3.1L+T88で940psを炸裂!
30年をかけて作り上げたストリート育ちのゼロヨンファイター!
フロントバンパーの開口部いっぱいに構えるインタークーラーにカーボンボンネット、そしてリヤには335/30という極太タイヤを収めるオーバーフェンダー。その姿だけでも並のチューンドカーではないことが伝わってくるJZX90チェイサーだが、秘めたパフォーマンスは見た目以上に強烈だ。

3.1L化した2JZにT88H-38GKタービンを組み合わせ、ブースト圧1.7キロで940ps&95kgmを発揮。2026のドラッグフェスティバル最終戦では、それまでのベストタイムだった11秒8を大幅に更新し、10秒454をマークした。本格派のドラッグマシンなのである。

オーナーの“たかおじ”さんは、ドラッグレース歴35年を誇るベテラン。免許を取得してすぐの頃、スタイリングと実用性に加え、当時は手頃な価格ながら高いポテンシャルを秘めていたことに惹かれ、JZX81チェイサーを購入。そこからストリートゼロヨンの世界へと足を踏み入れた。
JZX81は、最終的に2JZ換装による650ps仕様まで進化。しかし、追突事故をきっかけにJZX90へと乗り換えることになった。1996年に購入したこのJZX90とは、以来約30年にわたって付き合い続けている。

時代の流れとともに、走るステージはストリートからサーキットでのドラッグレースへと移行。それに伴い、サイドバー付きロールケージやセーフティネットなどをレギュレーションに合わせて装備し、2名乗車化や軽量化にも着手した。それでも、たかおじさんが一貫して守り続けているのが、「ストリートで楽しめるチューニングカー」であることだ。

エンジン換装やオーバーフェンダーの装着、シーケンシャルミッションへの変更など、大きな仕様変更を行うたびに公認を取得。排気系も効率を最優先した90φフルストレートのワンオフマフラーとしながら、インナーサイレンサーを装着することでストリート走行にも対応させている。

車内には競技用のロールケージを備える一方、コレクタータンクをインタンク方式とすることで、積載スペースもしっかり確保。サーキットへは積載車ではなく自走で向かい、普段乗りやツーリング、さらにはカスタムイベントへの参加まで、この一台でこなしている。
「チューニングカーは、ストリートで乗っていてこそ楽しいですから」と、たかおじさん。

タイムだけを追求するなら、リヤを15インチ化してドラッグスリックを履かせ、ゴール後の安全性を高めるドラッグシュートを装着するという選択肢もある。実際に検討したこともあったそうだが、速さと引き換えにストリートチューンドらしいスタイルを失いたくないという思いから、あえて採用を見送っている。

現在のパワーユニットは、3.1L仕様の2JZにT88H-38GKタービンを組み合わせたもの。940ps仕様への進化に合わせて、OS-FR5シーケンシャルミッションとLINK G4Xを新たに投入した。
従来の780ps仕様では、シフトアップ時に車体が大きく暴れる症状が出ていた。そこで、エンジン特性を高回転型へと変更するとともに、フラットシフトを導入。シフトアップ時の挙動を安定させ、よりスムーズに加速できるように仕上げている。

その効果はタイムにも明確に表れた。3.1L化とシーケンシャルミッション化を施して臨んだ昨年のドラフェス最終戦では、10秒454を記録。今後はブースト圧を2.0キロまで引き上げ、1000psで10秒フラットを目指すという。
一方、走行性能の追求と同じくらい、たかおじさんが楽しんでいるのが“魅せる”ためのアップデートだ。
若い頃からオリジナリティを重視し、かつてはタービンのコンプレッサーハウジングやパイピングを鏡面仕上げにするなど、エンジンルームの美しさにもこだわってきた。しかし、数年前にオプション本誌主催の「オプションジャンボリー」で初めて展示イベントに参加したことが、その方向性を大きく変えるきっかけとなった。

海外のビルダーの間では、鏡面仕上げからブラックを基調としたコーディネイトへとトレンドが移っていることを知り、エンジンルームを中心にブラック化をスタート。カムカバーやT88H-38GKのコンプレッサーハウジングには、見た目だけでなく機能性も考慮し、マットブラックの遮熱塗装を施した。

パイピングやサージタンクは、あえて鏡面仕上げの新品パーツをグロスブラックでペイント。「本当に塗っていいんですか?」とオーダー時に確認されたほどだという。マットとグロスという異なる黒の質感を使い分けることで、単調にならないエンジンルームを作り上げた。ホースバンドやステーといったショートパーツも、交換のタイミングに合わせてブラックに統一している。
唯一、現在もエンジンルームで存在感を放っているのが、パープルのカムスプロケットだ。本人も気になっている部分で、ブラック化するためにRSE製のカムスプロケットを手配済みだったものの、残念ながら今回の取材には間に合わなかったそうだ。

こだわりはボディにも及ぶ。ダークグリーンマイカのボディカラーとブラック基調のエンジンルームに合わせ、ドラッグレースでウインドウに貼るゼッケンやステッカーまでマットブラックでアレンジ。足元にはアドバンレーシングR6を投入し、マシニング加工による文字の光沢までマジックで抑えるという徹底ぶりだ。
タイヤサイズはフロントが265/35、リヤが335/30。オーバーフェンダーによって極太のリヤタイヤを収めながらも、ドラッグ専用車に振り切ることなく、ストリートチューンドらしいシルエットを維持している。

走行距離はすでに24万kmを突破。ウェザーストリップをはじめとする純正部品の生産終了という、長期所有ならではの問題にも直面している。それでも、たかおじさんにこのJZX90を降りるつもりはない。
940psという圧倒的なパワーと、10秒454という実績を持ちながら、自走でサーキットへ向かい、ツーリングにも出掛け、展示イベントでは磨き上げた姿を披露する。そして、次なる目標は1000psと10秒フラットだ。

速さだけを求めるなら、もっと合理的な方法はいくらでもある。それでも、ストリートカーとしてのスタイルと楽しさを守りながら速さを追求し、さらに見せるための美しさにも妥協しない。30年という歳月をかけて育て続けてきたこのJZX90は、たかおじさんが考える「チューニングカーの楽しさ」そのものを体現した一台なのだ。
●取材協力:オートガレージM 香川県高松市上天神町751-7 TEL:087-816-8777
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