マツダのスポーツカー文化を世界へ発信し続けるための存在。

マツダが、ゲーム「グランツーリスモ」向けのレーシングカー「RX-VISION GT3 Evo」を発表した。

ベースとなるのは、2015年の東京モーターショーで世界初公開された「RX-VISION」である。次世代ロータリーエンジン「SKYACTIV-R」を搭載するFRスポーツカーとして提案されたコンセプトモデルで、その流麗なスタイリングは大きな注目を集めた。

マツダ RX-VISION GT3 Evo ティザーイメージ

RX-VISIONそのものの市販化は実現しなかったが、そのデザインをモータースポーツ仕様へ発展させた「MAZDA RX-VISION GT3 CONCEPT」が誕生。2020年5月から「グランツーリスモSPORT」に登場し、ゲームの世界でマツダのロータリースポーツを体験できる存在となった。

そして登場から約6年を経た2026年、その進化版となる「RX-VISION GT3 Evo」が姿を現した。

現時点で公開されている情報は限られているが、公開された映像や画像を見る限り、単なるカラーリング変更ではない。

マツダ RX-VISION GT3 Evo ティザーイメージ

まず目を引くのがフロントまわりだ。左右のエアインテークにはLED補助ライトが追加され、グリル開口部もスプリッター付近まで拡大されたように見える。さらにスプリッターには新形状のサイドプレートを採用し、その上にはカナードを追加。空力性能を意識したアップデートが随所に確認できる。

サイドビューでは基本的なプロポーションを維持しながら、サイドスカートに大型のサイドプレートを追加。リアにも新デザインのディフューザーとリアウイングが与えられ、カーボンパーツも増えるなど、従来型以上にレーシングカーらしい迫力を強めている。

現段階で「Evo」の詳細なスペックは公表されていない。ベースとなった「MAZDA RX-VISION GT3 CONCEPT」は、車重1250kg、前後重量配分48:52というパッケージを採用。2.6リットル自然吸気4ローター・ロータリーエンジンから最高出力570ps/9000rpm、最大トルク540Nm/7500rpmを発生する設定である。

RX-VISION GT3 Evoでも、この基本パッケージをベースとしながら、空力性能や操縦安定性を中心に磨き上げている可能性がある。年内にはゲーム内へ実装される予定で、そのタイミングで詳細なスペックも明らかになるとみられる。

では、なぜマツダは今、このタイミングでRX-VISION GT3を進化させたのか。

RX-VISIONが初公開されたのは2015年である。すでに10年以上が経過しており、このコンセプトカーをそのまま市販モデルへ発展させる可能性は高くない。マツダのデザインや電動化戦略も当時から大きく変化している。

そう考えると、RX-VISION GT3 Evoは「次期RX」の直接的な予告というより、マツダを象徴するロータリースポーツの存在感を維持する役割を担っていると見る方が自然だ。

マツダはRX-VISION GT3 CONCEPTを発表した際、デジタルモータースポーツを通じて「クルマを操る愉しさ」を多くの人に届け、マツダファンを増やしていく狙いを示していた。現実のレーシングカーを開発して世界各国で走らせるのとは異なり、ゲームなら国境を越えて多くのユーザーがその世界観を体験できる。

RX-VISION GT3 Evoも、単なるゲーム内コンテンツにとどまらず、マツダのスポーツカー文化を世界へ発信し続けるための存在と捉えることができる。

一方、ロータリーエンジンへの期待が消えたわけでもない。

マツダはロータリーエンジンを発電機として利用する電動化技術を実用化するなど、ロータリーそのものの研究開発を終えてはいない。かつてRX-7やRX-8を生み出したメーカーだけに、高性能ロータリースポーツの復活を期待するファンは今も少なくない。

もちろん、今回のRX-VISION GT3 Evoがそのまま市販車につながることを示す材料はない。ここはゲーム用モデルと将来の市販スポーツカーを分けて考える必要がある。

それでも、10年以上前に誕生したRX-VISIONをあえて現代へ呼び戻し、「Evo」の名を与えて進化させたことは興味深い動きだ。

RX-VISION GT3 Evoは、市販化されなかった幻のロータリースポーツをゲームの世界で蘇らせる存在であると同時に、マツダが「ロータリースポーツ」というブランド資産を今も手放していないことを印象づける1台なのである。