
東京西部に隣接する山梨県上野原市は、中央自動車道を利用すれば都心から1時間以内で行くことができる。市街は国道20号線沿いに形成されているが、市域の大半は中山間地域となっている。東京からわずか1時間ほどで山里の真っ只中へ入り込めるのだ。市の北部、県道18号上野原丹波山線をたどると、東京から一番近い秘境といわれる西原地区へ行くことができる。地区の中心に観光拠点ともなっている『羽置の里びりゅう館』があり、水車挽きのそば粉を使った手打ちそばを味わうことができる。およそ1年ぶりにスーパーカブで訪ねてみた。
県道18号線は風景と走りが同時に楽しめるワインディング
山梨県道18号上野原丹波山線は、上野原市棡原から小菅村を経て丹波山村とを結ぶ主要地方道だ。全線に渡って山間部を走っていて、上野原市と小菅村との境界に鶴峠、小菅村と丹波山村の間に今川峠と2つの峠越えがある。
随分と昔のことだが、アウトライダーという雑誌でツーリングインプレッションというページを連載していたことがある。毎号1車種ずつ実際にツーリングに使用して、どこが良くてどこが悪いなんてことを書いていたのだが、撮影優先でツーリングに持ち出せないこともあった。そんなときはバイクを借りておいてひとりでツーリングして評価したのだが、そんなツーリングルートに県道18号線を選んでいた。都内の自宅から中央自動車道で上野原ICまで高速走行し、国道20号線で市街を抜けて、県道33号線、県道18号線を走りつないで小菅へ。そして、国道411号線で奥多摩湖を眺めながら青梅街道で戻ることもあれば、奥多摩周遊道路を経て檜原から戻ることもあった。いずれにしても、何度も通ったそんな試乗ルート上で一番のお気に入りの道が県道18号線だったのだ。
屈曲、アップダウンを繰り返す道は所どころ狭い個所があるがほとんどが2車線。山間部を行く道は風景に変化もあって飽きない。そんな県道18号線を棡原から進んで小菅村に至るほぼ中間に西原(さいはら)地区はある。小菅村までの沿道では最も大きな集落だ。『羽置の里びりゅう館』は西原地区の中心となる観光施設で、農産物や特産品の販売や手打ちそばをメインとした食事処がある。水車で挽いたそば粉を使った手打ちそばは素朴な味わいだ。久しぶりにそんなそばが食べたくてスーパーカブを走らせた。





山の斜面に点在する民家や畑が典型的な山村風景を作り出している
国道20号線で大垂水峠を越え、上野原市街で県道33号線に入る。県道は交通量がガクッと減り走りやすい。棡原地区に着いたところで『ふるさと長寿館』に立ち寄って休憩した。ふるさと長寿館も農産物や特産品の販売と食堂を兼ねた施設で、名物の酒まんじゅうが美味しそうだった。



県道33号線をそのまま進めば、武甲トンネルを抜けて檜原村へ行くことができる。しかし今回は西原が目的地なので、棡原から県道18号線に入る。山間部を走る道はカーブが連続していて気が抜けないがバイクには楽しい。ただしカーブが不規則なのでムリはできない。また路面状態が悪いところもあるのでスピードの出しすぎには注意だ。まあスーパーカブだと3速4速を駆使してアクセルを開けて走れるのでストレスフリーだ。
途中、いくつかの集落を通り過ぎて棡原から10数分、目的の西原地区に到着した。500人ほどの住民が暮らす比較的大きな集落は、都心から約90分の東京に最も近い秘境が謳い文句の素朴な山里だ。昼にはまだ早い時間だったので、集落を探索してみた。県道を外れて都県境の尾根へと続く道をたどる。山の斜面を上ると視界が開け、斜面いっぱいに民家や畑が点在していた。南に向いた斜面は明るく開放的だ。住民が何人か農作業に励んでいた。さらに上ったところには旅館もある。ハイカーが利用するのかもしれない。
県道に下っていくと、右手に幸福の鐘があった。観光地にあるような恋人の鐘のようなものかなと近づいてみると、手作り感満載の鐘で、素朴というかなんというか、観光とは無縁だなと思った。県道に出たところには一宮神社がある。1343年に創立されたといわれる神社で、一宮の社叢(しゃそう)という樹齢500年の杉が県天然記念物に指定されている。






西原地区の中心に観光施設である『羽置の里びりゅう館』はある。近くには廃校になった西原中学校、西原小学校があり、少子高齢化を目の当たりにする。びりゅう館には何度も来ているが、今回のゆるカブツーリングでも名物のそばを味わうのを楽しみに走ってきたようなものだ。建物の前にはバイク置き場もある。館内には廃校から運搬されたグランドピアノが置かれていて、調律もされているそうなので、ストリートピアノ演奏をするユーチューバーの皆さんにはぜひ来ていただきたいものである。
農産物や手作りの特産品も土産に最適。そして直売所のすぐ横にそば処びりゅう館はある。提供されるそばは、そばの実を皮ごと水車で挽いた挽きぐるみのそば粉を使った手打ちそば。いわゆる田舎そばは風味が豊かで実にうまい。スタンダードなもりそばを注文したのだが、ゆず味噌を載せた手作りこんにゃくが付いているのがうれしい。こうして無事に目的を達成したところで、再び県道18号線のツーリングを楽しんだのである。
走行距離:115km 給油量:1.74L 食事:1150円 ということで、かかった費用は1400円ほどだった。





