
スーパーカブのカスタムは奥が深い。カブの特徴の一つであるレッグシールドを外すだけで大きく雰囲気が変わり、さらに変幻自在にスタイルを変えられる。そのためスーパーカブのミーティングなどへ足を運ぶと、さまざまなスタイルにカスタムされたカブたちを見ることができる。個性豊かなオーナーほどキテレツなカスタムを施してあるものだが、やはりプロの技は一味違う。それを痛感させられたのがGARAGE521のカスタムカブを拝見した時だった。

初めてGARAGE521の若尾さんと会ったのは、もうかれこれ10数年ほど前のこと。東京・青山で開催されていたカフェカブパーティの会場に、一際センスが光るカブが数台展示されていた。そばにいたオーナーと思しき人に話しかけると、群馬県太田市でカスタムカブを手がけるショップ店主とのこと。まだ当時はGARAGE521ではなくアトリカ521を名乗っていた時代で、スズキ・ジムニー専門店の別部門だった。

当時からカスタムセンスと仕上がりレベルは抜群で、モトチャンプで紹介するや大反響だったことを覚えている。その若尾さんが完全に独立して現在の店舗を構えたのが2010年のこと。GARAGE521として正式にスタートさせた時にも取材させていただいた。当時はまだ古民家を改装した一軒家的な雰囲気だったが、内装は現在と変わらぬほどセンス良くまとめられていた。というのも若尾さんは京都芸術大学(当時は京都造形大学)に進学して映画を学んだ経験があるから。映画制作がやりたくて入学したところ、若い頃からのカスタムセンスが大道具や小道具を制作する映画技術に生かされた。

ちょうど大学1年の時、実家のある群馬県に高校3年の時に友人からもらったスーパーカブを置いたままにしていたことを思い出した。そのカブで群馬から京都まで自走(!)して、大学時代はカブのカスタムに明け暮れた。「どうやったらカブらしく無くなるかばかり考えてました」と、独自のセンスが磨かれる。センスを認められてネットシネマ 探偵事務所5の制作に関わることにもなる。映画制作が終わると一旦は中国製品を扱う会社へ就職。ところが品質が悪くクレームの嵐のような毎日。そこで前述したアトリカへ転職してアトリカ521としてスーパーカブのカスタムを展開するのだ。

開業当初からレッグシールドやハンドルまわりを外してカブらしくないスタイルを追求してきた。例えばワイドタイヤやブロックタイヤを履かせるスタイルが定着したのはGARAGE521がきっかけだったと言えるほど独創的だった。カスタムは進化を続け、今では完全にオリジナルのGARAGE521スタイルが築き上げられた。やはり古民家を改装した店舗を持ったことで、できることの幅が広がったのだろう。

現在では自社内で磨きは磨き、溶接は溶接、塗装は塗装、組み立ては組み立てのプロが作業している。逆を言えば、それまでは若尾さん一人で何でも作業していたわけで、その経験があったからこそ専門のプロへ的確な作業依頼ができるというもの。アトリカ時代とは一味も二味も違う仕上がりになっているのはそのためだ。カスタムセンスを見込まれて芸能人からの依頼も来るようになり、モトチャンプで連載されていたことをご記憶の方もいるのではないだろうか。

古民家を改装した店舗の隣家を幸運にも買い取ることができたことで、さらに仕事の幅もストックの量も増えた。隣家は主に組み立てスペースと在庫置き場として活用しているが、広大な敷地があるためカブ系以外の趣味のバイクやクルマも増殖。その変態ぶりは追って紹介するとして、今回はGARAGE521が展開するコンプリートカスタム車を1台紹介しよう。

コンプリートカスタムカブをご紹介!

GARAGE521では車体を持ち込んでカスタムを依頼することもできるが、コンプリート車両を購入することもできる。車両持ち込みは分解する段階でトラブルが発覚することが多く「コンプリート車両を購入されるのが実は安価だったりします」と、あまりオススメではない。コンプリート車両は最も安価なBasic(352,000円・税込)からフラッグシップモデルであるSTYLO(792,000円・税込)まで6種類をラインナップ。さらにオプションでさまざまな仕様へ追加変更することも可能。今回紹介するのはBasicと同じ仕様ながら艶消しブラック塗装を施したSTANDARDで462,000円(税込)となっている。

ベース車両はスーパーカブ90カスタムで、エンジンはセル付きの3速仕様。印象的な太足は前後ノーマルホイールながらダンロップK98の3.00-17サイズのタイヤを履かせたことで実現。オリジナル製品のコブラシートによりタンデム走行も可能で、そのほかベーツの4.5インチライトやルーカステール、チョッパーハンドルでスタイルを構成する。アルミステップやオリジナル製品のキックペダルなども盛り込まれ、カスタムカブを楽しむ最初の1台としてオススメだ。



