「ドン」ブレーキと
三井流ブレーキを比較

スーパー耐久でのSpoon FL5 シビックタイプRのロガーより。グラフは鈴鹿のスプーンカーブでの走行を拡大したものだ。赤線はドンブレーキ派のドライバーAさん。コーナーに飛び込み、強いブレーキでの前荷重をつくって曲がるスタイル。
黒線は三井。Aさんは三井より奥でブレーキを開始し、高い踏力(ブレーキ液圧)を維持している時間が長い。対して三井は手前から長いブレーキ(低い山)。この区間だけでも旋回時の車速が高くマージンが生まれている。
スプーンカーブふたつめに向けて、Aさんは一度アクセルを全開にするも、再度大きいブレーキ。アクセルもゆっくり徐々に開けて操作が少ない三井は、タイム差(グラフいちばん上)を広げた。

荷重の変動は1回で
曲がるのが理想

上のログデータを見ると、フラットな姿勢で余剰な荷重移動をさせずに走るのが、いかに速いか、わかっていただけます。

これは鈴鹿サーキットのスプーンカーブの走行データです。ここは複合的なコーナーの組み合わせ。4つの項目は、上から『タイム差』『車速』『ブレーキ液圧』『アクセル開度』となっています。

黒のラインが僕です。赤は僕が子供の頃から憧れた大先輩のレーサーのひとり、Aさんです。

まず僕が1回目のブレーキを早めに緩く、長く掛け続けているのがわかります。ブレーキ開始時のブレーキ圧力が立ち上がる角度はいくらか斜めになり、圧力のピーク値はAさんの半分程度です。

一方、Aさんは急に圧力が最大値まで達して、続いて、僕より先にリリースが始まっています。ブレーキOFFも急に下がっています。ここでギザギザしたブレーキ液圧の変動は、ABSの作動などを表します。

AさんはABSも介入しているようです。高い進入速度で初めのコーナーに入り、やや突っ込み気味にアプローチして、強いブレーキを掛けてフロントを沈めたと思います。で、荷重が乗りきったところで、スパッとハンドルを切り込んで、旋回に掛かったはずです。

どうでしょう。タイミングが重なるように、やっと僕のブレーキがOFFになるポイント付近で、Aさんは早くもアクセル開度が全開の100%までになっています。複合のふたつめのコーナーに向かって、加速をしています。

車速のラインを見るとブレーキ終了後、Aさんは車速が僕より落ちています。複合の長いカーブですから、進入後の初期のブレーキ操作などで車速が落ちるとボトムでも低くなり、ずっと車速が下がったままになる。

だから、その状況から本能的に加速せざるを得ないわけです。

僕は複合コーナーをひとつのコーナーと考え、ちょっと距離のあるRを描くように走り、ボトムスピードもできるだけ維持して、クルマの向きを変えています。

遅れて僕もアクセルを少しの時間、踏んでいます。でも時間はわずかです。

理由はひとつめでアクセルを踏み過ぎてしまうと、リア荷重が乗り過ぎて、ふたつめの進入で大きな前後の荷重移動が発生してしまうからです。その前にボトムスピードを調整しておき、姿勢が整うよう準備しています。

そしてAさんは、ふたつ目のコーナーを前に、アクセルOFFから一瞬ですが、強めのブレーキを掛けています。

コーナリングを分解すると、ひとつ攻めて→また攻めて、となります。なので、荷重の変動も複数回起きて、車両姿勢も前が沈み、リアが沈み……を繰り返します。

鈴鹿では1コーナーから2コーナーに掛けてもですが、複合コーナーは、ひとつのコーナーとして、荷重移動を何度に分けてしないように考えるのがポイントです。

緩く長いブレーキで、姿勢、挙動の変化を少なくする。フロントに荷重を乗せるのは1回だけと捉え、ボトムのスピードを安定させて頑張るほうが、僕は結果として速さ、タイムにつながると考えます。

コース1周を見ると
『フラットな姿勢をつくる走り方』は速い?

僕のドライビングを述べてきましたが、緩いブレーキではクルマは止まらないのでは? と思うかもしれません。僕が2024年に乗った、スーパー耐久のFL5 シビックタイプRには、大きなブレーキシステムが付いていました。

ログデータを見ると、Aさんのドンと掛けるブレーキでは、僕とは異なり、ABSが介入していました。

ABS作動ではブレーキの液圧が制御され、制動力も変化します。液圧が抜ける場合だってあります。

逆にABSが介入しないギリギリのブレーキができれば、踏力が低くても制動距離を短くできる。僕が提唱する緩く長いブレーキをモノにしているか、確認できるバロメーターにもなります。

おさらいになりますが、制御さえ入らなければ、アンダーステアの傾向になるのを防げます。そして、緩く長くブレーキを掛けると、少ない舵角で最少の前荷重でクルマが曲がります。

スーパー耐久のこの車両では、わずかに前のめりの姿勢が、僕はいちばんコーナーで向きを変えやすかったんです。

コーナーでクルマをイン側に向かって斜めの角度にして進入せずに、円を描くように一定の角度で回る意識も大事になります。先述のスプーンカーブは、まさにその例です。

上のグラフは、鈴鹿サーキットの1周を、Aさんと僕の運転とで比べたものです。鈴鹿サーキットの基本は18のコーナーで構成されます。

グラフは上から車速、ブレーキ液圧、そしてアクセル開度です。前編と同じく、黒が僕で赤がAさんのラインとなっています。こちらは車速から判断がつくと思います。コーナー区間の車速は、ふたりにあまり差は見られません。

しかし、長い、Rが大きいなど、中高速のコーナーは、僕のほうがボトムスピードを高く維持しています。一方、ヘアピンやシケインなど、低速でタイトなコーナーでは、強くドンとブレーキを掛けて、素早くクルマの向きを転換する、フロント荷重派ともいえるAさんのほうが明らかにボトムスピードは上回っています。

Aさんには車速を落とすブレーキ、クルマの向きを変えるブレーキと、ふたつの操作が存在し、メリハリも持たせて使い分けていると思います。

じつはこれは僕の苦手な操作で、やりにくいテクニックです。素直にいって、凄いと感じています。

タイトコーナー以外でも、クリップまでは僕より車速が高く、速い例もある。ただ、ブレーキを早く離している。コーナー立ち上がりに向けて、フロントの左右に必要な荷重が巧く乗らなくて、クルマの向きが変わりきらない。

その分、加速への移行が遅れて、最終的には僕のほうが速くコーナーを脱出しているケースも確認できました。

鈴鹿のレイアウトでは、このスタイルは速さとタイムの稼ぎどころが少なく見えます。

結果として、純粋なラップタイムの比較では、このコースだと僕の運転が合っていると考えます。Aさんは経験豊富ですが、つねに新たな運転を吸収する姿勢には尊敬させられます。

走り終わってから毎回、ログデータをチェックし、僕らの走りと比べていました。実際に試して、改善して、自身の中に取り入れています。僕も学ぶことが多くあります。

フラットな姿勢を保って走る。ぜひとも、皆さんも次のスポーツ走行の機会に試してみてください。長く身についた自身の運転スタイルで、先に体が操作へ進み、1回では上手くいかないかもしれませんが、続けることにより必ず成果、結果が得られるはずです。

ただし、安全には気をつけてください。緩く長いブレーキは、初めは車速も控え目で大丈夫。そのうえで、進入を頑張らない。第一歩は、操作とクルマの動きの関係を少しでも感じることから始めましょう。


■REVSPEED

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