1960年代、ホンダはカブ系の横型エンジンを搭載した「ベンリイSS50」などのスポーツモデルをリリース。1970年初め、今度は50ccスポーツの座を、縦型エンジン搭載車に移行。2ストの「MB50」が登場するまでの約10年間、頑丈な縦型4ストエンジンを搭載したCB50は、ホンダのゼロハンスポーツモデルとして若者を中心に人気を呼んだ。 REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
超スポーティ! 1万500rpmの超高回転型ショートストロークエンジンを搭載
1971年(昭和46年)~1972年(昭和47年) ベンリイCB50

1971年(昭和46年)に登場したCB50の初期型モデル「ベンリイCB50」。前後ホイールは17インチを採用。

1971年当時、4ストエンジン搭載のスポーツモデルは「ベンリイCB50」だけだった。
4ストながら、ライバルの2スト勢と肩を並べる6.0馬力を出力

「ベンリイCB50」の空冷4ストロークの縦型エンジン。最高出力は6.0PS/10,500rpm、最大トルクは0.41kg-m/8,500rpm。
ホンダの50ccスポーツモデルは、1960年(昭和35年)に誕生した「スポーツカブC110」を皮切りに進化を重ね、その後、名称を「ベンリイ」に変更。1967年(昭和42年)に発売された、伝説のゼロハン「ベンリイSS50」は、横型エンジン最高峰の6.0ps/1万1000rpmを発揮。最高速度は95km/hをマークした(カタログ値)。 その後継モデルとして、1971年(昭和46年)に登場したのが、「ベンリイCB50」。50ccクラスとして初めて「CB」の称号が与えられたこのモデルは、新開発のダイヤモンドフレームに、新設計の縦型(※注1)OHCエンジンを搭載。 ボア×ストロークは、カブ系横型の39mm×41.4mmから、42mm×35.6mmのショートストローク型となり、スポーツモデルならではの“高回転志向”とした。 当時、50ccスポーツモデルのライバルは、低コスト・軽量・そしてパワーを出しやすい2ストロークエンジンが主流。しかしCBの称号を得たCB50は、“ホンダのお家芸”とも言える、4ストロークエンジンで勝負。ライバルと肩を並べる6.0馬力を出力した。 ※注1:縦型エンジンとは、腰上部(シリンダーヘッドとシリンダー)を、ガソリンタンクの方向にレイアウトした小排気量エンジンの俗称。腰上部をフロントタイヤの方向にレイアウトした「スーパーカブ」や「モンキー」などのエンジンは、『横型エンジン』と呼ばれる。
50cc初の“CB”は、レーシングマシンのようなスポーティな乗り味

42mm×35.6mmのショートストローク型エンジンは、スポーティな超高回転志向。
「ベンリイCB50」のエンジンフィールは、1997年(平成9年)に登場したDOHCエンジン搭載の「ドリーム50」に近いもので、低回転域では、やや扱いにくさを感じる一方、1万回転付近の高回転域は、突き抜けるような心地よさ。当時としては、まるでレーシングエンジンを操っているかのような、既存のモデルにはなかった過激なフィーリングを味わえたのがポイントだった(※注2)。 この縦型エンジンは、、2001年(平成13年)以降に発売された縦型エンジン搭載モデル「エイプ」や「エイプ100」にも継承。ただし「エイプ」や「エイプ100」は、超高回転志向から、街乗りでも扱いやすい低中回転志向に仕様変更された。 ※注2:発売当時のカタログには、社会背景を憂慮したのか(当時は暴走族の前身であるカミナリ族が社会問題化)、「市街地での走行に適したフラットなエンジン特性をそなえ、中低速でのなめらかな扱い易さが強調されています」と、“かなり抑えた感じ”で紹介されていた。
「ヤマハ FX50」など、ライバルの2スト勢に対抗した、“頑丈な”ホンダの縦型エンジン

1972年(昭和47年)に発売されたベンリイCB50のライバル車「ヤマハ FX50」。空冷2ストローク単気筒49ccエンジン搭載。最高出力は6.3PS/9500rpm、最大トルクは0.5kg-m/8500rpm。当時の発売価格は8万円。
「ベンリイCB50」が発売された当時、チューナーやカスタムユーザーからは、カブ系の横型エンジンには2つの“弱点”があると指摘されていた。それは、 ・クランクシャフトが細いこと(※注3) ・クランクケースがモロいこと これらはミニバイクレースの人気が高まった1980年代には周知のこととなり、実際にクランクシャフトの断裂やクランクケースの破損を、“極限までチューニングを施した”4ストミニバイクレース経験者の多くが体験した。 これに対し、CB系の縦型エンジンは、「頑丈なエンジン」「壊れないエンジン」として、4ストミニバイクレーサーからも好評。その強さは、生い立ちを見ると納得できる。 CB50に搭載の縦型エンジンは、1970年(昭和45年)に発売された「CB90」がルーツ。安価に設定しなければならなかったカブ系の横型エンジンに対し、CB90は当時、ヤマハやスズキが発売した2スト90ccスポーツモデルに対抗した、生まれながらにスポーツモデルの素質を与えられた、正真正銘のサラブレッドだったわけだ。 ※注3:「クランクシャフトが細い」に加え、横型エンジンの各パーツは、頑丈な縦型エンジンの各パーツに比べて軽量で、フリクションも小さいため、縦型エンジンよりもパワーアップしやすいと指摘するユーザーも多い。
時代はパワー重視に突入。ホンダの50ccスポーツは、やがて4ストから2ストに移行……

ホンダ初の2サイクル50ccロードスポーツモデル「MB50」。最高出力は7.0PS/9,000rpm、最大トルクは0.56kg-m/8,000rpm。
CB系の縦型エンジンは、後にエンデューロレーサーの「XR80」、クロスカントリーモデルの「XE50」や「XE75」、レジャーモデルの「R&P」にまで拡大した。 ホンダは“2スト時代”を見据え、1979年(昭和54年)に2ストロークモデル「MB50」をリリース。「CB50」と「MB50」の2台は、「ホンダのスポーツ50」として共存していたが……。 1981年(昭和56年)、ヤマハから水冷2ストローク 7.2馬力エンジン搭載の「RZ50」が衝撃的にデビュー。50ccスポーツは、パワフルな2ストローク車が完全に主導権を奪い、4ストロークの「CB50」は惜しまれつつ生産終了となった。

1973年(昭和48年)~1975年(昭和50年)に生産された「ベンリイCB50/CB50JX」。月刊モト・チャンプより。

初代モデルは“ゼロハン初のタコメーター付き”で話題に。スピードメーターは80km/h表示だが、リミッターが搭載されていなかった当時、下り坂ではノーマルでも90km/hは出たという。

写真はワイヤーによる機械式ディスクブレーキ。1980年型以降の油圧式は、車体左側ではなく、車体右側に設置変更されている。
「ベンリイCB50」の主な特徴 ※当時のメーカー資料より抜粋(原文のまま)


安全性を配慮して
・ヘルメットホルダー……CB500に次いで採用。クルマから離れるときも、ヘルメットを持ち歩くわずらわしさがなく、ヘルメット着用の積極的な便宜がはかられています。 ・スピードメーター……30Km/h以上は赤色表示にし、ユーザーにスピード・オーバーの注意をうながします。 ・安全運転ラベル……ヘルメット着用の標語などをタンクに貼付しました。
扱い易く、且つスポーツライクに
・フレーム……50ccスーパースポーツのために設計されたエンジンに合わせて、ダイヤモンド型のパイプフレームを新設計しました。軽量で剛性も高く、軽快なスポーツ走行に適します。 ・タコメーター……スポーツ走行に不可欠な装備を50ccクラスに初めて採用しました。 ・マフラー……スポーツライクのイメージを強調したメガホンタイプ。これもこのクラスで初めてです。 ・ハンドル……セミアップタイプで誰れにでもなじめる扱い易さです。シートとマッチして優れたドライビング・ポジションが得られます。 ・始動性……ギアが入っていても、すぐエンジンがかけられるプライマリーキック機構を採用して、始動が容易です。 ・ボデーカラー……明るい3色(ゴールド、オレンジ、ホワイト)を用意しました。
新設計のコンパクトな4サイクル・OHC直立エンジン
・エンジン/レイアウト……カムチェーン、オイルポンプ、プライマリーキックなどは、上級車種なみの信頼の高い構造を採用しました。 ・エンジン特性……市街地での走行に適したフラットなエンジン特性をそなえ、中低速でのなめらかな扱い易さが強調されています。 ・整備性……CB750と同じ分離型のカムシャフトホルダーを採用することにより、整備性が向上しました。 ・ミッション……5段式。シフトフォークシャフトを別軸にして、ソフトなチェンジフィーリングを出しました。 さらに、お客様の安全を配慮して、CB50の発売にあたり、この車種の購入者に対して、ホン ダオリジナルのヘルメット贈呈キャンペーン(6月1日より8月31日まで)を実施いたします。 このようにお客様のすべてが車を安全、快適に乗っていただくために新考案のヘルメットホル ダーとあいまって、ヘルメット着用の運動を積極的に展開いたします。
ホンダベンリイCB50 諸元表
全長:1.780mm 全巾:670mm 全高:980mm 軸距:1.180mm 最低地上高:160mm 車両重量:74kg 乗車定員(人):1 舗装平坦路燃費率(km/L):85(30km/h) 登坂能力:0.24m 最小回転半径:1.9m 制動停止距離(m):7.0(初速35km/h) 原動機:空冷4サイクル シリンダー数と配列:前傾12°1.横置 弁配置:頭上カム軸式 燃焼室形状:半球形 総排気量:49cc 内径×行程:42.0mm×35.6mm 圧縮比:9.5 圧縮圧力(kg/cm2-rpm):12.0-1,000 最高出力(PS/rpm):6.0/10,500 最大トルク(kg-m/rpm):0.41/8,500 始動方式:キック式 点火方式:マグネット点火 気化器:PW18 数:1個 空気清浄器型式:ウレタンフォーム式 燃量タンク容量:7L 潤滑方式:圧送式・飛沫式 潤滑油容量:0.9L 蓄電池:型式と数6N2-2A・1 電圧容量:6V-2AH 減速比:4.437 クラッチ型式:湿式多板・コイルスプリング 変速機:常時噛合式 操作方法:左足動リターン式 変速比1速3.083 変速比2速1.882 変速比3速1.400 変速比4速1.130 変速比5速0.960 変速機から後車軸までの機構:チェーン 同上減速比:3.153 かじ取角度°:左右共43° キャスター:63° トレール:75mm タイヤサイズ: 前 2.50-17-4PR 後 2.50-17-4PR ブレーキの種類型式: 前 ワイヤー式リーディング・トレーディング 後 ロッド式リーディング・トレーディング 操作方式: 前右手動式 後右足動式 懸架方式:懸架方式 前テレスコピック式 後スイングアーム式 フレーム形式:ダイヤモンド式 灯火: 前照灯 15/15W 尾灯 W(色)3(赤) 兼用灯火番号灯(3W白) 制動灯W(色)10(赤) 方向指示器: 前8W(橙) 後8W(橙) 計器等警音器形式:平型電気式 速度計形式:過流式 発売日:昭和46年6月1日 価格:7万5,000円(全国標準現金価格) 生産計画:月産4,000台(輸出を含む)
ホンダ CB50の歴代モデルをチェック
1973年(昭和48年)~1975年(昭和50年) ベンリイCB50/CB50JX
タンクの形状やカラーリングを変更し、テールカウルを装備。また、「ベンリイCB90JX-DISK」に採用の、フロントメカニカルディスクブレーキ(メカニカル=機械式)を新採用して、高速域での安全性をアップした「ベンリイCB50JX」も登場。当時の販売価格は、フロントドラムブレーキの「ベンリイCB50」が8万円、フロントディスクブレーキの「ベンリイCB50JX」が8万6000円。

ベンリイCB50

ベンリイCB50

ベンリイCB50
1976年(昭和51年)~1977年(昭和52年) ベンリイCB50JX
ピストン、カムシャフト、バルブスプリングなどを見直し、高回転までスムーズに回る特性に変更した「ベンリイCB50JX」が登場。パワー&トルクもアップされている。 ・パワー:6.0PS/10,500rpm→6.3PS/10,500rpm ・トルク:0.41kg-m/8,500rpm→0.43kg-m/9,500rpm フロントフォークはポテンシャルの高いΦ27成立型。ストッパー付きシートに加え、ガソリンタンクはロング&スリムな形状の大容量8.5L入りを装備。メガフォンタイプのマフラーは、3段特殊形状の内径を採用。脈動効果の高い内部構造とし、パワフルな走りと静粛性を実現している。 なお、1978年(昭和53年)~1979年(昭和54年)のモデルより、名称が「ベンリイCB50JX」から「CB50JX-Ⅰ」に変更された(価格以外に変更なし)。

ベンリイCB50JX(ホワイト/1976年モデル)

ベンリイCB50JX(ブラック/1977年モデル)
1980年(昭和55年) CB50S
CB50JXを改良した「CB50S」が登場。シート形状を変更。また、利便性向上を狙い、リアキャリアを標準装備しているのがポイント。6.3馬力の縦型エンジンに大きな変更なし。縦長の8.5Lタンク、Φ27正立フォーク、17インチスポークホイールも健在だ。 フロントディスクブレーキはメカニカル=機械式(ワイヤー式)から、当時の最先端である油圧式に変更(油圧式ディスクブレーキは車体左側ではなく、車体右側に設置変更)。ウインカーは角形になり、ヘッドライトの光量もアップされた。

CB50S
1981年(昭和56年) CB50S
カラーリングのみ変更。CB50Sは「小排気量4ストスポーツ」、MB-50は「小排気量2ストスポーツ」として位置付けられていたが、このモデルを最後にCB50Sは生産終了となった。

CB50S(ブラック)

CB50S(レッド)
