e-VanVan|レジャーバイクの名を継ぐ電動ファンモデル

スズキが「Japan Mobility Show 2025」で初公開する電動二輪群の中核となるのが、「e-VanVan」。1970年代に登場した名車「VanVan」シリーズをモチーフとするレジャーバイクのEV版だ 。丸みを帯びたタンクや極太タイヤといった原典の愛嬌ある造形を踏襲しながら、デジタルモチーフを散りばめた未来的なカラーリングで再構築。単なる復刻ではなく、EV時代における“遊びのバイク”を再定義した。

「e-VanVan」は、軽二輪(原付二種)相当のカテゴリーに位置づけられ、取り回しの良いコンパクトな車体(全長1810mm×全幅825mm×全高1050mm)を備える 。電動ならではのスムーズで静かな走行フィールを持ちながら、アクセル操作に対する応答性や軽快な走破性にもこだわっている点が特徴だ。レジャーや通勤、街乗りなど多用途に対応する一台として、スズキが目指す「乗る楽しさ×持つ楽しさ」を体現するモデルといえる。

GSX-8T/GSX-8TT|ネオレトロの新たな旗手

7月に欧州で発表された新型ネオレトロモデル「GSX-8T」「GSX-8TT」が、今回初めて日本で一般公開される 。この2台は、最新の並列2気筒エンジンを搭載するGSX-8Sをベースに、1960~70年代のスズキ名車群からインスピレーションを得た外観を採用している。

GSX-8Tは1960年代の「T500 Titan」を、GSX-8TTは1970年代のオフロードイメージを現代に再解釈したスタイルを持つ 。いずれも「Retro Spirit, Next Generation Performance(レトロスピリットと次世代性能の融合)」をテーマに開発され、往年の雰囲気を保ちながらも、最新の電子制御デバイスやスズキ・インテリジェント・ライド・システム(SIRS)を搭載。

主要諸元は、全長2115mm×全幅775mm×全高1105mm(GSX-8T)/1160mm(GSX-8TT)で、排気量775㎤の4サイクル並列2気筒エンジンを搭載する 。欧州や日本市場でミドルクラススポーツの中心的存在を担うモデルとして注目される。

e-PO|ペダル付き折りたたみ電動バイク

次世代のパーソナルモビリティとして出展されるのが、「e-PO」。自転車の電動アシストとEVバイクの機構を融合した原付一種相当のモビリティである 。折りたたみ可能な軽量ボディにより、室内や車載での持ち運びが容易で、都市部の“ラストワンマイル”用途を想定している。

ペダルを漕ぐことで強力な電動アシストが働き、またアクセルのみでも走行可能という二面性を備える。環境性能と利便性を両立し、日常の移動からアウトドアまでをカバーする万能機だ。全長1531mm×全幅550mm×全高990mm、車重25kgという軽快なパッケージに、定格出力0.25kWのモーターを組み合わせ、航続距離は30km以上を確保している 。

さらに、パナソニック製電動アシスト自転車と共通のバッテリーを採用し、既存の充電環境が利用できる点も利点。ユーザーの生活圏に溶け込みやすい、実用性と遊び心の融合モデルとして提案される。

e-Address/水素バーグマン/GIXXER SF 250 FFV ― 多様化する環境対応技術

スズキの二輪戦略において重要な役割を担うのが、環境対応型パワートレインを採用した3モデルだ。

まず、「e-Address」は同社二輪BEV戦略車の第一弾として位置づけられるスクーターで、2025年1月にインドで初公開され、今回が日本初展示となる 。全長1860mm×全幅715mm×全高1140mm、定格出力0.98kW(原付二種相当)を誇り、WMTCモード航続距離80kmを実現。シティユースに最適な軽快性と洗練された外観を両立させた。

次に、「水素エンジンバーグマン」は、カーボンニュートラル実現を目指すスズキのマルチパスウェイ戦略の象徴といえる技術展示車である。水素を燃焼させることでCO₂排出を大幅に抑えながら、従来のガソリンエンジンと同様に排気音を楽しめるバイクとして開発。Japan Mobility Show 2023での初公開モデルから進化したカットモデルを今回展示し、燃料供給や燃焼制御など改良の進展を披露する。

さらに、インド市場で2025年1月に発売された「GIXXER SF 250 FFV」も参考展示される。エタノール混合率85%のバイオ燃料に対応するフレックス燃料車(FFV)で、環境負荷を抑えつつガソリン併用も可能とした汎用性の高さが特徴。排気量249㎤の単気筒エンジンを搭載し、バイオエタノール普及を見据えた次世代仕様として位置づけられている。

「By Your Side」を体現する多様な二輪の未来像

スズキが掲げるテーマ「By Your Side」は、ユーザーの生活に寄り添う技術とデザインの象徴として、二輪セクションでも明確に具現化されている。e-VanVanに代表される“遊び心”、e-POやe-Addressが示す“日常性”、そして水素バーグマンやGIXXER FFVが体現する“環境への挑戦”——それぞれが異なる次元でライダーと社会の共生を志向している。

2025年のJapan Mobility Showでスズキが提示するのは、単なるモデル展示ではなく、「多様な移動の自由を持続可能にする」ための包括的なビジョンだ。二輪の新しい地平を切り開くこれらの車両は、まさにスズキが次の半世紀に向けて放つメッセージそのものである。