先生:損 保太郎
某損保サービスセンターに勤務。事故対応の現場で数多くのバイク事故を見てきた経験と、警視庁の統計から事故を避けるポイントを整理する。

生徒:モン太
ライダーが亡くなる事故のニュースを見るたびに心が痛む。「どうしたら避けられるの?」と保太郎に質問。

その1:死亡事故の65%が車両同士! 交差点では右直・出会い頭に要注意

モン太 やっぱりバイクの死亡事故って、単独で転んだりするケースが多いモンか?

保太郎 もちろん単独事故もあるけど、2020~2024年の東京都内の二輪車乗車中死者をまとめると、車両同士の事故が65%、車両単独事故が35%だったんだ。

さらに車両同士の死亡事故を見ると、出会い頭が28%、バイクが直進しているところへ対向車が右折してくる「右折対直進」が26%。交差点周辺はとくに注意したい場所だね。

モン太 右直事故って、バイクはまっすぐ走っているだけなのに怖いモンな。

保太郎 そう。直進側が優先される場面でも、「対向右折車がこちらに気付いていないかもしれない」「交差道路からクルマが出てくるかもしれない」と考えながら走ることが大切なんだ。交差点じゃなくても、道路沿いに店舗や駐車場があれば、対向車が右折して入ってくる可能性があるよ。

モン太 相手が見てくれている前提で走っちゃダメってことだモンね。

保太郎 そういうこと。警視庁も四輪ドライバーから見ると二輪車は実際より遠くにいるように感じることがあるとして、右折時の注意を呼びかけている。ライダー側も「見えているはず」と思い込まないことが大事なんだ。

モン太 でも右直事故って、そんなに大きな事故になりやすいモンか?

保太郎 左折巻き込みのように同じ方向へ進んでいる車両同士の事故と比べると、右直事故や出会い頭ではお互いが衝突地点へ向かって進んでいるからね。そのぶん衝突時の速度差が大きくなり、重大事故につながることがあるんだ。

ただし、最新の2025年データでは、東京都内の二輪車死亡事故では「単独」が最多だった。事故の傾向は年によって変わるから、「右直だけ注意すればOK」ではないことも覚えておきたいね。

モン太 なるほど~。交差点では「出てくるかも」「曲がってくるかも」で構えるモン!

その2:2025年は死亡事故の54.3%が通勤途中! 朝6~8時も要注意

保太郎 次は時間帯。事故を避けるには、「どの時間帯に危険が高まりやすいか」を知っておくのも大切なんだ。

モン太 やっぱり交通量の多い朝晩モンか?

保太郎 その意識は持っておきたいね。2025年の東京都内では、二輪車乗車中の死者35人のうち、「出勤」と「退勤」を合わせた通勤途中が54.3%。過去5年平均でも通勤途中が50%を占めている。

モン太 半分以上が通勤途中!? それは気になるモン。

保太郎 交通量が多いうえに、朝は「遅刻したくない」、帰りは「早く帰りたい」と気持ちが先走りやすい。これは事故対応をしていて感じるところでもあるね。

モン太 ボクも朝ギリギリだと、つい先を急ぎたくなるモン……。

保太郎 そこを5分、10分でも余裕を持って出る。交差点で黄色信号を見て無理をしない、前車との車間を詰めすぎない、すり抜けを急がない。それだけでも事故に遭う確率はかなり変わるよ。

それと、バイクは四輪車から距離や速度を読み違えられやすい。「ライトが見えているから自分の存在にも気付いているはず」と思わない方がいい。

モン太 時間と心に余裕を持って、「相手から見えてないかも」で走るモンね。

保太郎 その心構えが大事だね。

時間帯別・二輪車乗車中死者数

その3:致命傷は頭部・胸部が中心! 胸部プロテクター着用率はわずか9.9%

保太郎 最後は、もし事故に遭ってしまった時に被害を少しでも軽くするための装備について。

モン太 やっぱり手足の骨折とかが多いモンか?

保太郎 僕の経験ではそうしたケガもよく見るけど、「死亡事故」となると話が変わってくる。

2020~2024年の東京都内の二輪車乗車中死者では、致命傷となった主な部位は頭部39%、胸部29%。この2カ所だけで約7割を占めていた。

モン太 頭と胸……どっちも命に直結する場所だモンな。

保太郎 そう。だからヘルメットを正しく着用するのはもちろん、胸部プロテクターもぜひ検討してほしい。

ところが警視庁が2025年に3344人を調査したところ、胸部プロテクターの着用率は9.9%。まだ約10人に1人なんだ。

モン太 やっぱり少ないモンな。でも、街乗りで毎回プロテクターを付けるのは面倒だって思う気持ちも分かるモン。

保太郎 実際、警視庁の調査でも「着用が面倒」が着けない理由のトップだった。でも最近は、胸部プロテクターを装着できるライディングジャケットや、最初からプロテクターを備えた製品もある。そういった装備を選ぶのもひとつの方法だよ。

ヘルメットも、かぶっているだけでは不十分。2025年の調査では、あごひもが緩い、または結束していない不適正な着用が22.9%あった。さらに過去3年間の二輪車乗車中死者では、ヘルメットの脱落割合が25.4%!つまり4人に1人のヘルメットが脱落してしまったということ。

モン太 ちゃんとしたヘルメットを、ちゃんと被る。胸部も守る。基本だけど大事だモンな。

保太郎 そうだね。事故を起こさない運転が第一だけど、完全に事故の可能性をゼロにはできない。だからこそ「危険な場面を予測する」「時間と心に余裕を持つ」「頭と胸をしっかり守る」。この3つを意識してほしいんだ。

モン太 交差点では「来るかも」、通勤では「急がない」、装備は「ちゃんと守る」。3箇条、覚えたモン!

事故を避けるために必要なのは、特別なテクニックばかりではない。交差点で相手の動きを予測すること、時間に余裕を持つこと、そして万一に備えて装備を整えること。毎日のちょっとした意識が、バイクを長く楽しむことにつながるはずだよ。

※ここでは東京都内の二輪車交通死亡事故データなどをもとに、一般的な事故防止について解説しています。道路状況や事故の発生状況は個々のケースによって異なります。

※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】