ミッドシップスポーツを身近に感じられるトヨタ MR-S

トヨタ MR-Sは、トヨタ MR2の流れを汲むミッドシップ2シーターだ。ハイパワー化の道を歩んだSW型MR2から一転し、MR-Sでは大幅な軽量化により軽快なハンドリングを追求したフルオープンスポーツカーへと大きく路線を変えた。
MR-Sは全長3885mm×全幅1695mm×全高1235mmのコンパクトなボディに、140psを発生する1.8L 直列4気筒1ZZ-FEエンジンを搭載。主要コンポーネントをヴィッツやカローラと共有することでコストを抑えつつ、しっかりとミッドシップスポーツカーとして成立させている。
車重はわずか1t前後であり、切り詰めた前後オーバーハングと2450mmの長いホイールベースにより旧来のミッドシップスポーツらしい危うさは陰を潜め、非常に安定感ある挙動を示す点がMR-Sの大きな特徴だ。
カエルのようなフロントフェイスは販売当初こそ賛否が分かれたが、小さく愛嬌ある佇まいは今やMR-Sの大きなアイデンティティとなっている。エンジン特性はトルクフルで扱いやすく、レギュラーガソリン仕様である点も維持のしやすさに寄与する。
ミッドシップレイアウトであるため実用面は期待できないが、フロントフード下の収納に加え、シート背後に大きめの収納が用意されている点はライバル関係にあったマツダ ロードスターに対する強みだ。収納容量こそ少ないが2シーターとしての日常的な使い勝手は決して悪くない。
MR-Sのトランスミッションは、MTのほかにクラッチ操作を自動化したシーケンシャルマニュアルトランスミッションも設定されており、AT限定免許でもダイレクトな変速感を楽しめる点は見逃せない。
60万円から探せるが注意点もアリ! 理想は6速MTの後期型

MR-Sの現在の中古車価格帯は60万〜300万円程度と幅広く、当時の新車価格が188万円からであったことを考えると立派なプレミアム価格となっている。
走行距離6万km以下の良好な個体を探すなら100万円以上の予算が必要となるが、価格高騰が著しいこの年代のスポーツカーとしては、流通台数も含めて入手性はそれほど悪くない。
2002年8月にマイナーチェンジが実施され、ここでトランスミッションが5速から6速へと変わり、ボディ剛性も強化が図られた。
後期型の走行距離6万km以下の個体は140万円からであり、6速MTモデルを探そうとすると180万円以上の予算が必要となる。
後期型の価格は相応に高いが、初期型はエンジンオイルの消費トラブルや排気系の不具合が出やすいため、長く乗りたいなら対策が進んだ後期型の購入がおすすめだ。150万〜200万円の予算があれば比較的良好な個体が苦労せずみつかるだろう。
ただし、後期型の6速シーケンシャルマニュアルトランスミッションには変速不能となるリコールが出ていたため対応状況には十分に注意しよう。リコールを抜きにしても自動変速機はどうしても突発的な故障の懸念が拭い切れないため、MTを選んだ方が安心感は高い。
社外品の幌への交換は工賃を含めると20万〜30万円の出費が必要となるため、維持費を抑えたいなら純正オプションの着脱式ハードトップ装着車が狙い目だ。
維持のしやすさと走りの奥深さを備えた稀有な存在

昨今の著しいスポーツカー高騰のなかで、MR-Sは比較的現実的な予算で購入し、維持できる稀有なクルマと言えるだろう。
年式が年式だけに部品の供給状況は厳しくなってきているものの、エンジンなどの主要部品が当時の量産車と共通であるため、部品流用がしやすい点はMR-Sの大きなメリットだ。
中古部品やリビルト部品、社外部品なども活用すれば、特別なツテや知識がなくとも維持は難しくない。MR-Sはこの年代のスポーツカーとして維持難易度は低い部類となる。
しかしオープンカー特有の雨漏り対策や、前後で異なるタイヤサイズなどにより維持には相応のコストと手間はかかる。とくにミッドシップ車の生命線ともいえる足まわりの状態には気を配りたい。
搭載される1ZZエンジンはパワーが控えめであるため、速いスポーツカーに乗りたい場合は候補から外した方がよいかもしれない。MR-Sは積極的にアクセルを踏み込む乗り方でなく、ミッドシップならではのハンドリングを楽しみたい人に向くクルマだ。
電動油圧パワステとABSは装備されるが、トラクションコントロールは備わらずシャシーまわりの電子制御は最低限となる。しかし、ミッドシップレイアウト車らしい挙動を楽しむにはむしろ好都合と言えるだろう。
セリカなどに搭載された高回転高出力型の2ZZ-GEエンジンへ換装するのがMR-Sでは定番のカスタムであり、中古市場にも稀に出回ることがあるが相応に高額だ。絶対的な速さを求めるなら、は他によい選択肢がたくさんあるのでMR-Sはおすすめしない。
MR-Sは肩肘張らずに乗れるミッドシップスポーツカーだ。その点でも、現在でも稀有な存在と言えるかもしれない。
