オイル漏れの悩み【ポルシェ911カレラ('95/Type993) 長期リポートVol.6】

オイル漏れの「空冷あるある」とは?【ポルシェ 911(タイプ993)ロングタームレポート第6回 ブッシュ換えてる場合じゃない!?】

“空冷乗り”にとって、エンジンと並んで気になる部分がサスまわりのブッシュ。ということで今回は、その劣化具合だけでもチェックしようとクレフを訪れたのだが・・・そこで待っていたのは、ブッシュじゃない部分の劣化。えぇッ、マヂ!? そんなところもやらないといけないの!? 空冷911を夢見る読者に贈る、悪夢の“空冷あるある”をご紹介します・・・。(※この記事はGENROQ 2018年9月号の「ロングターム・レポート」に加筆・修正したものです)

やっぱりあった“空冷911あるある”

993カレラを昨年末に購入し、実際に手元に来てから6ヵ月と少し。猫可愛がりし過ぎることなく、近所のお買い物から取材への移動まで乗り回しておりますが、トラブルもなく順調に走り続けております。

夏場のオイル漏れに関しては、旧友であるモータージャーナリストの島下君から「そんなに気にすることないと思うけどなぁ」と言われました。彼は993カレラRSクラブスポーツという箱入り娘以外にも930カレラを所有していた時期があり、クラシックカーラリーで夏場の渋滞に突入した際も「油温は上がるけれど、針がレッドゾーンまで突入するようなことはなかったよ」というのです。

確かにマイ993も、スーパーGTの富士ラウンド取材で、東名高速の渋滞を乗り切りました。油温計は真ん中からちょっと下(100度を切るくらい?)までしか上がらなかったので、なんら問題なし。クーラーもフロントガラスに霜が降りるほど効くし(オンかオフしかない感じ!)、熱くなっているのは自分だけ?

とはいえその“万が一”が大きな出費になるクルマですし、なるべくならドイツにはない過酷な環境では走らせたくない、というのが本音。ただ夏場用にアシ車を用意して多少なりとも出費が増えるくらいなら、それを993に注いでやりたいという気持ちもある・・・。

こうした実にオーナーらしい、矛盾した気持ちを抱えながら、ともかく今年の夏はテストイヤーとして、なるべく993一台で過ごそうと思います。

さて予想した以上にエンジンが快調となると、気になってくるのは足まわり。今回はその要となるブッシュ交換について、クレフモータースポーツにお話を伺ってきました・・・と言いたいところですが!! 結論から言うとマイ993をリフトアップした水島代表から、「ブッシュ交換の前にやることがあるんじゃない?」という診断が下りました。

「エンジンオイル、やっぱ漏れてない?」

診断その1は、やっぱりオイル漏れ! 縦割りクランクケースのつなぎ目から一切漏れていないのは優秀。ただしチェーンカバーのつなぎ目、ヘッドカバー周り、ヒートエクスチェンジャー周りには、オイルが滴っています。

それでも油量計は常に半分くらいを指しているし(※1)、走行終了後にレベルゲージをチェックしても、ねじり棒のところにきちんとオイルが来ている。ということでこれに関しては、アイコード鶴田御大風に言えば「この程度は漏れたウチに入らんワイ!」と、自分でも見て見ぬフリをしていました。(※1)オイル量は油量ゲージの半分より少し下くらいの方がいいという。ともかく油量計がフルになるほどだと入れすぎとのこと。これも今後詳しくレポートしたい。

ただエキゾーストのカバーとはいえヒートエクスチェンジャーにオイルが掛かっているのは、精神衛生上よろしくない。オイル漏れでエンジンが壊れるというよりは、火災につながる可能性だって、ないとは言えないですからね。

オイル漏れ以外にも要チェックポイントが・・・

そしてエキマニの横にある、鋳造ダクトが割れているのも残念な感じ。これは「ヒート・コントロールボックス」と呼ばれるパーツで、ヒートエクスチェンジャーの余分な熱を排出しています。そしてこれがどうやら、段差や駐車場の輪留めなどで破壊されてしまったみたいです。

構造的にはエキマニからの熱だまりを排出して足周りやエンジン周辺の熱害を防ぐ役目なので、塞がっていなければ大丈夫。だったら今のままでも、いいかなー。これ以上破損しないようにするには、車高を上げればいいのかな? と悩んでいると、クレフ水島さんは「アンダーカバーを付けた方がいいでしょ」と提案。でもそのカバーは5万円もするし、油温対策的には「なくてもいい」という意見もあるし・・・。ということで、これも見て見ぬフリ! タイラップでしっかり止めて、スルーしましたッ。

ブッシュ交換、まともにやると110万円!?

さてさてやっと本題のブッシュ交換ですが、これはウワサ通りの内容でした。詳細は次号で記載したいと思いますが、純正ブッシュは打ち換え効かずのASSY交換となり、その総額はざっと110万円+税(2018年当時の見積もりです)。

ひゃく、じゅうまんえん!!!!‏?

ちなみにこれ、パーツ代だけですからね。対してサードパーティのブッシュを使って打ち替えた場合、部品代が約14万円!! ここに打ち替え工賃、脱着工賃、アライメント調整が入ると約39万円+税と、断然お得に思えるからクルマは怖いです(笑)。

ブッシュ交換は「やると全然違う!」とか「オリジナルの良さを味わいたいなら絶対換えるべき」という声もあれば「やっても大してわからない」という意見もあります。ボク個人の意見としては、よほどボロくない限り後者。実際現状993に乗っていても、悪いと感じる部分はフロントのタイロッドエンドくらいなんですよね。

ただ993は23年選手だし、ハチロクなんかと違って基本となるボディが素晴らしいから、「交換すると乗り味がもっと素晴らしくなっちゃうんじゃないかしら・・・」と下心がムクムクしてきます。

ですから次号以降では、少なくとも交換が必要な箇所の割り出しと、やると効果的な部分の選定をしてみたいと思います。純正ASSYとサードパーティのミックスなんかも、賢いやり方かもしれないですね。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)

ホイールはポルシェ純正だった!!

番外:空冷ファン用ダクトブーツが砕け散る!!(GENROQ永田編集長号)

SPECIFICATIONS

Porsche911 Carrera(’95/Type993)
ボディサイズ:全長4245 全幅1735 全高1300mm
ホイールベース:2270mm
車両重量:1370kg
燃料タンク容量:73.5リットル
エンジンタイプ:M64/05
形式:空冷水平対向6気筒SOHC
総排気量:3600cc
圧縮比:11.3
最高出力:272ps/6100rpm
最大トルク:330Nm/5000rpm
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ホイール:前7J×16 後9J×16(※)
タイヤ:前205/55ZR16 後245/45ZR16(※)
※ レポート車は社外品の18インチが装着されていた。

【COOPERATION】
クレフモータースポーツ
TEL 045-938-6809
http://www.cref-ms.jp

993ロングタームレポート第4回

ポルシェ 911(タイプ993)ロングタームレポート:第4回「もう、ピッカピカやで!」

23年落ちのヤングタイマーとの愛を深めるために選んだ手段は、内外装のクリーニング。ポリッシャーでギュイーン! と磨いてピッカピカ♪ なんて思っていたら、いやいやこれがとっても奥が深いのであった。というわけで今回の「外装編」では、塗装から純正パーツの話まで、空冷予備軍には“耳ダンボ”なお話を交えながら徹底解説してみよう。(※この記事はGENROQ 2018年6月号の「ロングターム・レポート」を加筆・修正し再収録したものです)

993ロングタームレポート第3回

ポルシェ 911(タイプ993)ロングタームレポート:第3回「身も心も、ボクのものにッ!!」

かねてから993を手に入れたらやってみたかったこと。それは「内外装のリフレッシュ」だった。これまで中古車ばかりを乗り継いできた筆者だが、993とは新たな気持ちで向き合ってみたかったのだ。とはいえ相手はポルシェということで、弱気な筆者はちょっと緊張気味。さっそくその道のプロ、“クレフ”に相談してみたのであった。(※この記事はGENROQ 2018年5月号の「ロングターム・レポート」に加筆・修正したものです)

993ロングタームレポート第2回

ポルシェ 911(タイプ993)ロングタームレポート:第2回「大したことないって、言ってたのに(汗)」

「こんなのオイル漏れのウチに、入らないよ!」と言ってた993カレラのオイル漏れが、実はちょっとした“お漏らし状態”だったと発覚。特にひどかったのはカムカバーからの漏れで、いざ走らせるとこれが、エキゾーストにかかって “煙モーモー状態”だった(汗)。大したことないって言ってたのに~!! そんな初期トラブルを乗り越えて、今月はめでたく初試乗です!! (※この記事はGENROQ 2018年4月号の「ロングターム・レポート」に加筆・修正したものです)

Porsche 911 Carrera(’95/Type993) LONG-TERM REPORT Vol.1

ポルシェ 911(タイプ993)ロングタームレポート:第1回「突然ですが“空冷”買いました」

「空冷バブルは弾けた」と言われながらも、相も変わらず高値安定を続ける“空冷”ポルシェ 911。かつての中古価格を知る者ならば「欲しいけど、買わないよねぇ〜」な一台に、この期に及んで手をあげたヤツがいた! しかも現物を一度も確認せず、男のフルローン!? 時代遅れのドン・キホーテでも構わない! 根性の空冷レポートが、いま始まる!!(※この記事はGENROQ 2018年3月号の「ロングターム・レポート」に加筆・修正したものです)

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

モータージャーナリスト。自動車雑誌『Tipo』の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した…