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BMW・G310GS……69万5000円(パール・ホワイト・メタリックは+6000円)
独自の手法で、ライバル勢との差別化を図る
かつては日本車勢のほぼ独占状態だったアンダー400ccストリートバイク市場に、欧州勢が積極的な示すようになのはここ最近のこと。その先鞭を付けたのは、2011年から展開が始まったKTMの125/250/200/390単気筒シリーズで、2016年にはドゥカティがスクランブラーの400cc仕様となるシックスティーツー、2017年春にはBMWがG310Rを発売。さらに近年では、ハスクバーナやファンティックなども、このジャンルに参戦している。
そういった状況下でライバル勢との差別化を図るため、2017年秋からBMWが市場に投入したのが、G310Rの基本設計を転用したアドベンチャーツアラーのG310GSだ。
もっとも近年のアンダー400ccクラスを振り返れば、G310GSに通じる狙いの車両として、2013年にホンダ400X、2017年にスズキ・Vストローム250とカワサキ・ヴェルシスX250、そして2020/2021年にはKTM 390/250アドベンチャーが登場している。ただしそれらと比較した場合、G310GSの大きなアドバンテージになるのは車名だろう。何と言ってもGSは近年のBMWの看板モデルで、排気量や車格や価格が控えめでも、G310GSには兄貴分と同じ血が流れている、と思えるのだから。
GSシリーズならではのルックスと乗り味を構築
BMWでは昔から、エンジンとフレームの基本設計を多種多様なモデルで共有することが通例になっている。と言っても、ここ最近の同社のリッター/ミドルクラスでは、GSの基本設計を他機種に転用することが多いのだが、G310GSの場合は独創的な前方吸気・後方排気の水冷単気筒エンジンや鋼管トリレス式のフレームを、ロードスポーツのG310Rからほぼそのまま転用している。
ただし、GSシリーズならではのルックスと乗り味を構築するため、G310GSは外装やライポジ関連パーツを専用設計し、サスストロークを前:140/後:131mm→前後180mmに延長。3.00×17→2.50×19に変更されたフロントホイールやグラブバーとしての機能も備えるリアキャリアなども、G310GSのための専用設計だ。
兄貴分に通じる、信頼感絶大のハンドリング
G310GSに対する見解は乗り手の感性によって大きく異なるようで、GSシリーズの一員と認知する人がいる一方で、なんちゃってGSと言う人もいる。僕の考え方は基本的に前者だ。身体のどこにも無理がかからない、フレンドリーなライディングポジションや、クラストップと言いたくなる路面の凹凸の吸収性、信頼感抜群のハンドリングは、フラットツインのR1200GSやパラレルツインのF750/850GSに通じる要素なのだから。
中でも最も注目するべき要素は、ハンドリングだろう。バイクを操るうえで何が一番難しいかと言ったら、個人的には直進から旋回状態への移行、倒し込みの瞬間だと思うのだが、前輪の接地感が明確でフロントまわりの舵角の付き方が穏やかなG310GSは、兄貴分と同様に、その瞬間に時間が止まったかのような……は言い過ぎにしても、何があっても対応できそうな自信が持てる。そういった資質が備わっているからこそ、310を含めたGSシリーズは、ツーリングで遭遇する勝手を知らない道でも、コーナリングが楽しめるのだ。
ダメモト感覚で気軽に林道に入れる
では多くのライダーが気になるオフロード性能はどうかと言うと、それなりには走れるものの、ガンガン飛ばすのは難しいという印象。などと書くと残念に感じる人がいるかもしれないが、少なくとも日本のライバル勢よりは悪路が楽に走れそうだし、車格の小ささと車重の軽さを考えれば、見方によっては兄貴分より無理が利くと言えなくもない。
事実、オフロードが得意ではない僕の場合は、R1200GSやF750/850GSを駆って、1人で林道に入る際はかなりの勇気を必要とするけれど、G310GSならダメモト感覚で気軽に入って行けそうである。
エンジンに対する引っかかり
そんなG310GSに対して、僕がちょっと引っかかりを感じているのはエンジンだ。具体的には、極低回転域の粘りが乏しいことと、高回転域で威勢のいい振動が発生することが、いまひとつ腑に落ちないのである。もっとも他メーカーだったら、そのあたりは許容できることなのかもしれないが、GSシリーズの一員として考えると、この2つの問題はぜひとも解消して欲しいところ。電子制御式スロットルを採用した2021年型で、何らかの改善が行われていることを期待したい。