BMWの原点を凝縮

BMWの売れ筋「1シリーズ」(2026年上期輸入車新車登録15位)、「2シリーズアクティブツアラー」(同12位)、「X1」(同8位)、「X3」(同13位)の4モデルに、「オリジナル」という新エントリーグレードが導入された。グレード名は、BMWの“原点”となる魅力のオリジン(起源)という意味が込められた日本独自の特別仕様だ。BMWカスタマーのアンケートで、BMWを選ぶ要素として「駆けぬける歓び」「デザイン」「デジタル体験」「安心と安全」の4つが主に集約された。これらがBMWらしさを形作るという前提に立ち、何を外せるかよりもBMWに何を求めるかで装備の内容を決めた特別仕様車だという。
通常こうした廉価グレードによるテコ入れは、モデル末期に施行されるイメージがあるが、これらのモデルはいずれも登場からそれほどの年数が経っているわけではない。現行型の本邦導入時期は、古い順にU06型2シリーズアクティブツアラーが2022年、U11型X1が2023年、F70型1シリーズが2024年、G45型X3が2024年である。
ここはやはり、2015年から輸入車販売台数トップを走るメルセデス・ベンツへの、強烈なライバル心が原動力と見るべきだろう(MINIを入れれば圧倒的勝利とはいえ)。そのメルセデス・ベンツは昨年、売れ筋の「GLC」、「GLE」で「コア」という廉価グレードを登場させて話題となった。すでに発表されている「iX3」など、次のノイエ・クラッセ時代への弾みをつけるために、現状の手駒の伸び代は最大限使うべきだろう。今回上記4モデルのうち1シリーズ、X1、X3の3モデルに試乗したので、かいつまんでその魅力を紹介しよう。
見事な価格設定
BMW X3 20 xDrive original/ BMW X3 20d xDrive original

まずはミドサイズSUV、BMWでいうところのSAV「X3」のガソリンモデル「X3 20 xDrive オリジナル」とディーゼルモデル「X3 20d xDrive オリジナル」に試乗した。ボディカラーはガソリン車のX3 20 オリジナルがグレーで、ディーゼル車のX3 20d オリジナルが白だったが、今回オリジナルで選べるボディカラーは白黒グレーの3色に限定される。ただし、BMWカスタマーは白黒がそれぞれ3割、グレーが2割で、残りの2割がカラフルなボディカラーを選択するというから8割をカバーする3色ということになる。残りの2割の色を選ぶなら非オリジナルをどうぞ、ということだ。
X3 20 オリジナルの価格は767万円で、従来の最廉価グレードの「X3 20 xDrive xライン」(818万円)に対して51万円安とした。ディーゼルモデルのX3 20d オリジナルは787万円で、こちらも800万円を下回り、従来のX3ディーゼル最廉価グレードディーゼルの「X3 20d xDrive Mスポーツ」(885万円)よりなんと100万円近くも安い。これは3シリーズツーリングのディーゼルモデル(810万円、320d xDrive)よりも低く、戦略的価格設定であることを強調していた。
それでもACCはもちろん、光るグリルのBMWアイコニック・グロー、カーブドディスプレイ、HUD、パワーシートなどは標準装備している。変更された主な装備は、19インチホイール(18インチにダウン)、アダプティブLEDヘッドライト(LEDヘッドライトに)、ハーマン/カードンサラウンドサウンドシステム(750W、15スピーカーから100W、6スピーカーに)、3ゾーンオートエアコン(2ゾーンオートエアコン)程度だ。

パワートレインはX3 20 オリジナルが2.0リッター直4ガソリンターボ(190PS、310Nm)を、X3 20 オリジナルが2.0リッター直4ディーゼルターボ(197PS、400Nm)を搭載し、ともに8速ATを組み合わせ、駆動方式はAWDとなる。乗り比べてしまうと、ディーゼルのトルキーなエンジンが光り、さらに20dの試乗車には専用オプションのMスポーツパッケージ(60万円=Mスポーツサスペンション、19インチアロイホイールなど)が装備されていたため、圧倒的にX3 20d オリジナルの走りが上回った。ちなみにガソリン車のX3 20 オリジナルにもMスポーツパッケージを選択可能だ。
それにしても見事な価格設定だ。従来ガソリン車(818万円=X3 20 xDrive xライン)とディーゼル車(885万円=X3 20d xDrive Mスポーツ)では70万円近い差があったが、オリジナルでは20万円差として、さらに走りもスタイリングも変わるMスポーツパッケージを60万円で選べると来たら、いやでもX3 20d オリジナルのMスポーツパッケージに目が向いてしまう。
SPECIFICATIONS
BMW X3 20 xDrive オリジナル〈X3 20d xDrive オリジナル〉
ボディサイズ:全長4755 全幅1920 全高1660mm
ホイールベース:2865mm
車両重量:1890〈1930〉kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998〈1995〉cc
最高出力:140〈145〉kW(190〈197〉PS)/5000〈4000〉rpm
最大トルク:310〈400〉Nm/1500〜4000〈1500〜2750〉rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソン式ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/60R18
燃料消費率(WLTC):13.6〈16.3〉km/L
車両本体価格:767〈787〉万円
高級感あるコンパクト
BMW 120 original

1シリーズの「120 オリジナル」は、横置き1.5リッター直3ターボに7速DCTを組み合わせるFWDコンパクトカーである。2004年に登場した初代はエントリーモデルながら駆動方式にRWDを採用し、BMWらしさを包含した名車と認識していた。3代目でFWD化されたものの、その乗り味に高濃度BMWを感じる仕上げとなっていた。現行型は前述のとおり2024年に導入された4代目である。
120 オリジナルの価格は従来の最廉価グレード「120」から約20万円安い480万円だ。その分パワーシート、電動テールゲート、40:20:40可倒式リヤシートなどが装備されず、ハンズオフ機能付きACCのドライビングアシストプロフェッショナルはオプションでも選べない。だが、カーブドディスプレイやACC、アダプティブLEDヘッドライトなどは標準で装備されるので、割り切れば納得感のある価格設定だ。

ちなみに今回の特別仕様車「オリジナル」は全車48Vマイルドハイブリッド(MHEV)車で、120 オリジナルの場合、トランスミッションに内蔵された電気モーターが発進時に駆動力をアシストする。非力(失礼)な3気筒エンジンでも、ひと転がりめがスムーズだと高級感を感じられる。アイドルストップからのエンジン再始動も滑らかだ。一点だけ、以前試乗した「M135」でも感じたが、Aピラーとドアミラーの隙間が狭く、市街地の特に横断歩道のある右左折では緊張する場面があるかもしれない。これはコンパクトカーとしては改善すべき点だろう。
SPECIFICATIONS
BMW 120 オリジナル
ボディサイズ:全長4370 全幅1800 全高1465mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1460kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:1498cc
最高出力:115kW(156PS)/5000rpm
最大トルク:240Nm/1500〜4400rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後205/55R17
燃料消費率(WLTC):16.8km/L
車両本体価格:480万円
日本車とも競合できるように
BMW X1 sDrive20i original

最後にコンパクトSUV「X1」の「X1 sDrive20i オリジナル」に試乗した。従来の廉価グレードの「X1 sDrive20i Mスポーツ」(567万円)より42万円安い525万円で、120 オリジナルと同じスペックの3気筒エンジンを搭載し、7速DCTを組み合わせるFWD車だ。都市部で乗りやすいサイズのSUVとして、輸入車だけでなく、日本車の競合と比べても戦略的価格設定にしたという。
X1はMスポーツとの比較なので、パワーシート、スライディングリヤシートなどのほかに、シフトパドルやアダプティブMサスペンションなども備わらず、ハンズオフ機能付きACCのドライビングアシストプロフェッショナルはやはりオプションでも選べない。一方でカーブドディスプレイやACC、アダプティブLEDヘッドライトなどは標準で装備されるのも1シリーズと同じだ。
グローバル商品の自動車は世界中で販売されるため、日本だけで価格を決めることはできず、どうしても世界の景気に左右される。当然日本以上のインフレが吹き荒れる欧米や、最近の猛烈な円安からくる人件費や原材料の高騰などもあって、特にプレミアムブランドの車両価格は年々上がっている。誰しも、購入時も以前より慎重になるのは当然だ。これまで輸入車はどうしても装備過多のモデルを導入せざるをえない背景があったが、日本の弱体化を背景に各社、装備を絞った日本向け廉価モデルを導入する流れとなれば、これは日本車メーカーとしても脅威となるだろう。
SPECIFICATIONS
BMW X1 sDrive20i オリジナル
ボディサイズ:全長4500 全幅1835 全高1645mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1580kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ+モーター
総排気量:1499cc
最高出力:115kW(156PS)/5000rpm
最大トルク:240Nm/1500〜4400rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後205/65R17
燃料消費率(WLTC):15.6km/L
車両本体価格:525万円
PHOTO/平野陽(Akio HIRANO)

