米国で自動車ローンの返済に行き詰まり、車両を差し押さえられるケースが急増している。背景にあるのは、この数年で急激に進んだ新車価格の高騰だ。

日産 X-Trail

米国の自動車ローン残高は約1.7兆ドル(約272兆円)に達し、車両の差し押さえ件数は2007~2009年の金融危機(グレート・リセッション)以来の高水準にあると報じられている。

レクサス

なかでも注目されるのが毎月の返済額だ。現在、新車ローン利用者のおよそ5人にひとりが、月額1000ドル(約16万円)を超えるローンを返済しているという。

背景には、新車価格そのものの上昇がある。米国では平均取引価格が約5万ドル(約800万円)に達する水準となり、2019年以降はローンの月額返済額も大幅に増加した。金融機関は96カ月(8年)に及ぶ長期ローンも用意しており、「月々の支払い」を抑えることで高額車を購入しやすくしている。

しかし、返済期間が長くなれば総支払額は増え、利息負担も大きくなる。さらに近年は、自動車保険料や修理費、部品価格も上昇傾向にあり、ガソリン価格も依然として不安定だ。当初は返済可能だった家庭でも、生活コスト全体の上昇によって家計が圧迫され、ローン返済が困難になるケースが増えている。

とくに影響が大きいのは、信用力の低いサブプライム層である。高金利ローンを利用していたユーザーを中心に延滞率が上昇し、車両の差し押さえが相次いでいる。

日本でも「月々いくらで買えるか」が購入基準に

この状況は、日本にとっても決して無関係ではない。近年は電動化や先進運転支援システム(ADAS)の標準装備が進み、車両価格は着実に上昇している。500万円を超えるSUVやミニバンは珍しくなくなり、アルファードやランドクルーザー、レクサス各モデル、輸入EVなどでは700万~1000万円を超えるモデルも増えている。

それにともない、残価設定ローンや長期ローンを利用して購入するケースも一般化した。最近では5年だけでなく7年、あるいはそれ以上の返済期間を設定する商品も珍しくなく、「車両価格」よりも「毎月いくら支払うか」を重視する販売スタイルが定着しつつある。

もちろん、日本では米国のような差し押さえ問題が社会問題化しているわけではない。しかし、物価上昇や光熱費の高騰、実質賃金の伸び悩みなどを考えると、家計を取り巻く環境は以前より厳しくなっていることも事実だ。

クルマ選びは「支払総額」で考える時代へ

自動車は生活を豊かにする一方で、住宅に次ぐ大きな支出でもある。近年は性能や安全性、環境性能の進化によって車両価格が上昇しているが、その価値と引き換えに購入後の負担も確実に大きくなっている。

米国で広がる自動車ローン問題は、「欲しいクルマを買えるか」ではなく、「数年後まで無理なく維持できるか」を考える重要性を示している。金利や残価、保険料、税金、メンテナンス費用まで含めたトータルコストを見据えたクルマ選びが、これからの時代にはますます重要になるだろう。