名前に負けないグッドシルエット!「おっぱいウインカー」

まずは一度聞いたら忘れない「おっぱいウインカー」。

1966年、スーパーカブC50は新開発のOHCエンジンを採用するとともに車体も一新。フラッシャーやテールランプなどの灯火類も大型化された。資料によれば、このとき採用されたウインカーレンズは四輪スポーツカー「S600」と同じ形状だったという。

そして、その丸く張り出したレンズ形状から、カブ好きの間でいつしか「おっぱいウインカー」と呼ばれるようになった。おっぱいウインカーには三種類あり、初期型はS600と同じタイプ。何ともストレートな愛称だけれど、写真を見れば「なるほどね」となるはず。

丸く張り出したレンズ形状から付いた通称が「おっぱいウインカー」。初期タイプにはHonda S600と同形状のウインカーレンズが使われていた。

テールだけで3種類!「鷲鼻・ピノキオ・おむすび」

カブマニアの世界は、後ろ姿を見るだけでも濃い。

初代C100シリーズは細かな仕様変更を繰り返しており、テールランプの形にも違いがある。初期型は、その横から見た形状から「鷲鼻テール」。1960年ごろからはレンズ後端にリフレクター(反射板)が付いた「ピノキオテール」、さらに1960年代中盤以降のタイプは「おむすびテール」と呼ばれている。

正式な部品名称ではないけれど、形の特徴をそのまま愛称にしてしまうから覚えやすい。しかも、こうした違いが年式を見分ける手がかりになるのだから、マニアにとっては侮れないポイントなのだ。

テールランプは初期の通称「鷲鼻」※画像左、1960年くらいからリフレクターがついた通称「ピノキオ」※画像右、60年代中盤以降の通称「おむすび」※画像なし、と3種類。

前から見れば納得!「かもめハンドル」

続いては1971年に登場したスーパーカブ デラックスC50。

このモデルでは燃料タンクをボディ内部へ収めた一体型ボディを採用するなど、大きくイメージを変えた。そのなかでハンドルも独特な形状となり、正面から眺めると羽を広げて飛ぶかもめのように見えることから「かもめハンドル」と呼ばれるようになった。Hondaも1971年型デラックスについて「カモメが飛んでいる姿にも見える形状のハンドル」と紹介している。

ちなみに、後のリトルカブのハンドルはこの形がモチーフになったとされる。カブを正面から眺めて「かもめ」を想像できるようになったら、もう立派なカブ好きかもしれない。

正面から見れば、左右へ伸びたハンドルが羽を広げた“かもめ”のよう。1971年登場のスーパーカブ デラックスを象徴するディテールのひとつだ。

やさしく光るから「行灯カブ」

最後は「行灯(あんどん)」。

1968年に登場したスーパーカブC90では、前方から車両の存在を確認しやすくするためポジションライトを新設。翌1969年にはC50にも採用が広がっている。当時の資料でも、C90へのポジションライト新設と、1969年C50への展開が確認できる。

このポジションランプが昔の「行灯」のように見えることから、装着車はいつしか「行灯カブ」と呼ばれるようになった。形状にはいくつか種類があり、1976年には姿を消している。

ハンドル中央でやさしく光るポジションランプ。その姿から「行灯カブ」の愛称が生まれた。いまではクラシックカブを語るときの定番ワードだ。

おっぱい、おむすび、ピノキオ、かもめに行灯……。こうして並べると、とてもバイクの部品を語っているとは思えない(笑)。でも、見た瞬間に形が伝わり、何十年経ってもカブ好き同士で通じてしまう。正式名称だけでは語れない、こんな愛称の豊かさも長い歴史を持つスーパーカブならではなのである。

※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】