市販車は原則アンダーステア傾向

近年のクルマはトラクションコントロールやABS、内輪ブレーキ制御など電子制御装置の性能向上により極端なアンダーステアは出にくくなっているが、依然としてアンダーステア対策は運転技術への依存度が高い。

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アンダーステアは操舵輪である前輪のグリップ力が遠心力に負けてしまうことで発生する。もっとも顕著な例は路面の摩擦力が低下するシーンだ。雨や雪の路面や白線の上、砂利の浮いた場所などではタイヤのグリップ力も低下するため、アスファルトの乾燥路面と同じ速度で曲がろうとしても、前輪が外側へ滑ってしまい曲がりきれなくなる。

ただし市販車の多くは、安全のためにあえて弱アンダーステアの特性を持たせて設計されていることは覚えておきたい。これは後輪が滑るオーバーステアよりも、前輪が滑るアンダーステアの方がリカバリーしやすいためだ。

また、アンダーステアの出方は駆動方式によっても大きく変わる。前輪駆動車はアクセルペダルを踏み込みながらハンドルを切るとアンダーステアが出やすい。一方、後輪駆動車は後輪が車体を前方に押し出す力が前輪のグリップ力を上回るような特定条件下で強いアンダーステアが出る。4WDはこれら両方のメカニズムが働くため曲げづらく感じられることも多い。

近年のクルマは電子制御の進化により極端なアンダーステアは出にくくなってはいるが、こうした制御にも限界はある。アンダーステア対策として重要になるのはドライバーの操作だ。

坂道のヘアピンカーブはアンダーステアが出やすい

アンダーステアの発生には前輪の接地荷重も関わる。上り坂のカーブや加速中は後輪に荷重が移るため、どのようなクルマであっても前輪荷重が減少しアンダーステアが出やすくなる。

アンダーステアが出やすいシーンも存在する。とくに注意したい場所が坂道のカーブだ。上り坂では後輪荷重が増え、前輪の接地荷重が減少するため、前輪が路面を捉える力が弱まる。そのため上り坂のカーブでアクセルペダルを踏みすぎると、クルマは容易に外側へと膨らんでいく。

一方、下り坂は前輪荷重が増え、後輪荷重が減るためアンダーステアは出にくい状況と言える。しかし重力によって速度が高まりやすく、タイヤグリップの限界を超えることでアンダーステアになるケースが多い。

また、減速のためにブレーキを強く踏みながらハンドルを切ると、限りあるタイヤグリップが減速にのみ使われてしまい、曲がるための余力が確保できずにアンダーステアが発生する。

とくにヘアピンカーブは大きく速度を落とす必要があるうえ、大きなハンドル舵角が必要となることで上り、下りともにアンダーステアが出やすい。そして平地走行でも加速中と減速中は、坂道と同じ状況が作り出されることになる。

加速中は上り坂と同じく後輪荷重が増え、前輪荷重が減る。とくに停止状態からの急加速は、前後輪の接地圧の変化がもっとも大きくなる状況だ。交差点の右折やUターンのような場面でアクセルペダルを強く踏みすぎると、前輪が浮いたような状態に陥りハンドルを切った量ほどクルマは曲がらない。

減速中は後輪荷重が減り前輪荷重が増えるためアンダーステアは出にくくなる。しかし下り坂と同様に、ブレーキを強くかけすぎているとハンドルを切ってもクルマは曲がってくれない。アンダーステアを出さずに曲がるためには、ハンドルを切る量に応じてブレーキを弱める操作が必要になる。

ただし、一気にブレーキから足を離すとそれまで増加していた前輪荷重が失われてアンダーステアとなる。

もっとも簡単なアンダーステア対策の要点は加速しながらハンドルを切らないことと、カーブに進入する前に十分に減速を済ませ、旋回中は一定の速度を保つことだ。これを意識した運転を心がけるだけでアンダーステアは抑えられる。

市街地走行は走行ラインが膨らむアンダーステア事故に要注意

日常的な運転ではアンダーステアが意識されることは少ない。しかし、都市部の運転ほど前輪の接地荷重とアンダーステアを意識した運転が求められる。

クルマが曲がれる上限速度は、カーブの曲率半径によってある程度決まっている。また、タイヤが最大のグリップ力を発揮できる舵角量もおおむね決まっている。クルマやタイヤの性能によって上限は変化するが、この法則は不変だ。

前輪荷重の変化には上限速度を増減させる役割がある。実際は駆動力のかけ方や後輪のグリップ力も関わるため、もっと複雑な仕組みでクルマは曲がっているが、これがメカニズムの基本となる。

つまり前輪荷重のかけ方次第でアンダーステアの出方は大きく変わる。しかし、実際のところクルマが曲がらない原因の多くは単純な速度の出しすぎである場合がほとんどだ。

加えて、操作ミスによるアンダーステアもよく起こる。ハンドルの切り出しが遅れると実質的にカーブの曲率を小さくすることと同じであり曲がりづらくなる。さらに、ハンドルの操舵量不足も外側へ膨らむ大きな原因だ。これはアンダーステアではなく、ドライバーがクルマの旋回性能を引き出せていない状態と言える。

アンダーステアが強いクルマは確かに存在する。しかし、それはスポーツドライビングにおける話であり、日常的な速度域で起こるアンダーステアはすべて運転操作に起因するものだ。

とくにUターンや狭い交差点での右折はハンドルを切る量が大きいうえ、加速のためにアクセルを強く踏み込みたいシーンとなる。しかし、これはアンダーステアを助長する操作であり、走行ラインが膨らみやすい。日常の何気ない曲がり角こそ、前輪荷重を意識した操作を心がけたい。