Zチューンへの憧れを4ドアで具現化!

NAのGT-Vベースで魔改造

人生初の愛車がGC8型インプレッサのセダンだったという内山さん。セダンならではのスタイリングはもちろん、人も荷物も載せられる便利さを一度味わってしまうと、次の愛車も自然と4ドアが候補になったという。

そんな内山さんにとってR34は、いつか乗ってみたい憧れの存在だった。ただし、選んだのは定番の2ドアではない。「あえてセダンをベースにオリジナルのZチューンスタイルを作って、それでドリフトできたら面白そう!」と考え、当時はまだリーズナブルだったNAのGT-Vを購入。そこからRB25DETをスワップし、理想の1台を自らの手で作り始めた。

しかも、溶接から塗装まで、作業のほとんどは自宅の駐車場で行なわれている。リフトを備えたガレージがあるわけでもなく、決して恵まれた作業環境ではない。それでも、作業するたびに集まってくれる仲間と、カスタムを理解してくれる奥さんの協力を得ながら、少しずつ完成度を高めてきた。

エクステリアは、Zチューンのイメージを4ドアへ落とし込むことをテーマに構築。フロントバンパーはフリーダムデザイン製で、メーカー不明ながらZチューン風のダクト形状を持つボンネットを組み合わせる。オオクボファクトリー製フロントフェンダーには、さらにアーチ上げと15mmのワイド加工を追加。サイドスカートも同社製を採用する。

リヤには、一部で“ロシアフェンダー”とも呼ばれるネクサオートチューニング製のブリスターフェンダーを装着。ボディのプレスラインへ綺麗につながるようスムージングを施し、同社製リヤバンパーと合わせて迫力あるワイドフォルムを完成させた。

ボディカラーは、マツダCXシリーズに採用されるチタニウムフラッシュマイカ。「エンジンルームを白、内装を白黒でまとめたので、外装は逆に落ち着いた色が良かった」という狙いで選択されたものだ。ルーフにはオリジンラボ製ウイングを装着し、テールランプには自作のエングレービング加工まで施す。これは奥さんがペンで描いた下絵をもとに、夫婦でリューターを使って彫り込んだ力作だ。

そのローフォルムを決定付けるホイールはクレンツェ・バズレイア。フロント10.0Jマイナス20、リヤ12.0Jマイナス32という強烈な深リムサイズの18インチを履きこなす。

当然、ここまでのスタイルを成立させる足回りも一筋縄ではいかない。車高調は326パワーのチャクリキダンパーで、スプリングレートはフロント32kg/mm、リヤ20kg/mm。低い車高を維持しながら、ドリフトや街乗りでもある程度足を動かしつつ、沈み込みすぎない特性を狙ったセッティングだ。

さらに、メンバーを20mm上げる大加工を敢行。フロントにはスキッドレーシング製アッパーアームを投入し、サードリンクの角度を寝かせるとともに、ロワアームを25mm延長。イケヤフォーミュラ製タイロッドも組み合わせる。リヤもスキッドレーシング製アッパーアーム、テンションロッド、トーコントロールアームを使い、理想の車高とキャンバーを作り上げた。

そして、このER34を単なる“置き系”で終わらせていない最大のポイントがパワートレインだ。

元々搭載されていたNAエンジンを降ろし、2ドアのドナー車からRB25DET NEO6、5速MT、プロペラシャフトをまとめて移植。エンジンはオーバーホールを兼ねてポンカム・タイプBや1.5mmヘッドガスケットを組み込み、ポート研磨まで内山さん自身が行なった。

過給機には台湾MGD製ビッグターボを選択し、6BOOST製エキゾーストマニホールドでマウント。燃料系にはサード製550ccインジェクターとGT-R純正燃料ポンプを投入する。インタークーラーもGT-R純正を流用し、そこへつながるステンレス製パイピングは自ら溶接して製作した。

吸気側にはコクピット館林オリジナルのサージタンクを装着し、ボッシュ製電子スロットルを組み合わせる。制御はLINK G4Xで、エアコン制御まで含めたセッティングを和歌山県のネオスタイルに依頼。その結果、エアコンとパワステを残した快適なストリート仕様でありながら、最高出力480psを実現している。

エンジンルームも、機能だけでなく“魅せる”ことを徹底。ただし、その手法は何でも露出させる一般的なショーカーとは少し違う。

エンジンスワップと並行してサイクルフェンダーを自作し、片側4枚の鉄板を切り出して溶接。さらに、イシカワボディの180SXから着想を得て、タワーバーと一体化したエンジンルーム上部のカバーも製作した。ヒューズボックスやバッテリーも移設し、必要なものをあえて“隠す”ことで、クリーンなエンジンルームを作り上げているのだ。

そんな美しいエンジンルームの片隅、コアサポートには、なぜか電源マークが描かれたスイッチも備わる。押してみると、エンジンルームやインタークーラー周辺に仕込まれたLEDが点灯。WekFestやフェンダリストといったイベントで映えるための、遊び心たっぷりな演出だ。

インテリアにもDIYによる作り込みが及ぶ。各部の作業に合わせて一度取り外したダッシュボードは、全面をスエード調生地で覆い、センターコンソールを加工してiPadと追加メーターをマウント。ルーフライニングやドア内張りも同様に張り替えられている。

さらに、グリップロイヤル製ステアリングとニスモ製シフトノブをホワイトで統一。それに合わせてロールケージには大胆な牛柄ペイントを施し、レカロSR-3も白黒のトリムへ張り替えるなど、エンジンルームとはまた違った世界観を構築している。

これほど作り込まれた1台だけに、完成まで緻密な計画を立てて進めているのかと思いきや、実際は「これぞ!」というアイデアほどイベント直前に思い付くことが多いそうだ。そのたびに仲間を召集し、「今からやるの!?」と呆れられながらも、最終的にはみんなで作業を楽しんでいるという。

「完成した時の達成感より、作っている途中のワクワク感の方が好きなんですよね」と内山さん。19歳で手に入れたER34を、自宅の駐車場で仲間や奥さんとともに進化させ続けてきた。本人曰く、クルマ作りに本当に必要なのは溶接機やグラインダーではなく、「手伝ってくれる友達と理解ある奥さん」なのだという。

イベントで映えるローフォルムと、徹底的に作り込まれたディテール。その一方で、RB25DET改480psを武器にドリフトまで楽しめる走りの実力も備える。完成を急ぐのではなく、思い付いたアイデアを仲間と形にしていく過程そのものを楽しむ。そんなプライベーターならではの自由な発想が、この唯一無二の“4枚版Zチューン”を生み出したのである。

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