先生(右):損 保太郎

某損保サービスセンターに勤務。近年の報道を受けて、気を引き締めて仕事に向き合おうと決意!

生徒(左):モン太

保険についてはよくわかっていない18歳。巷のウワサには興味津々!

クルマの傷は事故を語る! 「整合性検証」って何?

モン太 最近、某車屋さんの不正請求事件のニュースで盛り上がっているけど、そんなに簡単にできちゃうモンか? ゴルフボールを靴下に入れて故意に傷をつけたりして、その分も修理費に上乗せしていたとか……。事故の傷とゴルフボールの傷ってぱっと見わからないモンか?
損 保太郎(以下 保太郎) ……その件を受けて本当に僕らも襟元を正して仕事にあたらなければと思っているよ。だけど、保険会社にはアジャスター※1という損傷を専門に見るプロがいるから、そう簡単に不正請求ができるものではないよ。ちなみに今回登場する「整合性」という言葉(保険用語)は「申告された事故状況と車両の損傷が一致しているか」という意味だよ。
質問についてだけど、ゴルフボールを靴下に入れてクルマのパネルを叩くと、損傷は擦過傷の無い凹み傷になる。これを既存の傷に重ねてつけられたとなると見破るのは相当難しい。実は車の損害調査は全件アジャスターがクルマを直接見に行っているわけではないんだ。立ち合いであれば不正を見破れる可能性は高くなるけど、多くの事案は修理工場と画像データのやり取りをすることで行っている。直接見に行けば、不正請求分の保険金を削減できるかもしれないけど、人件費も増えてしまうからね。ただし、だからといって不正請求が成功するわけではないよ。修理工場側の申告内容や過去の事故歴、提出された写真の違和感などから発覚するケースも多いし、保険金詐欺は立派な犯罪だから絶対に手を出してはいけないんだ。

傷の向き・高さ・塗料で分かる!? 保険会社の事故鑑定術

保太郎 そんな背景を受けて今回は整合性についてお話をするね。まず、事故の状況とクルマの損傷が合致することを僕たちは「整合性がある」と言っている。では整合性をどうやって検証するかというと、申告された事故の状況と車の損傷を照らし合わせて行う。どんな感じで確認をするのか? をレクチャーするね。まず上の写真を見てほしい。クルマの左側面なんだけど、この傷はどんな事故でついたと思う?
モン太 う~ん。左リヤタイヤの前付近が凹んでいるモンな。ブロック塀とかにぶつかっていればもっと、塗装がガリガリになりそうだから違いそうだモン。となると、交差点の出会頭事故とかで突っ込まれたモンか?
保太郎 考察は素晴らしいけど、答えは×。こういう時アジャスターはまず傷を分析していくんだ。傷の位置はクルマ両の左側面の中央よりやや後ろ側。衝突相手物と直接当たっている箇所には水平方向に近い擦過傷がついているね。擦過傷の最高位は80cmくらい。傷を上から見てみると車の出っ張っている部分が上下一様に押し込まれてへこんでいる。分かりにくいけと白と黒の付着塗料が確認できる。また傷を拡大した写真を見てみると黒い付着塗料が魚の鱗模様みたいになっているね。
モン太 どういうことだモンか?
保太郎 上下一様な押し込みは衝突対象物が強固な垂直構築物であることを示している。高さは80cm程度で、表面は塗装されている物と推定できる。また鱗模様が「つ」の字のように印象されているのは、傷が前から後ろに向かってつけられたことを示しているんだ。つまり、この傷は左折時に内輪差によってポールを巻き込んだ事故だということが分かる。ちなみに右の写真がこの事故の衝突対象物だよ。まるで「事故現場の鑑識」のようだね。
モン太 高さも塗色もピッタリ。こうやって整合性を確認するモンね。こりゃ悪さはできないモン。
保太郎 実際にやってしまった人と話すこともあるけど、軽い気持ちでやっている人が多い。けど、保険金詐欺は重罪だから絶対に加担してはダメだよ。

※1 アジャスターとは、事故車両の損傷確認や修理費用の妥当性を調査する専門職のこと。


※本記事では一般的な自動車保険・自賠責保険について解説しています。契約内容や各社の約款により、補償内容や対応が異なる場合があります。

※この記事は月刊モトチャンプ2023年10月号を基に加筆修正をしています

【モトチャンプ編集部】