従来のモデルXよりは手の届きやすい価格帯か? 3列シートSUVを求めるユーザーにとっては新たな選択肢に
テスラが開発を進める6人乗りSUV「モデルY L」が、欧州市場投入に向けて最終段階へ入ったようだ。

スクープ班のカメラは、ニュルブルクリンクでテスト走行を続けるプロトタイプを捉えた。フロントとリアこそカモフラージュが施されているものの、ボディ中央部はほぼそのまま公開されており、市販仕様に近い完成度へ達していることがうかがえる。
今回目撃されたモデルY Lは、中国に続いて米国でも発売が始まった3列シート仕様で、2列目に独立シートを採用した「2+2+2」レイアウトが最大の特徴だ。従来の5人乗りモデルYよりも多人数乗車を重視した設計となっており、ファミリーユースを意識した新たなバリエーションとして位置付けられる。

欧州でテストが始まったことは、この仕様が中国や北米だけの専用モデルでは終わらないことを示している。テスラにとって欧州はモデルYがベストセラーとなった重要市場であり、競争が激化するなかで商品力をさらに高める必要がある。そこで白羽の矢が立ったのが、より実用性を高めたモデルY Lというわけだ。

この新モデルが注目される理由は、単にシートが1列増えたことだけではない。背景には、テスラのフラッグシップSUV「モデルX」が実質的にラインアップから姿を消したことがある。モデルXが担っていた3列シートSUVというポジションが空白となった今、その役割をより現実的な価格帯のモデルY Lへ引き継ごうという狙いが透けて見える。
実際、モデルY Lは大型SUVほどのボディサイズではないものの、3列シートを必要とするファミリー層には十分な魅力を備える。ミニバンほど大きな車体を必要とせず、SUVらしいスタイルと使い勝手を両立できることから、欧州でも一定の需要が見込まれているようだ。
もちろん、今回のプロトタイプはフロントとリア周辺にわずかな偽装が残されているものの、エクステリアに大きな変更は確認できない。つまり、テスラがアピールしたいのはデザインではなく、「6人乗り」という新たな価値そのものなのだろう。テスラがモデルYの販売力をさらに引き上げる切り札として、この仕様を位置付けていることが伝わってくる。
モデルY Lの魅力は、シートが1列増えただけではない。米国仕様には、通常の「モデルY Premium AWD」を上回る装備が与えられ、実用性と快適性の両面でワンランク上の商品へと仕上げられている。
パワートレーンでは、88kWhの大容量バッテリーを搭載。航続距離は標準モデルとほぼ同等を維持しながら、加速性能の向上も図られているという。さらに、家電製品などへ給電できるV2L(Vehicle-to-Load)機能を採用するほか、19スピーカーのプレミアムオーディオ、アクティブ冷却機能付き50Wワイヤレス充電パッドなど、ファミリーユースを意識した快適装備も充実している。欧州仕様にも同様の内容が採用される可能性は高そうだ。
もっとも、そのぶん価格も上昇する。米国ではモデルY Lが高性能モデル「モデルY Performance」を上回る価格に設定されており、欧州市場でもプレミアムモデルとして展開される可能性が高い。とはいえ、従来のモデルXよりは手の届きやすい価格帯になるとみられ、3列シートSUVを求めるユーザーにとっては新たな選択肢となりそうだ。
テスラがこのモデルを急ぐ背景には、市場環境の変化もある。かつてEV市場をリードしてきた同社だが、中国ではBYDをはじめとする新興メーカーが勢いを増し、欧州でも競争は年々激しくなっている。そのなかで、ベストセラーであるモデルYの商品力をさらに高めることは、販売を維持・拡大するうえで重要な戦略となる。
今回ニュルブルクリンクでプロトタイプが確認されたことで、欧州市場投入は現実味を増した。モデルY Lは単なるロングボディ仕様ではなく、「モデルXなき時代」にテスラの3列シートSUVを担う戦略車として開発された1台と言えるだろう。
SUV人気が続く欧州市場で、この6人乗りモデルが新たな販売の柱となるのか。そして将来的に他地域への展開が広がるのか。モデルY Lは、テスラの次なる一手を占う重要な存在として、今後も注目を集めそうだ。












