リヤアクスルに搭載された240kW/545Nmのモーターで後輪を駆動するRWD(後輪駆動)アーキテクチャ。総電力量79kWhのバッテリーを搭載し、DCC(アダプティブシャシーコントロール)やプログレッシブステアリングの出力カーブを統合制御する専用の「GTIモード」を備えているのが特徴——というのはすでに各所で報じられているとおり。

気になるのは制動および操舵フィーリングの演出である。「車両中央にバッテリーパックを載せていることによる理想的な50:50の前後重量配分」「0rpm直後から強大トルクを発生する理想的なモーター出力特性」「暴力的な加速フィーリング」とはBEVにおける常套句だが、このID.3のボディサイズで545Nmを発揮するモーターを後輪に載せたとすると、果たして回生フィールはどのように作り込まれているだろうか。

ご存じ、自動車のブレーキ前後配分は前輪優先で作られる。いっぽうでBEVやHEVのように「モーターで駆動」を特徴としているクルマは、その究極の目的として回生があり、可能な限りドライバーから制動を求められたときには摩擦ブレーキではなく回生ブレーキを使いたい。しかしID.3のプラットフォームは上述の通りRRパッケージ(リヤモーター・後輪駆動)であり、回生を働かせようとすると「後輪に強烈な制動」がかかってしまい、場合によってはオーバーステアを誘発しかねない。

参考に、同様にRRパッケージとしたHonda eでは、リヤ回生を極力取り漏らししないような摩擦ブレーキとの協調回生としている。スタビリティの自然さを創出するのにひたすら工数をかけ、自然なフィーリングを心がけたと設計者からうかがっている。

フォルクスワーゲンにとって「GTI」とは動質の作り込みにおいて絶対に失敗できないブランドであるはず。後輪の摩擦ブレーキ装置をドラムブレーキにしているほど「回生をとりにいく」設計としているID.3において「GTIのブレーキ文法」を間違いなく持っているVWとしてはどのように回生ブレーキのフィーリングを作り込んでいるのか。違和感を抱かれては「文法」から外れてしまうだろうし、しかしもしかすると「これこそが新世代のブレーキフィーリング」として刷新するつもりかもしれない。非常に気になるところである。

加えて、登坂路におけるステアフィールにも興味が湧く。「前後重量配分が理想的な50:50」とはいうものの、フロントオーバーハングに重量物がないRRのBEVパッケージングにおいて、登坂路では充分な接地荷重が確保できない可能性がある。GTI開発チームにとって、ステアフィールが空虚になるという現象は絶対に避けたいのが本音であろうし「ESPで曲げるから問題ない」という逃げは世界中のGTIファンにも通用しないはず。どのように解決を図っているのか興味が湧くもうひとつのポイントだ。

試乗が非常に楽しみなクルマである。

パッケージングMEB+プラットフォーム、後輪駆動
バッテリー総電力量79 kWh
モーター最高出力240 kW
モーター最大トルク545 Nm
0-100 km/h所要時間5.6秒
最高速度200 km/h
充電時最大受入出力(直流)183 kW
WLTP航続距離予測最大601km
長さ4,290 mm
1,809 mm
高さ1,560 mm
ホイールベース2,764 mm