorFanjpをはじめとした各メディアがその速報で、誌面やWEBを賑わせたのはご存じの通りだ。

2025年1月30日の行なわれたジムニーノマドの発表会。

スズキがメディアへのテストドライブをこれだけ長い時間遅らせた理由は、端的に言ってそのデリバリー体制が整わなかったからだ。ノマドは「マルチ・スズキ・インディア」が生産する逆輸入車であり(製造はインドのグルガオン工場)、当初の生産台数は月産1200台が目標だった。

マルチ・スズキのオフシャルサイト。

確かにそれは敢えての低い見積もりで、フタを開ければ受注殺到というお約束はあったはずだが、実際はその予想を遙かに超える5万台の注文が殺到したのだから、スズキもこれには驚いたはず。実際発表後たった4日で受注は停止したし、予約も入れられなくなったコンシューマーたちの気持ちを察すれば、メディア用の試乗車を用意している場合ではなかったということになる。

ジムニーノマド

ちなみに現在はそのキャパシティを3300台へと増やし、受注を再開。それでも今から注文すると、1年半から2年は掛かってしまうとのことだったから、その人気は変わらずである。

実は1型から2型へ進化していた!その変更点は?

そんなノマドはこの1年半を経て、じつはマイナーチェンジを受け「2型」となっていた(2026年1月30日発表)。
その内容は先進安全装備の進化で、ジムニー/シエラに続く形で機能が拡張された。機構的にはこれまでのステレオカメラが、単眼カメラとミリ波レーダーに取って変わった。

左からジムニー、ジムニーシエラ、ジムニーノマド。

これによって従来の「デュアルカメラブレーキサポート」は、「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」へと名称を変更。効果としては衝突被害軽減ブレーキのサポート範囲が自動二輪車や自転車まで拡大され、車線逸脱抑制機能も全車標準装備となった。そしてAT車には、車体後部にパーキングセンサーが追加された。

ジムニーノマド

アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)も、全車標準装備となった。MT車はその構造上時速30km/h以上からの作動となるが、AT車はこれまで時速40km/h以上からの作動だった制御が、全車速追従式となった。

ジムニーノマドのコックピット。

さらに「スズキコネクト」にも対応し、機械式メーターの間にある小さなメーターマルチインフォメーションディスプレイ」もカラー液晶となった。

カラー化されたマルチインフォメーションディスプレイ(モーション表示)
カラー化されたマルチインフォメーションディスプレイ(パワー/トルク表示)

静粛性向上のためにタイヤも変更

厳しさを増す車外騒音規制「フェーズ3」への対応も、大きなトピックだ。
目立つところでは、タイヤが「M+S」(マッド・アンド・スノー)から、事実上サマータイヤへと変更された。トレッドパターンをより平滑に、そしてコンパウンドを静粛性の高いゴム特性にすることで、ロードノイズを抑えたのだ。

ジムニーノマドの試乗車に装着されたブリヂストン製DUELER H/L(195/80R15)。
ブリヂストンDUELER H/Lのトレッドパターン。
ジムニーシエラはダンロップGRANDTREK H/T31(195/80R15)を装着。このタイヤも「M+S」ではない。
ダンロップGRANDTREK H/T31のトレッドパターン。
ジムニーも同じくブリヂストンDUELER H/Lを装着。サイズは175/80R16)。こちおらは「M+S」仕様。
ジムニーが装着するDUELER H/L(M+S)のトレッドパターン。

タイヤの変更は燃費面にも貢献するはずだが、数字に出るほどではなかったようだ。ちなみに公式燃費の数値は5MTで14.9km/L、4速ATで13.6km/L(共にWLTC総合燃費)と同じままである。

サマータイヤへの変更による副産物は、ダンパーの仕様変更だ。タイヤのトレッド剛性が上がったことで動的パフォーマンスが向上し、それをバランスさせるために、ダンパー減衰力設定が見直された。その乗り味については後述するが、操舵応答性は確実にリニアさを増した。

ジムニーノマドの走り。

そして車体にも、ジムニー/ジムニーシエラと同様に、静粛性向上が図られた。
トランスファーには吸音材が入った金属のカバーを追加して、駆動音を減衰・遮断。エンジンルーム内にはボンネットインシュレーターや防音材が追加され、これまでリヤのホイルハウスのみだった防振材が、フロントにも追加された。

吸音材の入ったトランスファーカバー。
発表時の車両はトランスファーにカバーは装着されていない。
ジムニーノマドのエンジンルーム。バルクヘッドに防音材が装着されている。

前後フェンダー内の防振・防音処理は車外騒音対策というよりも、乗員への配慮だが、現状でも必要最低限という印象。実際エンジニア氏に聞いても「まだまだ遮音材などを貼り込めば、静かにはできるでしょう」とのことだった。

フロントのホイールハウスに追加された防振材。
リヤホイールハウスの防振材。5ドアモデルということで、後席居住性のために装着された。

ジムニーのキャラクターやコストバランスを考えてここまでに留めているというのが実情だから、ここらへんにはアフターマーケット市場でのビジネスチャンスがありそうだ。

AT+サマータイヤで驚きの走破性を示す

ということでいよいよ試乗となるわけだが、よくよく考えると今回の試乗メニューにオフロード走行があることは、なかなかに興味深かった。なぜなら前述の通りタイヤはサマータイヤなのだ。試乗当日は曇り空だったが、それこそ雨が降っていたらどうするつもりだったのだろう?

ジムニーノマドのオフロード試乗。

試乗は「富士ヶ嶺オフロード」の一部を使って行われた。今回斜度が最も高い「ロングヒルクライム」セクションを使わなかったのは、オフロード慣れしていないメディアを考慮してのことだろう。事前テストでは、問題なくこれを走破したという話を聞いた。

富士ヶ嶺オフロード。写真奥が「ロングヒルクライム」セクション。

5ドアとなったノマドの3アングルは、アプローチアングル(36°)、デパーチャーアングル(47°)が3ドアモデルと共通。ホイールベースが3ドアの2250mmから、2590mmへと伸ばされた分だけランプブレークオーバーアングルは27°から23°へと減っている。最低地上高は210mmのままだ。

ジムニーノマド。
タイヤサイズ195/80R15
アプローチアングル36°
デパーチャーアングル47°
ランプブレークオーバーアングル25°
最低地上高210mm

用意されたのは4速AT車。副変速機は最初から「4L」に設定されており、ESPは自動的にオフになっていた。

ジムニーノマドのトランスファーレバー。

手始めの林間コースで感じたのは、ノマドの運転のしやすさだ。
路面の陥没や岩、木々の根っこといったバンプを乗り越えたときの穏やかな体捌きは、まさに減衰力を高めたダンパーとロングホイルベースの効果だ。

富士ヶ嶺オフロードの林間コース。

3ドアモデルで感じるバネ下のバタつきや、小刻みな車体の揺さぶりがほぼなく(それがジムニーの醍醐味でもあるけれど)、乗り味がしっとりと落ち着いている。

富士ヶ嶺オフロードの林間コース。

ホイールベースが長くなった割にハンドリングが素直なのは、ダンパーやタイヤの変更と合わせて電動パワステも制御を改めたからだ。路面からの衝撃を緩和するボール・ナット式ステアリングの特性に加え、キックバックを抑えながらアシスト力を高められる電動パワステの美点が、実にうまくバランスしていた。

富士ヶ嶺オフロードの林間コース。かなりの角度のバンクも不安なく走破できた。窓から見える地面で、クルマがかなり傾いているのがわかるだろう。

ワイドボディとはいえ全幅は1645mmしかなく、スクエアなボディで見晴らしもいい。バンクではかなり車体を傾かせるけれど足つきが良く、副変速機のギア比を得たことで、自然吸気の1.5直列4気筒エンジン(102PS/130Nm)が頼もしく地面を蹴り上げてくれる。
ちなみにノマドを静的に傾斜させた場合、その最大安定傾斜角は左で47°、右で45°まで対応するという。

ジムニーノマドのエンジンルーム。K15B型1.5L直列4気筒DOHC16バルブエンジンは排気量1460ccで最高出力102ps(75kW)/6000rpm・最大トルク130Nm/4000rpmというスペック。

巨大クレーターのような窪地を降りるときも、ロングホイルベースが役に立った。
先の見えない傾斜を降りる動きがゆっくりしており、ここにヒルディセントコントロールを効かせれば、不安なく急な坂道を降りて行くことができる。

フロントシートから見たクレーターへのアプローチ。
ATシフトレバー。ヒルディセントコントロールスイッチとEPS(横滑り防止装置)オフスイッチはセンターコンソールに配置。
クレーターを下るジムニーノマド。
クレーターを登るジムニーノマド。

ランプ角は減っているというが腹下を打つようなこともないし、これだけの傾斜をまたげるのであれば常用オフローダーとしては十分な性能だと感じた。

クレーターからの脱出時。ランプブレークオーバーアングルが十分確保されていることを感じる。

その予感を確信に変えてくれたのは、モーグルでの走りだ。コースは一般的なメディア試乗会より幅が狭く仕切られ、しかも登り傾斜となる逆側からのアプローチだ。

細く区切られたモーグルコース。

ここでもロングホイールベースの車体は安定性が高く、対角線のタイヤが浮くような場面こそゆらゆらとした動きは大きくなるが、そんな場面でもジムニーノマドは確実にトラクションを掛けながら、大きな“こぶ”を乗り越える。

モーグルコースのジムニーノマド。左フロントタイヤは完全に浮いている。
モーグルコースのジムニーノマド。左リヤタイヤが浮き上がった状態。

浮いた片輪の空転をブレーキで止め、滑る路面をタイヤでかきむしりながら、見事にモーグルを走り抜いたのだった。

ローラー台による擬似スリップ路の脱出を動画で見る。右フロントタイヤに加え、左リヤタイヤもローラーに載っている状態。

話を戻せばサマータイヤでも、これだけの走りができてしまうのは、本当に驚きだ。
となると気になるのは雪道だが、そもそも1型の「M+S」タイヤは、新雪や凍結路面に強いとは言えなかった。

1型のタイヤ銘柄は同じブリヂストンDUELER K/LながらM+S指定。

となれば降雪地域なら冬場はスタッドレスに付け替えた方が無難であり、逆に夏場のドライ/ウェット性能を担保するサマータイヤの装着は、メリットとも考えられる。

ジムニーノマド

ということで次回は、オンロード試乗のレポートをお届けすることとしよう。