基本情報

MT-07は、水冷・4ストローク・DOHC・4バルブの688cm³並列2気筒エンジンを搭載するネイキッドスポーツである。270度クランクを採用した「CP2」エンジンにより、中低回転域の粘り強いトルクとリニアな加速特性を実現している。
国内の現行型は2025年2月26日に発売された。標準の「MT-07 ABS」に加え、クラッチ操作とシフトペダル操作を自動化した「MT-07 Y-AMT ABS」も用意されている。
標準のMT-07 ABSを運転するには大型二輪免許が必要である。一方、MT-07 Y-AMT ABSはAT限定大型二輪免許でも運転できる。普通二輪免許では、どちらも運転できない。
2025年型では、両仕様に電子制御スロットル「YCC-T」と、走行モードを選択できるYRCを採用した。標準のMT-07 ABSにはアシスト&スリッパークラッチも搭載されている。フレームとリアアームも新設計され、倒立式フロントサスペンションやスピンフォージドホイール、ラジアルマウント式フロントブレーキキャリパーなどが採用された。
標準車のメーカー希望小売価格は96万8,000円、Y-AMT仕様は105万6,000円である。いずれも総排気量が250cm³を超えるため、定期的な車検が必要だ。
主要諸元
| 項目 | MT-07 ABS | MT-07 Y-AMT ABS |
| 認定型式/原動機打刻型式 | 8BL-RM48J/M427E | 8BL-RM50J/M427E |
| 全長/全幅/全高 | 2,065mm/780mm/1,110mm | |
| シート高 | 805mm | |
| 軸間距離 | 1,395mm | |
| 最低地上高 | 150mm | |
| 車両重量 | 183kg | 187kg |
| 乗車定員 | 2名 | |
| エンジン種類 | 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・直列2気筒 | |
| 総排気量 | 688cm³ | |
| 内径×行程 | 80.0mm×68.5mm | |
| 圧縮比 | 11.5:1 | |
| 最高出力 | 54kW(73PS)/8,750rpm | |
| 最大トルク | 68N・m/6,500rpm | |
| 燃料タンク容量 | 13L | |
| 使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン | |
| WMTCモード燃費 | 25.4km/L | 25.8km/L |
| 変速機形式 | 常時噛合式6速/リターン式 | |
| 変速操作 | クラッチレバー・シフトペダル | Y-AMTによる自動変速・手元変速 |
| 前後サスペンション | 倒立式テレスコピック/スイングアーム(リンク式) | |
| 前後ブレーキ | 油圧式ダブルディスク/油圧式シングルディスク(ABS) | |
| 前タイヤ | 120/70ZR17M/C(58W) | |
| 後タイヤ | 180/55ZR17M/C(73W) | |
| メーカー希望小売価格 | 96万8,000円 | 105万6,000円 |
ヤマハ・MT-07の魅力
MT-07の大きな魅力は、アクセルを大きく開けなくても力強さを感じられるCP2エンジンである。
270度クランクを採用した並列2気筒エンジンは、低回転から粘り強く、日常的な速度域でも加速感を得やすい。高回転まで引っ張らなければ性能を楽しめないエンジンではなく、市街地やワインディングで頻繁にギアを変えなくても余裕を持って走れる。
2025年型では吸気系へ「アコースティック・アンプリファイア・テクノロジー」が採用された。燃料タンクカバーに設けられた開口部から吸気音をライダーへ届ける構造で、270度クランク特有の鼓動感と加速時のサウンドを体感しやすくしている。
前述したとおり、標準車の車両重量は183kgである。大型二輪としては比較的軽く、車幅も780mmに抑えられているため、街中での方向転換や駐車場での取り回しに過度な負担を感じにくい。シート前方やタンク周辺も絞り込まれており、数値上のシート高だけでは判断できない足の下ろしやすさがある。
車体装備も従来型から大きく強化された。41mm径の倒立式フロントサスペンション、ラジアルマウント式フロントブレーキキャリパー、スピンフォージドホイールによって、旋回時や制動時の接地感を高めている。リアサスペンションはプリロードと伸び側減衰力を調整でき、乗車人数や走り方に合わせた設定も可能だ。
電子制御スロットルの採用によって、SPORT、STREET、CUSTOMのYRCモードも利用できる。CUSTOMではエンジン出力特性とトラクションコントロールの介入度を調整できるため、市街地からワインディングまで対応しやすい。
5インチTFTディスプレイはY-Connectに対応し、電話やメールの着信、天気予報などの情報をメーターに表示できる。メンテナンス情報や最終駐車位置、車両エラー、ライディングログなどは、ペアリングしたスマートフォンのY-Connectアプリで確認可能だ。「Garmin StreetCross」を利用すれば、メーター上にナビゲーション画面を表示することもできる。
Y-AMT仕様を選べる点も現行型ならではの魅力だ。クラッチレバーとシフトペダルを使わず、ATモードまたは手元のシフトレバーで変速できる。Y-AMT仕様にはクルーズコントロールも搭載され、渋滞の多い市街地や長距離ツーリングで操作負担を軽減しやすい。
ヤマハ・MT-07の気になるポイント
MT-07はネイキッドモデルであるため、走行風を直接受けやすい。一般道では開放感につながるが、高速道路を長時間走ると上半身や首の疲労が増えやすい。高速ツーリングを重視する場合は、スクリーンの追加やカウルを備えた車種も比較したい。
燃料タンク容量は13Lである。WMTCモード燃費は25km/L台と良好だが、長距離ツアラーと比べるとタンク容量に余裕があるわけではない。高速道路や給油所の少ない地域を走る場合は、早めの給油を意識する必要がある。
収納スペースも限られている。そのためレインウェアや防犯用品、ツーリング用品を常時積載するなら、シートバッグやサイドバッグ、リアキャリアなどを追加したほうが使いやすい。タンデムシートも大型ツアラーほど広くないため、二人乗りを頻繁に行う場合は同乗者を含めて乗車感を確認しておくと安心だ。
シート高は805mmで、シート前方の幅は抑えられているものの、すべてのライダーが不安なく両足を着ける高さではない。身長や脚の長さだけでなく、靴底の厚さやサスペンションの沈み込みによっても感覚が変わるため、購入前のまたがり確認が重要だ。
標準のMT-07 ABSにはクルーズコントロールがなく、クイックシフターも別売りオプションである。長距離走行の負担軽減やクラッチを使わない変速を重視するなら、追加費用を含めて検討するか、Y-AMT仕様と比較したい。
また、CP2エンジンは中低回転のトルクや鼓動感を楽しむタイプである。直列4気筒エンジンの滑らかさや高回転域の伸び、甲高い排気音を求める人には、期待していた性格と異なる可能性がある。
ヤマハ・MT-07 中古市場
2026年8月5日時点のグーバイクでは、MT-07の中古車が104件掲載されている。ASK表記の車両を除く掲載本体価格を単純集計すると、おおむね45万円台から100万円超までと幅広く、平均は約70万円である。
2014~2017年式は50万~60万円台が中心で、走行距離が多い車両では40万円台から探せる。初期型であっても低走行車やカスタムパーツの多い車両は、相場より高い価格が付く場合がある。
2018~2020年式は60万円台が中心となる。2018年の改良で前後サスペンションやシート、外装が変更されているため、初期型との価格差が小さければ比較しやすい年式だ。
2021~2024年式は70万~80万円台が目安となる。2021年のデザイン変更に加え、2024年式には5インチTFTメーターやスマートフォン連携機能が備わるため、同じ外観世代でも装備内容によって価格差が生じている。
2025年式は現行型であり、標準車は90万円前後が目安となる。Y-AMT仕様はグーバイク上で別の車種ページに分類されており、100万円を超える中古車も掲載されている。新車との価格差が小さい車両もあるため、保証期間や登録諸費用を含めた支払総額で比較する必要がある。
ヤマハ・MT-07 中古 注意点
中古車選びでは、年式による装備差、車両の状態、カスタム内容、リコール対応、購入後の費用を分けて確認することが重要だ。
最初に確認したいのはモデル年式である。初期型ではABSなしの「MT-07」とABS付きモデルが併売されていた。車名だけではABSの有無を判断せず、メーターの警告灯やホイール部分のセンサーリング、ABSユニットを現車で確認したい。
2018年式では前後サスペンションやシート、外装が変更され、2021年式ではLEDヘッドライトを備えた次世代MTシリーズのデザインへ刷新された。2024年式には5インチTFTメーターとスマートフォン連携機能が追加され、2025年式では電子制御スロットル、YRC、倒立式フロントサスペンションなどが採用されている。似た価格であっても装備内容は大きく異なる。
車両状態では、冷間時の始動性やアイドリングの乱れ、エンジン周辺のオイル漏れ、冷却水のにじみを確認したい。試乗できる場合は、クラッチの滑りや変速時の引っ掛かり、加速時の不自然な振動がないかも確認する必要がある。
足回りでは、フロントフォークのオイル漏れ、リアサスペンションの抜け、ステアリング操作時の引っ掛かりが主な確認項目となる。チェーンとスプロケット、ブレーキディスク、ブレーキパッド、タイヤも交換費用が大きくなりやすい。タイヤは残り溝だけでなく製造年も確認したい。
MT-07はマフラーやフェンダーレスキット、スクリーン、ハンドルなどを変更した中古車も多い。カスタム車では保安基準への適合状況に加え、配線処理や純正部品の有無を確認するべきである。ハンドルストッパーやレバー、ステップ、エンジンカバーに傷がある場合は、転倒歴について販売店へ確認したい。
リコールやサービスキャンペーンの実施状況も重要だ。MT-07では、2014年型のバッテリー配線、2018年型のドライブチェーンガード、一部の2022~2024年製造車におけるクラッチプレートなどについてリコールが届け出られている。現行型の一部にも、O2センサーを誤判定するECUプログラムのサービスキャンペーンが案内されている。
対象範囲には該当しない車両も含まれるため、年式だけで判断せず、車台番号から対象の有無と作業完了状況を確認する必要がある。
MT-07は全車が車検対象である。車検切れの車両や購入直後に車検時期を迎える車両は、車両価格が安くても整備費用や法定費用によって支払総額が増える。車検残存期間と納車整備の範囲まで確認して比較したい。
ヤマハ・MT-07の中古車が安い理由
MT-07の中古車は、同排気量帯の希少車や高性能モデルと比べると比較的安い。その理由のひとつは、新車時からコストパフォーマンスを重視して開発されたモデルだからである。
2014年の国内発売時価格は、ABSなしのMT-07が69万9,840円、ABS付きのMT-07Aが74万9,520円であった。当初から大型二輪として購入しやすい価格に設定されていたため、初期型の中古価格も極端に高くなりにくい。
前述したとおり、2014年から長期間販売されており、中古車の供給量も十分にある。流通量の多いモデルは希少性による価格上昇が起こりにくく、年式や走行距離に応じた相場を形成しやすい。
改良回数の多さも旧型の価格に影響している。2018年、2021年、2024年、2025年と装備やデザインが段階的に更新されてきたため、新しい装備を求める購入者は高年式車へ流れやすい。旧型は価格差を付けなければ比較されにくくなり、結果として購入しやすい価格になる。
ミドルクラスにはカワサキ・Z650、スズキ・SV650、ホンダ・CB650Rなど複数の選択肢がある。ヤマハ車のなかでもXSR700やYZF-R7が比較対象になるため、MT-07だけに希少価値が集中する市場ではない。
ヤマハ・MT-07の変遷
MT-07は、2014年の登場から一貫して、並列2気筒のCP2エンジンと軽量な車体を基本としてきた。エンジンや車体構成を全面的に入れ替えるのではなく、走行性能やデザイン、情報機能、電子制御を段階的に充実させてきたモデルである。
国内では2014年8月20日に販売が始まった。発売当初はABSなしの「MT-07」と、ABSを装備する「MT-07A」の2種類を設定している。新開発の689cm³並列2気筒エンジンと軽量な車体を組み合わせ、「大型二輪を普段着感覚で楽しめること」を重視していた。開発コンセプトは「スポーツパッション&スマート」で、年間国内販売計画は2,500台であった。
初期型の基本構成を維持しながら、乗り味を本格的に見直したのが2018年型である。前後サスペンションの設定を変更し、リアサスペンションには伸び側減衰力の調整機構を追加した。シートも新設計され、ライディングポジションの自由度と長時間乗車時の快適性が高められている。外装についても、タンク周辺のボリューム感を強調した、より力強いデザインへ変更された。
2021年型では、乗り味の改良から一歩進み、外観と操作性が大きく見直された。中央にバイファンクションLEDヘッドランプ、その左右にLEDポジションランプを配置し、次世代MTシリーズに共通するフロントデザインへ移行している。ハンドル位置やブレーキ、タイヤも変更され、排出ガス規制へ対応しながらCP2エンジンの扱いやすさを維持した。
2024年型では、走行性能よりも情報機能と使い勝手の向上に重点が置かれた。5インチTFTメーターとスマートフォン連携機能を採用し、着信通知や燃費情報などを確認できるようになっている。ハンドルバーとハンドルスイッチも変更され、シフトアップ側のクイックシフターをアクセサリーとして装着できるようになった。
続く2025年型では、MT-07の基本的な性格を残しながら、車体と制御系が大幅に進化した。電子制御スロットルの採用によってYRCの走行モードに対応し、標準車にはアシスト&スリッパークラッチも追加されている。さらに、フレームとリアアームを新設計し、倒立式フロントサスペンションやラジアルマウント式フロントブレーキキャリパー、スピンフォージドホイールを採用した。
同時に、クラッチレバーとシフトペダルの操作を自動化したY-AMT仕様も登場している。MT-07は、軽量な車体とCP2エンジンを核とする方向性を変えず、2025年型で本格的な電子制御と新しい変速方式を取り入れる段階に到達したのである。
ヤマハ・MT-07は「やめとけ」と言われるバイクなのか
MT-07を避けたほうがよいのは、大型二輪に求める性能がMT-07の方向性と合っていない場合である。大型二輪としての速さや余裕は備えているが、長距離ツアラーや高回転型スポーツモデルの代わりになる車種ではない。
例えば、高速道路を使った長距離移動が中心なら、走行風を受けやすいネイキッドスタイルが負担になりやすい。スクリーンを追加することはできるものの、防風性能や積載性、タンデム時の快適性を優先するなら、最初からカウルやパニアケースに対応したツアラーを選ぶほうが合理的である。
エンジンの好みによっても評価が分かれる。MT-07のCP2エンジンは、中低回転域のトルクと270度クランク特有の鼓動感を楽しむタイプだ。直列4気筒エンジンの滑らかな回転上昇や、高回転域の伸び、甲高い排気音を大型二輪に求める人には合わない可能性がある。
装備面では、標準のMT-07 ABSにクルーズコントロールは搭載されず、クイックシフターも別売りである。電子制御スロットルやYRCは備えているものの、購入時から長距離向けの快適装備を充実させたい場合は、Y-AMT仕様や他の上位モデルも比較したい。
一方、MT-07は大型二輪の性能を日常的な速度域で楽しみたい場合に適している。183kgの車体は大型二輪として比較的軽く、CP2エンジンも低回転から扱いやすい。市街地では必要以上に身構えずに走れ、ワインディングではアクセル操作に反応するトルクと軽快なハンドリングを楽しめる。
大型二輪である以上、250~400cm³クラスと同じ感覚で扱えるわけではないが、初めての大型二輪としても検討しやすい。自分でクラッチとシフトを操作する感覚を重視するなら標準車、渋滞や長距離走行で操作負担を減らしたいなら、クルーズコントロールも備えるY-AMT仕様が適している。
MT-07が「やめとけ」と言われるかどうかは、性能不足ではなく用途との相性で決まる。防風性能や積載性、高回転型エンジンを優先する人には別の選択肢があるが、軽い車体でトルクを操ることを楽しみたい人にとっては、MTシリーズのなかでもバランスのよい一台だ。
まとめ
MT-07選びでは、最高出力よりも「どのように走りたいか」を基準にすることが重要である。
中古車を予算重視で選ぶなら2014~2017年式、足回りと価格のバランスを求めるなら2018年以降、次世代MTのデザインを重視するなら2021年以降が候補になる。TFTメーターとスマートフォン連携が必要なら2024年式、電子制御や倒立式フロントサスペンションまで求めるなら2025年式を選びたい。
現行型では、標準車とY-AMT仕様で操作感が大きく異なる。価格差だけで決めず、可能であれば両方を試乗し、クラッチ操作の楽しさと自動変速の快適さのどちらを優先するか確かめるべきだ。
中古車についても、安価な初期型が必ずしも最適とは限らない。購入後の整備費用や車検、装備差を含めた支払総額を比較し、自分が日常で最も多く走る道路に合った世代を選ぶことが、購入後の後悔を抑える近道となる。

