連載

クルマ名付け学

LAMBORGHINI COUNTACH

車名の由来は方言から

独特なボディデザインで知られるランボルギーニ カウンタック(写真はLP400)。
独特なボディデザインで知られるランボルギーニ カウンタック(写真はLP400)。

「カウンタック」という名前を聞いて、低く鋭いウェッジシェイプや跳ね上がる「シザードア」を思い浮かべる人は多いだろう。1970年代後半の日本で巻き起こったスーパーカーブームでも象徴的な存在となり、その独特なスタイルとともに「カウンタック」という響き自体が強烈な印象を残した。

ランボルギーニといえば、闘牛にまつわる名称を採用することで知られている。しかし、カウンタックはその系譜に属さない。「Countach」は、イタリア北西部ピエモンテ地方の方言に由来する言葉だ。そして、この名前が誕生した経緯には少々意外なエピソードがある。

ミウラの次を目指した「LP112」プロジェクト

「シザードア」と極端に低いウェッジシェイプのランボルギーニ カウンタック LP400。
「シザードア」と極端に低いウェッジシェイプのランボルギーニ カウンタック LP400。

カウンタックの物語は、ランボルギーニが「ミウラ」に続く新世代のスーパースポーツカーを模索していた1960年代末に始まる。その後継車開発プロジェクトに与えられた社内コードが「LP112」だった。LPとはイタリア語の「Longitudinale Posteriore」の略で、エンジンを後方に縦置きするレイアウトを意味する。

そして1971年3月、マルチェロ・ガンディーニがデザインした「Countach LP500」がジュネーブモーターショーで初公開された。直線を基調とする極端に低いウェッジシェイプは、曲線的なミウラとはまったく異なるものだった。このプロトタイプは大きな反響を呼び、その成功を受けて市販化が進められることになった。

ピエモンテ方言の感嘆詞

"countach”は驚きや感嘆などを表すという(写真はカウンタック S)。
“countach”は驚きや感嘆などを表すという(写真はカウンタック S)。

では、なぜこの未来的なスーパーカーが「Countach」と呼ばれることになったのか。ランボルギーニの公式ウェブサイトでは、その由来に関するガンディーニ本人の証言を紹介している。当時、モーターショーに出展するクルマの製作は夜まで続くことがあり、スタッフたちは眠気を払うために冗談を言いながら作業していたという。そのなかに、ほとんどピエモンテ方言しか話さない職人がおり、彼が頻繁に口にしていた言葉が「Countach」だった。

ガンディーニによれば、この言葉は「疫病」「伝染病」といった意味を持つ一方、実際には驚きや感嘆、さらには賞賛を表す感嘆詞として使われていた。英語なら「Goodness」のようなニュアンスだと説明されている。ガンディーニは冗談半分に、「このクルマを『Countach』と呼んだらどうだろう」と考えたという。

冗談が車名に

英語では "Coon-tach" と「クーンタッチ」に近いようだ。
英語では “Coon-tach” と「クーンタッチ」に近いようだ。

ガンディーニはランボルギーニのテストドライバー、ボブ・ウォレスに英語圏の人間に「Countach」がどう聞こえるか尋ねた。ウォレスが実際に発音してみると、その響きがうまくはまったという。そこで「Countach」の文字を作り、車体に貼り付けた。つまり、会議室でマーケティング戦略を練った末に決められた名前ではなく、ショーカー製作現場で交わされた会話から生まれた名称だった。

なお、日本では「カウンタック」という呼び方が定着しているが、ランボルギーニはCountachの発音を「Coon-tach」(≒クーンタッチ)と案内している。標準イタリア語ではなくピエモンテ地方の方言であるため、綴りから発音を厳密に推測するのは難しい名称でもある。

1971年のLP500から市販型LP400へ

5.2リッターエンジンを搭載するLamborghini Countach Quattrovalvole。
5.2リッターエンジンを搭載するLamborghini Countach Quattrovalvole。

1971年のジュネーブモーターショーに登場したLP500は、あくまでコンセプトカーだった。3年にわたり市販化に向けた開発とロードテストが行われ、1974年に市販モデル「Countach LP400」が登場する。LP500が5.0リッターV12を想定していたのに対し、LP400には4.0リッターV12が搭載された。

なお、オリジナルのLP500は市販化に向けた開発過程でクラッシュテストに使用され、現存していない。ランボルギーニの歴史部門「ポロストリコ」は後年、このLP500を再現し、2021年に公開している。

16年にわたって進化したカウンタック

1988年の創立25周年記念モデル「Lamborghini Countach 25 Anniversario」。
1988年の創立25周年記念モデル「Lamborghini Countach 25 Anniversario」。

カウンタックはその後も進化を続けた。1978年にはワイドタイヤと拡大されたホイールアーチを採用したLP400S、1982年には4.8リッターV12の5000S、1985年には5.2リッターV12を搭載する5000 クワトロバルボーレが登場した。

1988年にはランボルギーニ創立25周年を記念した「Countach 25 Anniversario」が登場。1990年に後継モデル「ディアブロ」に道を譲るまで、カウンタックはランボルギーニのフラッグシップモデルの役割を担った。

カウンタックがランボルギーニに残したもの

オリジナルの登場から50年を記念して発表された「Lamborghini Countach LPI 800-4」。
オリジナルの登場から50年を記念して発表された「Lamborghini Countach LPI 800-4」。

カウンタックが残したのは車名だけではない。ウェッジシェイプや低いノーズ、そして上方へ跳ね上がるシザードアなどは、その後のランボルギーニV12モデルに大きな影響を与えた。とりわけシザードアは、ディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールなどにも受け継がれ、V12ランボルギーニを象徴するデザイン要素となった。

2021年には、オリジナルの発表から50周年を記念して「Countach LPI 800-4」が発表された。V12エンジンとハイブリッドシステムを組み合わせた112台限定のモデルだった。

「すごい!」が、そのまま伝説の名前に

フェラーリの「テスタロッサ」が赤く塗られたカムカバーという明確な特徴から生まれた名前だったのに対し、カウンタックの由来はまったく異なる。その出発点は、ピエモンテ地方で驚きや感嘆を表すひと言だった。そして、その言葉が発せられるにふさわしいほど、1971年のLP500はそれまでのスポーツカーとは異なる姿をしていた。

「Countach!」

驚くべきクルマを目の前にしたときの感嘆の声が、そのままクルマの名前になった。モデルの性格をここまで端的に表した車名も珍しいかもしれない。

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