そんなバカな! ハーレーがサーキットでコンマ何秒を競う新カテゴリー、それがバガーレース!!

違和感だらけの光景

写真をご覧いただければ、「おや、なんだこれは!?」と感じるのではないでしょうか。ハーレーのツアラーモデルたちが、我先にとコーナーへ突っ込み、サーキットでコンマ何秒かを競っているのです。

「そんなバカな……」

そう思うかもしれません。あまりにも見慣れない光景だけに、違和感だらけに感じるでしょう。しかしこれがいま、一部のファンから熱狂的な支持を集めている「BAGGER RACE(バガーレース)」です。

大きなフェアリングにサドルケースを装備。長距離ツーリングを楽しむためのハーレーが、サーキットを疾走しています。深く車体をバンクさせ、激しいブレーキングを繰り返しながら、わずかな差を争っているのです。

そもそもハーレーと聞いて、どんなバイクを思い浮かべるでしょうか。スポーツスターなど一部のモデルには、これまでもレースの世界があり、日本のファンにも馴染みあるものでした。

一方で主力を担ってきたのは、長距離をゆったり走るためにつくられた大型ツーリングモデル。サーキットとは、もっとも縁遠い存在のようにも思えます。

ところが、そんなハーレーをベースに、サーキットを全開で駆け抜けるレースが世界で始まっています。

それが「Harley-Davidson Bagger World Cup(ハーレーダビッドソン・バガー・ワールドカップ)」です。

アメリカから欧州へ

順を追って説明いたしましょう。BAGGER(バガー)というのは、もともとツアラーのカスタムスタイルとして生まれたものです。

ゴージャスで快適な装備を与え、ロングライドを楽しむためのマシンを、さらに豪華なフルドレッサーへと仕上げていくカスタムが、昔から広く親しまれてきました。

その一方で、のんびり旅するためのバイクにとどめない動きも現れます。

煌びやかにドレスアップするだけでなく、エンジンや足まわりに手を加え、走りの性能を高めていく。大排気量Vツインを心臓部に持つ大柄な車体を、もっとアグレッシブに走らせる。ハイパフォーマンス化していくスタイルが、カスタムシーンで存在感を増していったのでした。

振り返れば、いつの時代も大排気量Vツインを豪快に走らせるカルチャーが、ハーレーダビッドソンにはありました。スポーツライディングとは、決して無縁ではないのです。

そして、その流れを大きく盛り上げたのが「King of the Baggers(キング・オブ・ザ・バガーズ)」です。

2020年10月、ラグナセカ・レースウェイで初開催されると、翌2021年からはMotoAmerica(全米選手権)による正式な年間チャンピオンシップシリーズへと発展しました。

大型ツアラーどうしがサーキットで激しいバトルを繰り広げるという意外性もあり、大きな人気を獲得。バガーのカスタムシーンにも、その熱が広がっていきます。

さらに、もうひとつのアメリカンブランドであり、永遠のライバルともいえるインディアンモーターサイクルとの激突も、ファンを大いに熱くさせました。

そして、その人気はついにアメリカ国内だけにとどまらなくなります。

海を越えてヨーロッパへも広がり、ハーレーダビッドソンはMotoGPと連携。2026年、バガーレースは「Harley-Davidson Bagger World Cup」としてFIM公認の世界選手権へと発展しました。

アメリカで育まれたバガーカスタムとレーシングカルチャーが、いまや世界のサーキットへと舞台を広げているのです。

MotoGP併催のFIM世界選手権へ!

イベントを盛り上げるための、単なるショーレースでしょ?

そう思う人もいるかもしれません。しかし、それは誤解です。ハーレーダビッドソン・バガーワールドカップは、ロードレース最高峰であるMotoGPのレースウイークエンドに併催され、れっきとしたFIM公認の世界選手権となっています。

2026年の初年度は、アメリカのサーキット・オブ・ジ・アメリカズを皮切りに、イタリアのムジェロ、オランダのアッセン、イギリスのシルバーストン、スペインのアラゴン、そしてオーストリアのレッドブル・リンクで行われました。

MotoGPと同じ舞台を転戦し、全6戦12レースで初代王者を争ったのです。

そして9月の最終戦を終え、記念すべき初代王者に輝いたのはオーストラリアのアーチー・マクドナルド。シーズンを戦い抜き、ハーレーによる新たな世界選手権の歴史に、最初の名を刻みました。

■BAGGER WORLD CUP 2026 CHAMPIONSHIP STANDINGS
1.Archie McDonald (AUS) – 202 points
2.Oscar Gutiérrez (SPA) – 193 points
3.Eric Granado (BRA) – 192 points
4.Andrea Iannone (ITA) – 157 points
5.Jake Lewis (USA) – 117 points
6.Filippo Rovelli (ITA) – 99 points
7.Travis Wyman (USA) – 83 points
8.Jordi Torres (SPA) – 77 points
9.Maxwell Toth (USA) – 62 points
10.Dimas Ekky Pratama (INA) – 60 points
11.Cory West (USA) – 56 points
12.Bradley Smith (GBR) – 36 points
13.Kyle Wyman (USA) – 29 points
14.James Rispoli (USA) – 29 points
15.Cody Wyman (USA) – 26 points
16.Max Flinders (USA) – 14 points

日本上陸は!?

バガー・ワールドカップの初年度はアメリカとヨーロッパでのみ行われ、日本GPはその開催地には含まれていませんでした。ならば、MotoGP日本グランプリでも、このシリーズが行われないのか!? そう、気になってくるのではないでしょうか。

じつはハーレーダビッドソンは2024年から、レースには1台も出走していないのに関わらず巨大なブースを展開しています。そして観客動員数を3日間で史上最多の12万1997人を記録した今年も、その姿はありました。

中央エントランス・グランドスタンドプラザの展示エリアに、ハーレーダビッドソンの大きなブースが出現。車両やグッズが展示されただけではありません。

バガーレースのレーシングマシンを使ったシミュレーターも用意され、多くのMotoGPファンが体験。順番を待つ列ができるほどの人気を集めていました。

会場では「なぜ、MotoGPにハーレーが?」と思った人も少なくなかったでしょう。しかし、3年連続でのMotoGP日本グランプリへの出展。ここまで見てくると、その理由がわかってきます。

ハーレーダビッドソンは、すでにMotoGPと同じ舞台で世界選手権を戦っているのですから、「日本でもバガーレースが見られるようになるのでは?」と、期待せずにはいられません。

シリーズ拡大を早くも明言

ハーレーダビッドソンは2026年10月1日、2027年に向けてレーシングプログラムを刷新すると発表。そのなかで、FIMハーレーダビッドソン・バガー・ワールドカップを同社の「プレミア・レーシング・プラットフォーム」と位置づけ、シリーズをさらに拡大していく方針を明らかにしたのです。

具体的には、2027年シーズンから参戦チーム、ライダー、レース数を増やすとしています。初年度の2026年は全6戦12レース。ハーレーの巨大なツアラーがMotoGPと同じ舞台で激戦を繰り広げ、大きな注目を集めました。そして、その初年度を終えたばかりの段階で、次のシーズンでは早くも拡大しようと、表明しているわけです。

「初年度のFIMハーレーダビッドソン・バガーワールドカップで成し遂げたことは、私たちの期待を上回るものでした」

そう語るのは、ハーレーダビッドソンのグローバルレーシングプログラムディレクターであるジェフリー・シュースラー氏です。さらに同氏は、初年度には5人の異なるウイナーが誕生し、すべてのチームが表彰台に上がり、タイトル争いも最終戦までもつれ込んだことを評価。

そのうえで、「これはまだスタートラインに立ったばかりです。ここから発展させていく素晴らしい基盤があり、目の前には非常に大きな可能性があります」とコメントしています。

さらに注目したいのは、ハーレーダビッドソンは今回の発表で、2026年シーズンを最後にMotoAmerica「King of the Baggers」へのファクトリーチーム参戦と公式サポートを終了することも明らかにしました。

アメリカでハーレーとインディアンが激しく火花を散らしてきたキング・オブ・ザ・バガーズから一歩引き、そのファクトリーレーシングで培ってきた技術、エンジニアリングの知見、サーキットで得たパフォーマンスデータを、今後はFIMハーレーダビッドソン・バガー・ワールドカップや市販車、そして Screamin’ Eagleのパフォーマンスパーツ開発へと活用していくというのです。

レースで培った技術を市販車へフィードバックし、さらにその性能をレースで証明する。そんな循環をより活性化するための重要なプログラムとして、バガーワールドカップをさらに成長させようとしています。

開催日程の発表が待ち遠しい!

そして、ここで改めて気になるのが日本です。2027年シーズンはチームが増え、ライダーが増え、レースも増える。その一方で、2026年のMotoGP日本グランプリには、3年連続でハーレーダビッドソンの巨大ブースが出展され、BAGGER WORLD CUPのロゴがいたるところにあり、バガーレースのシミュレーターまで用意されていました。

日本でも、ついにバガーレースが見られるかもしれない!?

そんな期待が膨らむのも、決して不思議ではないでしょう。はたして、2027年の開催地に日本の名は加わるのか。巨大なバガーが、もてぎのサーキットを駆け抜ける日はやって来るのでしょうか。来シーズンの開催スケジュール発表から、目が離せません!