またもや人気が爆発しそうな新型「メルセデスAMG G 63」日本初試乗

「フルモデルチェンジした新型もバカ売れ間違いなし!」乗って確信した「メルセデスAMG G 63」の衝撃進化

見た目はほとんど変わらないが、エアインテークの形状変更や、新たにリップスポイラーを採用している。
見た目はほとんど変わらないが、エアインテークの形状変更や、新たにリップスポイラーを採用している。
1979年の誕生以来、唯一無二の変わらないスタイリングを維持するGクラス。日本でも“超”がつくほどのこの人気モデルがついに大幅な進化を遂げた。空力や静粛性の向上はもちろんのこと、走りの性能も大幅にパワーアップしていた。(GENROQ 2024年11月号より転載・再構成)

Mercedes-AMG G 63

乗ればすぐにわかる、走りの質感の大幅な向上

今回の改良でISGによる電動化や静粛性の大幅な向上、MBUXの採用など、商品力が大きく向上したG 63。
今回の改良でISGによる電動化や静粛性の大幅な向上、最新インフォテインメントシステムMBUXの採用など、商品力が大きく向上したG 63。

今の日本において、Gクラスじゃなければ走破できないような荒れ果てた道など存在しないと思う。ファンだってそんなことは百も承知のはずだが、それでもSUV世界のひとつの頂に触れないわけにはいかないのだろう。

1979年にはじまるゲレンデヴァーゲン~Gクラスに続くオフローダーの歴史。そのゆったりとした時間の中で、基本的なシルエットはそのままに、時代と足並みを揃えるための進化が繰り返されてきた。中でも特に話題を呼んだ出来事が、今から5年前に行われたビッグマイナーチェンジだろう。

金庫のようなと評されるスクエア基調のスタイリングは完全刷新の瞬間においてもほぼ不変のまま。それでもキャリーオーバーされたパーツは数個しかないという伝統的な1台の徹底的な改変劇だったのである。

構造的には本格クロカン車の象徴であるフロントアクスルがリジッドから独立懸架に。その結果として直進性、快適性がアップした! というトピックに注目が集まったわけだが、メーカーの狙いはもっとスケール感の大きなものだった。つまり電動化やADASといった時代が求めるスタンダードへの適合である。

独立懸架となったフロントサスにしても、「Gクラスをより乗用車的にしたかった」というよりもレーンキープ機能を成立させるうえで電動パワステとともに不可欠なギミックだったということなのだと思う。

0→100km/h加速は驚異の4.4秒

今年の春に発表されたBEVのGクラス「G580ウィズEQテクノロジー」の完成を目論みつつ全面的な刷新が図られたGクラス。前回の刷新から5年が経過した今、SUVモデルのフラッグシップとしては異例なほどの人気が続く1台にビッグマイナーチェンジが施されるというのは自然な流れのように思える。

新たに登場したGクラスは2種類。ディーゼルのG450dと、4.0リッターのガソリンV8ツインターボを搭載するメルセデスAMG G 63である。パワートレインで目新しいのは、どちらもISGの搭載によって電動化されたこと。またGクラスとして初めてMBUXが採用されたことも、現代のメルセデスに欠かせないアップデートといえるだろう。今回はハイパーブルーマグノと呼ばれるマットな新色を纏ったG 63を箱根のワインディングで試乗した。

Gクラスの定石通り、予備知識なしに「新型だ!」と看破することは難しい。AMGモデルなのでグリルは縦方向に仕切られたパナメリカーナ調。だが今回はフロントバンパーの左右に開けられたインテーク内のルーバーも縦になったことが識別点となっている。

またAピラーの端の折り返し部分とフロントガラスとルーフの接続部にリップスポイラーが装着され、空力性能を向上させているという。メーカーの仕事らしからぬ後処理的な感じもするのだが、衝立のように立ちはだかったGクラスの前面だけに、かなり効きそう。また風切り音の減少にも効果があるだろう。消音効果という点ではB、Cピラー内やフロア周辺に吸音材が新たに仕込まれている。基本的な開発は終え、あとは職人の手で重箱の隅を突く段階? ともあれ着々と守備固めが行われている印象である。

まっ平らなボディ側面に備わったドアハンドルは相変わらずのゴツさで、ピストルのトリガーのような重めの感触でガチッと開く。乗り込んで閉めるときには鼓膜をやられてしまいそうな感じだが、そうならないのは空気抜きの穴がちゃんと完備されているからに違いない。

インストールされたひと通りのADAS

室内の眺めも外観と同じで、これまでのものとそれほど大きな違いはなさそうだ。だがセンターコンソールの中心に据えられているGクラスの走行性能の核というべきディファレンシャルロックのスイッチまわりのデザインは刷新されていた。

これまでは前後とセンターのデフロックをコントロールする3つのスイッチだけだったパネル内に、「オフロードコクピット」を呼び出すボタンと、マニュアルシフト選択のMボタン、そして副変速機によるローレンジ選択のボタンも追加されている。マニュアルシフトとローレンジのスイッチはこれまでセンターコンソール下にあったのだが、それらを「オフロード関係」として中央に集めたのは英断だと思う。しかもグローブをした手でも操作しやすい大きめのスイッチというのも、オフロードを知り尽くした仕事という感じがする。

新型のG 63ではステアリングも変更されている。これは現行のメルセデスで見慣れたマルチファンクションステアリングホイールなのだが、これが備わったということはGクラスにひと通りのADASがインストールされた証明といえるだろう。

所有する喜びを満たしてくれる上質なシート

また目立たないところではMBUXの初搭載、キーレスゴーやワイヤレスチャージング、温冷機能付きのカップホルダーなどが装備されているというのも守備固めの一環か。

トラックのように高いアイポイントから周囲を見渡しつつ、箱根のワインディングを駆け上がる。AMGの職人が組み上げた4.0リッターV8ツインターボ、M177ユニットのパワーはさすがで、2.5t越えの車重がウソのように軽く感じられた。また姿勢変化に連続性があることも従来型との違いとしてすぐに理解できた。

5年前、フロントサスペンションが独立懸架になったGクラスを初めてドライブしたときも、ウエイトリフティングの選手が体操の選手に変身したような滑らかさに心打たれた。だがマイナーチェンジであるはずの今回のインパクトも、あの時と同じかそれ以上に大きかった。

超コンフォートライドなサスペンションシステム

AMGアクティブライドコントロールサスペンションの実力を知ってしまうと、もう他のSUVに乗る気になれなくなるかも。
AMGアクティブライドコントロールサスペンションの実力を知ってしまうと、もう他のSUVに乗る気になれなくなるかも。

走りはじめの力強さは20‌PSを発生するISGのおかげだろう。だが発進加速でもコーナリングでもボディが不思議なくらい揺すられないのはなぜか? ついにエアサスを装備したに違いないと思い、パーキングスペースでホイールハウス内を覗き込んでみたのだが、バネは普通のコイルスプリングだった。

その代わりダンパーの見た目が大いに気になった。削り出しのアルミ筐体で下部に凝ったかたちの電子制御バルブユニットが見える。1本で100万円くらいしそうなゴツいダンパーこそ、今回新たにG 63に標準装備された「AMGアクティブライドコントロールサスペンション」の正体である。物理的なスタビライザーなしでロールをアクティブに制御する、というとマクラーレンのシステムが思い浮かぶ。だがこれは地を這うようなスーパーカーではなく、重量級のSUVなのだということを忘れてはならない。とんでもない加速度の重量物を、48Vの力業でなだめつけているのである。

姿勢制御の想像以上の進化と比べたら、MBUXやADASの仕上がりも上々とはいえ他のメルセデスでも味わえる機能に過ぎない、という見方もできるだろう。新型Gクラスの肝となるのは1クラス上のプレミアムな動的質感をもたらしてくれるサスペンションシステムにこそあるのだ。これを体験すると、アクティブな装置が付かないG450dのフィーリングにも興味がわいてくる。

代替わりするごとに滑らかになった、といっても特有のゴワついた感じが個性としても受け入れられていたGクラス。そのドライバビリティに大きな革命が起きたのである。

スタイルがほぼ同じなだけに、どの世代のGクラスに乗っていても対外的な違いはないだろう。それでも最新モデルの仕上がりは図抜けている。違いが分かるGクラス乗りがその事実を知ってしまうと、心中穏やかではいられないだろう。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年11月号

SPECIFICATIONS

メルセデスAMG G 63ローンチ・エディション


ボディサイズ:全長4690 全幅1985 全高1985mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2570kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:430kW(585PS)/6000rpm
最大トルク:850Nm(86.7kgm)/2500-3500rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後275/50R20
燃料消費率:6.8km/L(WLTC)
車両本体価格:3080万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

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著者プロフィール

吉田拓生 近影

吉田拓生

1972年生まれ。趣味系自動車雑誌の編集部に12年在籍し、モータリングライターとして独立。戦前のヴィンテ…