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自衛隊新戦力図鑑潜水艦のふたつの動力
現代の潜水艦は動力の違いで「原子力」と「通常動力(ディーゼル機関)」の2種類に分かれる。原子力潜水艦は1950年代に登場し、現在はアメリカやロシア、中国、英仏などが保有している。対して、海上自衛隊は創設から現在まで、通常動力潜水艦を配備し続けており、現在は おやしお型、そうりゅう型、たいげい型の3種合計25隻を保有している。

原子力潜水艦は文字通り原子炉を動力とする潜水艦で、大きな出力を安定的に発揮できる。燃料補給の必要がなく、理屈だけでいえば何年でも潜航し続けることが可能だ。
通常動力潜水艦はディーゼル機関を搭載するが、これを動かすためには空気が必要となる。そのため、定期的に海面近くに浮上し、機関を動かして蓄電池に充電し、水中では蓄えた電力で駆動する。

どちらが優れているのか?
両者の大きな違いが「速力」だ。一般的な原潜の水中最大速力は30ノット(55.6km/h)前後、通常動力潜は20ノット(37.0km/h)前後と言われているが、決定的な差は「最大速力」ではなく「持続力」にある。
蓄電池の電力で航行する通常動力潜は、数ノット程度の低速なら数日潜航を続けられるが、最大速力は数時間しか持たない。一方で原潜は、最大速力を発揮し続けることができる。そのため遠方に迅速に展開できる。
たとえばオーストラリアの研究機関は、ある海域をパトロールする90日間の任務を比較して、通常動力潜は往復40日・海域滞在50日間であるのに対して、原潜であれば往復10日・海域滞在80日間という試算を示している。また、アメリカの国防産業団体は原潜1隻で通常動力潜3~6隻分と同等の効果を得ることができるとも主張している。

一方で、原潜の「コスト」の高さから、効果を疑問視する意見もある。たとえばアメリカ海軍のヴァージニア級原潜は1隻およそ50億ドル(7500億円)で、たいげい型通常動力潜の800~1200億円に対して6~9倍に達する。
船体規模や兵装の違い、また為替レートの都合もあり、単純比較はできないが、数倍のコストがかかることは間違いない。また、建造費だけでなく、原子力艦の運用基盤整備や維持に巨額の投資が必要となる。つまり、「たとえ数隻必要だったとしても、通常動力潜のほうが費用対効果は良いのでは?」というわけだ。

なぜ、いま原潜が必要なのか
最後に日本の状況を見ていこう。冷戦時代、日本の主要な脅威はソ連であり、潜水艦には日本近海のパトロールと、有事にソ連艦隊の太平洋進出を三海峡(対馬・津軽・宗谷)で阻止することが求められた。こうした近海での役割に通常動力潜は適したものだった。
現在、脅威が中国にシフトするなかで海自潜水艦が警戒すべき範囲は、南西諸島はもちろん、西太平洋へと広がっている。そのため、原潜の長距離進出能力が注目されたと考えられる。また、少子化による隊員数減少により、今後は隻数を揃えることが難しくなるなかで1隻あたりの効果の大きさが求められているのかもしれない。
以上のように原潜と通常動力潜には、それぞれメリットもデメリットもある。ここで挙げた以外にも原潜導入には国内外の原子力規制などさまざまなハードルがあり、日本が今後の潜水艦に「何をさせたいのか」を明確にしたうえで、慎重な議論が求められるだろう。
