スクデット(盾形グリル)はより存在感のある立体的なボーダーライン模様に

イタリアンアルプスの峠の名に由来するアルファロメオの「トナーレ(Tonale)」がフロントデザインの刷新などを図り、2026年3月に登場した。現行モデルの発売は2023年1月だったので、3年を経て進化を遂げたことになる。

2023年2月に日本上陸後、2026年3月に大掛かりな変更を受けたアルファロメオ・トナーレ。試乗車は2グレードあるうちの上級版である「トナーレ イブリダ ヴェローチェ」で、価格は665万円。ちなみに「イブリダ」はマイルドハイブリッドモデルの呼称。

変化はすぐわかる。アルファロメオ車の特徴であるスクデット(盾形グリル)はハニカム形状から水平ラインを強調したデザインに変わっており、両サイドに「アゾレ(Asole:伊語でボタン穴の意)」と呼ぶ左右2個ずつの小さな開口部が加わった。さらに、バンパー下部はよりワイドな開口(貫通しているのは中央部のみ)を持つデザインに変わっており、目つきの鋭さ(は変わっていないが)と合わせてアグレッシブ感が増している。

フロントデザインは、2023年に世界33台限定で発売した「33ストラダーレ」にも通じる造形のスクデット(盾形グリル)を採用。その左右に2個ずつ配された小さな開口部は「アゾレ」と呼ばれ、エアインテークとして機能する。1930年代のグランプリカー「P3(ティーポB)」にも通じる意匠だ。

フロントデザインの変更にともない、全長は10mm短縮され4520mmに。「取り回しやすさと走行時の安定感を両立」する目的でトレッドを左右4mmずつ拡大したとのことだが、これはホイールインセットの変更で実現している。上級グレードの「Veloce(ヴェローチェ)」は三つ葉をモチーフにしたデザインの20インチホイールを採用。大きな開口部からは赤くペイントされたブレーキキャリパーが覗く。これが、スポーティな印象を与えるアクセントになっている。

ホイールも33ストラダーレをモチーフとしている。

細かな点では、リヤの「TONALE」のレタリングバッジがシルバーからダークカラーに変更された。ヴェローチェグレードに施されるフロントフェンダーのバッジもダークカラーで、統一感を意識した配慮だ。

アルファロメオ・トナーレのスリーサイズは全長4520mm×全幅1835mm×全高1600mm。
リヤの「Tonale」バッジは、シルバーからダークカラーに変更。
フロントフェンダーの「VELOCE」バッジ。

インテリアではシフトセレクターの変更が目を引く。初期型はレバーを前後に動かしてP/R/N/Dを切り換えるオーソドックスなタイプだったが、新型(実質的にはマイナーチェンジ版)はロータリースイッチ式になっている。センターコンソールの奥にはa(Advanced Efficiencyの「a」で効率重視の設定。いわゆるエコモード)、n(ナチュラル)、d(ダイナミック)のドライブモードを切り換えるロータリースイッチがあり、インターフェースを合わせた格好。クリック感はどちらも軽めだ。

いかにもアルファらしい、ドライバー中心に仕立てられたコックピット。センターのタッチディスプレイは10.25インチ、メーターは12.3インチの液晶タイプ。
ロータリースイッチ式のシフトセレクター。

パワートレインの構成に変更はない。初期型発売当時に新開発ユニットとして選択された1.5L直列4気筒ターボのガソリンエンジンに7速DCTの組み合わせ。エンジンの最高出力は117kW/5750rpm、最大トルクは240Nm/1700rpmである。DCTは最高出力15kW、最大トルク55Nmを発生する48V駆動のモーターを内蔵している。さらに、エンジン始動と回生ブレーキ機能を担うベルト・スターター・ジェネレーターを組み合わせている。つまり、トナーレは48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載していることになる。

1.5Lガソリンターボ(160PS/240Nm)にモーター(20PS/55Nm)を組み合わせたパワートレインを搭載。スペックに変更はないが、マイナーチェンジモデル前のモデルと比べると、0-100km/h加速は8.8秒から8.5秒に短縮された。

最高出力や最大トルクのスペックに変更はないが、制御を見直すことで加速性能は向上し、0-100km/hの加速は従来の8.8秒から8.5秒に短縮されているという。また、「エンジンとモーターの制御バランスも最適化したほか、可変バルブタイミングの調整や、高いギアへのシフトタイミングを早める制御を採用し、加速をより滑らかにした」という。

発進は基本的にモーターのみで行なうEV走行だ。あまり強い加速を求めない発進では20km/h程度までモーターの動力のみで走行。そこからエンジンに加速の仕事を引き渡す。40km/hや50km/hの巡航スピードまで緩加速するシーンでは制御が上手にできており、エンジン始動時のショックはほとんど感じないし、走行音にまぎれるのでエンジン音の発生を意識させられることはない。

発進時にアクセルペダルを強く踏み込んだ際は、一瞬のEV走行のあと、エンジンが始動してドライバーの強い加速要求に応えようとする。その際、モーターの出力が控え目なのと、エンジンが始動してトルクを発生させるのに間があることでラグが生じるし、ショックもある。

アクセルをオフにするとエンジンを停止しコースティング状態に移行するのが、トナーレが搭載するマイルドハイブリッドシステムの特徴だ。隙あらばコースティングに移行する制御はaモードを選択するとさらに強くなり、dモードを選択するとコースティングには移行せずエンジン回転高めの設定となって、アクセルペダルの踏み増しに対するレスポンスが良くなる。

センターコンソールに備わるALFA DNAドライブモードシステム。

一般道でも高速道路でも流れがとどこおった状況で緩い加速と減速を繰り返すシーンだと、アクセルオフでエンジン停止、加速に転じてモーターが力不足になるとエンジン始動、ちょっとスピードに乗ったと思ったら先行車の減速に対応してアクセルを戻し、さらにブレーキ──。というような状況だと、エンジン再始動時に引き込み感(前のめり感)が生じることがあるし、DCTの変速によるパワートレーンの揺動が車体に伝わって前後に揺すられ、ギクシャクした動きが顔を出したりもする。微低速〜低速域で緩く加速したり、減速したりするシーンは相変わらず苦手科目のようだ。

筆者はあいにく全開加速性能の向上を指摘できるほど感度の高いセンサーを持ち合わせていないので、トナーレは「速くなった」とは言い切れない。しかし、1.5Lターボエンジンと117kW(160ps)の最高出力、240Nmの最大トルク、1600kgの車両重量から期待するパフォーマンスをトナーレは提供してくれる、とは言い切れる。すなわち、ストレスを感じるほど物足りなくはないし、思わず息を飲むような猛烈な加速を披露するでもない。アグレッシブな見た目から期待するパフォーマンスは提供してくれる、との印象だ。

良好な燃費は多くの人にとって期待以上ではないだろうか。今回の試乗時は市街地と高速道路を合わせて380kmを走行し、平均燃費は16.1km/Lだった。試乗中に確認した最高値は17.1km/Lである。高速巡航時は平均燃費がグングン伸びる。WLTCモード燃費は16.6km/L、高速道路モードでは17.4km/Lだ。

ステアリングギヤ比はクイックで、かつ電動パワーステアリングのアシストが強めなこともあり、ほんのちょっと舵を入れただけでスパッと向きが変わる印象。前輪の向きを変えたからといってクルマが言うことを聞いてくれるとは限らないが、トナーレの場合は嫌がる素振りを見せず、気持ち良くラインをトレースしてくれる。その際、ロールは抑えめ。上屋は旋回外側に過度に傾かず、フラットな姿勢を保ったままレールの上を移動するような感覚だ。

フロントサスペンションはマクファーソンストラット式。
リヤサスペンションはストラット式。ロワアームは2本のリンクで構成するパラレルリンクタイプだ。

前述したようにdモードを選択するとエンジン回転が高めの制御になって、アクセルペダルの踏み込みに対して背中を押し返してくれるエンジンの反応が鋭くなる。同時に減衰力可変ダンパーの設定がハード側になり、路面のザラザラや継ぎ目の入力がダイレクトに感じられるようになる。

「そこまでハードでなくていいんだけど」という人のために、パワートレインの制御はダイナミックとしながら、ダンパーはノーマル(ソフト)にできるメニューが用意されている。dモード選択時、ドライブモードスイッチの中央にあるダンパーのボタンを押すと、ダンパーの制御はソフトになる。攻めたいわけではなく、長い下り坂でエンジンブレーキを効かせながら走りたいときにも便利な選択肢だ。

フロントシートは運転席だけでなく助手席にもシートヒーターだけでなくシートベンチレーションが付いており(ヴェローチェの場合)、外気温度計が35℃を示す日中のドライブでは、サービスエリアで休憩後に乗り込んだ際に背中がスッと冷え込むありがたみを感じた。10.25インチのタッチスクリーンはスマートフォン接続に対応(有線&無線)。ワイヤレス充電機能も付いている。

ヴェローチェはナチュラルレザーシートが標準で備わる。
レザーシートのカラーは写真のブラックのほか、レッドも選べる。

ステランティスの車両にしては珍しく、トナーレには信号待ちなどでブレーキペダルから足を離しておけるオートブレーキホールドが装備されているのもポイントだ(物理スイッチはなく、タッチディスプレイで設定)。アダプティブクルーズコントロールはステアリングスイッチでの操作がイージーなら、制御も上手で、高速道路利用時は積極的に使いたくなる。360度カメラの映像をセンターコンソールのスイッチ操作で瞬時に呼び出せるのは、使いたいときは大抵急を要しているので便利だ。

全長4.5mクラスのSUVであることを考えれば後席の居住性は充分で(広々とはしていないが、窮屈でもない)、エアコンの吹き出し口もあればUSBポート(Aタイプ、Cタイプ各1口)もあり、装備面で不足はない。ラゲッジスペースの容量も見たところ充分だ。

184cmのレポーターが後席に座るとご覧のとおり。膝前にも空間が確保されている。

シーンによってはパワートレインの振る舞いにクセが見られるけれども、それはそれとしてアルファロメオ・トナーレ、最新のクルマにふさわしい機能、装備はまんべんなく備えているし、装備や機能が作動した際の動きは洗練されている。積極的に走りを楽しみたいときのクルマとの対話は楽しく、スマートにも情熱的にも付き合える一台という印象だ。

グレードアルファロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF)
全長4520mm
全幅1835mm
全高1600mm
乗員人数(名)5
ホイールベース2635mm
トレッド(前/後)1590mm/1590mm
最小回転半径5.8m
車両重量1600kg
パワーユニット1.5L直列4気筒DOHCターボ+モーター
エンジン最高出力117kW(160PS)/5750rpm
エンジン最大トルク240Nm/1700rpm
燃料(タンク容量)プレミアムガソリン(55L)
モーター最高出力15kW(20PS)/6000rpm
モーター最大トルク55Nm/2000rpm
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー総電圧43.9V
トランスミッション電子制御式7速DCT
燃費(WLTCモード)16.6km/L
サスペンション前:マクファーソンストラット式 後:マクファーソンストラット式
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク 後:ソリッドディスク
タイヤサイズ235/40R20
価格653万円