スーパーモンキーを覚えているだろうか?

近年ではモンキーをカスタムするために1970年代や80年代の古いパーツを使うことが、ある種のステイタスになってきた。もちろん最新のパーツほど精度も工作技術も良くないのだが、古い時代を知る年齢層にとっては郷愁でもあり憧れでもあった。当時のパーツメーカーに「スーパーモンキー」というブランドが存在した。1976年にチューニングショップとしてスタートしており、それ以前は4輪のショップだった。ところがモンキー用マフラーを製作すると大きな反響を呼ぶことになる。そこで業態をバイクのチューニングに特化させたのだ。

もはやダックスとは呼べないほどにチューニングされたスーパーモンキーST70-88。フレームは純正が残ってなくアルミモノコックによるオリジナルフレームとされている。当時最新の空力性能が盛り込まれフレーム内は中空となっている。

1977年には「関西ミニバイク連盟」という団体を結成してミニバイクレースをシリーズ戦として開始する。当時としては異例のエントリー数で、実に約100台もが参加して盛況だった。このシリーズ戦で圧倒的な強さを見せつけたのがスーパーモンキーのファクトリー仕様ダックスレーサー。このレーサーをさらに発展させるべく開発されたのが、今回紹介するST70-88なのだ。

最高速141.73km/hを記録!

ファクトリー仕様のダックスレーサーは純正のフレームを残していたが、さらなる戦闘力アップのためST70-88ではアルミモノコックフレームが採用されている。軽量化と高剛性を両立するには純正フレームだと無理があると判断されたためで、さらには空力性能を向上させるため内部を空気が流れる構造としてあることも特徴。その名の通りエンジンは88ccへとボアアップされているが、使われたパーツは専用品ばかり。クラッチプレートがマグネシウム製など、ほとんどのパーツがワンオフされたモノだった。

エンジンやミッションが失われていたものの、車体がそのまま残っていたことからレストアプロジェクトが結成された。すでにスーパーモンキーは別業種となっているため、当時を知る人物たちが中心となって作業は進められた。

このマシンの戦闘力を語るなら、バイク雑誌主催で行われた最高速アタックが最適だ。実に141.73km/hという途方もない数字を残している。当時のミニバイクレースを語るうえで欠かせないST70-88だが、長年その存在は不明とされてきた。何しろスーパーモンキー自体が業種を変えてしまったことで、もはや存在しないものとばかり思われていた。ところが近年になって当時のまま存在する、スーパーモンキー社屋に面した施設のシャッター袋の上に保管されていることが発見されたのだ。

溶接ではなくリベットでアルミをモノコック形状にしてある。エンジン・ミッションは当時のものが手に入らなかったため、当時と同じ手法でチューニングされている。もちろん実働状態に保たれている。

レストアプロジェクトが発足!

ST70-88が当時のまま残されていることを知った人物が4人ほど集まり、レストアして甦らせることを画策。資金だけでなく当時の部品を探すため、古くからのバイクレース出身者たちへ協力を要請。すると部分的に当時スーパーモンキーで市販されていたパーツなどを手に入れることに成功したが、問題だったのはエンジン・ミッション。残されていたST70-88はエンジン・ミッションがない状態だったのだ。

アルミモノコックとされたのは空力性能と軽量化を突き詰めるため。各所に軽量素材が用いられていることも特徴で、ピボットシャフトなどはチタン製だった。またバックステップも可能な限り薄いものとされている。もちろん市販品ではない。

苦節3年を経て現代に甦る!

エンジン・ミッションはワンオフされた部品ばかりでチューニングされていたため、当時と同じ仕様とすることは断念している。さすがにマグネシウム製クラッチプレートなどを再現するには途方もない予算が必要になるからだ。そこで88ccへとボアアップして強化ミッションを組むところまでは実現している。

独自形状とされたカウリングはもちろんワンオフ品。貼ってあるステッカー類は当時のままであり、このままの状態で残されていたことが奇跡のようなもの。フロントフォークやセパレートハンドルなども専用品を装備している。

レストア内容は基本的に走行可能な状態にまで戻すことが目標とされた。当時のまま残されていたとはいえ、マシンは分解され清掃や磨きが徹底して行われた。モノコックフレームはリベット留めされているため分解は不可能だが、高価なチタン素材が用いられたピボットシャフトなどは丁寧な清掃作業により再使用された。

メーターが装備されてなくシフトチェンジ時はエンジンの音で判断していたようだ。トップブリッジなどはアルミ材から削り出されたもので、ここにも軽量化への追求が見られる。カウリングの内側には補強板があり、これもアルミ材のようだ。

失われていたエンジン・ミッションは仕方ないとしても、それ以外の部品は基本的に当時のものを美しく仕上げて再利用している。専用に作られたフロントフォークや角形スイングアームなども完全に分解してから傷んだ個所を仕上げ直してある。レストアプロジェクトのメンバーはそれぞれ本業があるため、地道な作業は3年も続くことになった。その間、他にもマシンが発掘されたりレプリカを製作していたことも関係しているが、すべては「第18回モンキーミーティングin多摩」へ展示することが目標だった。次回以降もレストアプロジェクトが手がけたスーパーモンキーのマシンを紹介する予定だ。

シートカウルも当時のまま残されていた。前後に移動できるだけの長さが確保され、後ろ側はストッパー形状とされている。カウリングともどもFRP製で市販されなかったワンオフ品ばかりで構成されている。