連載
自衛隊新戦力図鑑日本に欠落した近距離対ドローン能力
ウクライナ戦争においてドローン(無人航空機、UAS)は爆発的な進化と発展を遂げた。特に行動範囲が数十km以下の“小型・低速・低空”UASは、これまでになかった存在であり、戦闘車両の撃破や対人攻撃に大きな戦果を挙げている。
戦闘機やミサイル、ヘリコプターを想定した既存の防空装備にとって、これら極近距離の脅威は対応困難だ。陸上自衛隊も、冷戦時代から多層的で強固な防空体制を組み上げてきたが、この新たな脅威への対処能力が欠けている。

北欧スウェーデンの防衛企業Saabは、独自のカウンターUAS(対UAS)ソリューションを構築し、自衛隊へ提案しようとしている。興味深いのは、同社が「完成品」ではなく「考え方」を提案しようとしている点だ。

わずか84日でスウェーデン空軍に導入された「ロキ」
同社のカウンターUASで興味深い事例が、スウェーデン空軍に導入された「LOKE(ロキ)」だ。小型索敵レーダー「ジラフ1X」と、車載式のRWS(遠隔操作銃塔)「トラックファイア」を組みあわせたロキは、わずか84日で評価を完了し、配備を開始した。なぜ、短期間での導入が可能だったのか?
それは、スウェーデン空軍がすでに運用している装備を活用したからだ。ジラフ1X、トラックファイアとも、以前からスウェーデン空軍で使用されていた。各システムは定期的なソフトウェア開発により進化を続けているが、対小型無人機に必要な中核的な能力は、既存のシステム構成の中にすでに備わっていた。

汎用レーダーであるジラフ1Xに、小型低速目標を識別するモードを加え、これらを処理するC2(指揮統制)システムと組みあわせた。これまで12.7mm機関銃を搭載していたトラックファイアRWSは、大口径30mm機関砲に換装し、空中炸裂弾を使用できるようにした。

宇梶氏は同様の考え方で陸上自衛隊のカウンターUAS能力を構築できると話す。陸自は現在、30mm機関砲搭載RWSの配備を進めており、これにジラフ1Xレーダーを組みあわせることで有効なカウンターUASシステムにできるだろう、と。

複合型カウンターUASシステム
宇梶氏は、SaabのC-UASシステムが特定のプラットフォーム(装備・車両)に依存しない、モジュール式・オープンアーキテクチャの考え方を用いており、他社のシステムを組み合わせて完結したカウンターUASソリューションを構築することが比較的容易だと強調する。
Saabは大型車体にジラフ1Xレーダーと、近接迎撃用の30mm機関砲搭載RWS、短距離迎撃用のBAE・ボフォース社製40mm機関砲をまとめて積載した移動式の複合型カウンターUASシステムを構想しているが、宇梶氏はこれらの構成要素の多くが、すでに日本に存在すると話す。

前述したとおり、30mm機関砲搭載RWSは日本で配備が進んでおり、40mm機関砲も海上保安庁の大型巡視船用として国内製造された実績がある。車体についても、19式装輪自走155mm榴弾砲用にドイツMAN社製8輪トラックを日本製鋼所が生産しており、これらの国内の既存システムとSaabのジラフ1Xを組み合わせることで、陸上自衛隊に費用対効果の高い、完結したカウンターUASソリューションを提供できる。
既存装備の組みあわせにより新たな使い方を見出す――宇梶氏はこうしたSaabのもの作りの考え方を「レゴブロック」に喩える。カウンターUAS能力の整備は喫緊の課題であり、Saabの思考は自衛隊に新たな、そしてスピード感のある選択肢を与えることになるだろう。
