
先生:損 保太郎(以下、保太郎)
某損保サービスセンターに勤務。バイク事故を少しでも減らしたいという思いから、事故対応の経験も交えて交通ルールや危険ポイントを解説する。
生徒:モン太
バイク歴4年目。事故経験はまだなし。「なんか悪いことをしている気分になる」という理由で、すり抜けはしない派。
「違反じゃない=自由に走ってOK」ではない!
モン太 クルマの間や左側を通る「すり抜け」って、なんとなく違反切符を切られそうなイメージがあるモン。実際どうなの?
保太郎 まず知っておきたいのは、道路交通法に「すり抜け」という名前の違反があるわけじゃないってこと。だから「すり抜けかどうか」ではなく、実際にどんな走り方をしたかで考える必要があるんだ。
モン太 どんな走り方をしたか?
保太郎 そこで関係してくるのが「追越し」と「追抜き」。前の車を抜くために進路を変えて、その車の前に出るのが「追越し」。いっぽう、進路を変えずに前の車の横を通過するのが、一般に「追抜き」と呼ばれる走り方なんだ。警察庁によると、追越しには道路交通法上の規定があるけれど、追抜きそのものには直接の規定がない。
モン太 なるほど。だから「すり抜け=即違反」とはいえないモンね。
保太郎 そう。ただし、ここで「じゃあ追抜きなら何をしてもOK」と考えるのは間違い。追抜き自体が禁止されている場所もあるし、前へ割り込めば別の規定に触れることもある。
モン太 車列の横を通って、先頭にヒョイッと入るようなやつ?
保太郎 そう。法令の規定や警察官の命令、危険防止などのために停止・徐行している車両や、その後ろに続いている車両に追いついた場合、その側方を通過して前へ割り込んだり、前方を横切ったりする行為は道路交通法で禁止されている。これは「危ないから控えましょう」というマナーの話ではなく、条件に当てはまれば違反になる行為なんだ。
モン太 なるほど。「すり抜けは全部OK」でも「全部違反」でもないモンな。
保太郎 そのとおり。大事なのは、すり抜けという呼び方じゃなくて「どこを、どう走ったか」なんだ。
それと、道路の左側にスペースがあるからといって、そこを自由に走れるわけでもない。「白線の外側=バイクが走っていい場所」と単純には判断できないんだ。道路の左端には、車道外側線や路側帯、自転車用の通行空間など、見た目が似ていても意味の違うものがある。白線一本だけを見て「ここなら行ける」と決めつけない方がいい。
モン太 最近、自転車用の青いレーンも増えたモンね。
保太郎 そうだね。道路標識や道路標示によって普通自転車専用通行帯として指定されている場所は、自転車のために指定された車両通行帯。一般のバイクがすり抜けのために走る場所ではないんだ。
ただし、青く塗られている場所がすべて法的な「普通自転車専用通行帯」とは限らない。矢羽根型の路面表示など、自転車の通行位置を示すものもあるから、標識や路面表示まで確認することが大切だ。

自転車用の通行空間が整備された道路も増えている。左側にスペースがあるからといって、バイクが自由に走れるとは限らない。道路標識や路面表示を確認したい。
モン太 昔の感覚で「左が空いてるから行っちゃえ」は危ないモンな。
保太郎 そう。しかもルール以前に、道路の端は砂やゴミがたまっていたり、クルマから見えにくかったりする。走れる場所かどうかと、安全かどうかは別の話なんだ。
左折巻き込みなら基本8:2も! 直進バイクでも過失ゼロとは限らない
モン太 じゃあ、すり抜け中に事故になったらどうなるモン?
保太郎 事故対応でよく問題になるのが、バイクがクルマの左側を進んでいる時に、そのクルマが左折して接触する「左折巻き込み」だね。
たとえば、先行するクルマが左折し、後ろから直進してきたバイクと衝突したケースでは、四輪車80%、バイク20%が基本過失割合とされる例がある。ただし、これはあくまで事故状況を類型化した基本割合。実際には合図の有無や速度、位置関係、左折のタイミングなどによって修正される。
モン太 直進しているバイク側にも過失が付くことがあるモンか。
保太郎 あるね。「自分はまっすぐ走っていたから0%」とは限らない。バイク側にも、前方の状況を確認したり、左折しそうなクルマに注意したりする必要があるからね。
モン太 ウインカーが出てなくても、クルマが左に寄ってきたら警戒した方がよさそうだモン。
保太郎 その意識は大事。事故になってから「向こうが悪い」と言っても、身体を痛めるのは自分だからね。
それに、すり抜け中のバイクはクルマのドアミラーや車体の死角に入りやすい。ライダー側からクルマが見えていても、ドライバー側からこちらが見えているとは限らないんだ。
モン太 「こっちから見えてる=向こうからも見えてる」じゃないモンな。
保太郎 そういうこと。交差点の手前、店舗や駐車場の出入口、タクシーや配送車が多い場所、車列に大きな隙間ができた場所なんかは、とくに警戒したいね。
ルールを守るのは当然! マナーも大切に走りたい
モン太 結局、すり抜けできるかどうかより、無理をしないことが大事だモンな。
保太郎 そうだね。それにもうひとつ、「違反じゃなければ何をしてもいい」とは考えたくない。
バイクはクルマより車体が小さくて、動きも目立ちやすい。車列の間を大きな速度差で抜けたり、ギリギリのところを通ったりすると、ドライバーや歩行者に「怖い」と感じさせることもある。
モン太 1台の無理な走りで、「バイクって危ないな」って思われちゃうのはイヤだモン。
保太郎 僕もそう思う。ルールを守るのは当然。そのうえで、周囲に不安を与えない走り方を意識したいよね。
渋滞していれば「少しでも前へ」と思う気持ちは分かる。でも、数分早く着くことより、安全に帰る方がずっと大事だ。
モン太 バイク乗り全体のイメージも、自分たちの走り方次第だモンね。
保太郎 そういうこと。すり抜けは「違反か、違反じゃないか」だけで考える話じゃない。周囲からどう見えるか、相手に怖い思いをさせていないかまで考えながら走りたいね。ルールとマナーの両方を意識して、バイク乗りもクルマのドライバーも気持ちよく道路を使えるのが理想だよね。
※ここでは一般的な道路交通法や自動車保険について解説しています。実際の違反の有無や過失割合は、道路状況や事故状況などによって異なります。
【モトチャンプ編集部】
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