【フェラーリ名鑑:28】フル4シーターと4輪駆動で飛躍するフェラーリ

フェラーリ新世代4シーター「FF」「GTC4 ルッソ」の革新性はどこにある?(2011-2016)【フェラーリ名鑑:28】

【フェラーリ名鑑:28】フル4シーターと4輪駆動で飛躍するフェラーリ
4輪駆動とフル4シーターを与え実用的なGT性能を備えた「FF」。
スーパースポーツモデルは、高い運動性能のトレードオフとして実用性や快適性は二の次になりがちだが、世界中には両立を求める我儘なカスタマーが数多くいるのも事実。そうしたニーズに完璧な対応を果たしたエポックメイキングなモデルが、4輪駆動とフル4シーター、大容量ラゲッジスペースを備えたフェラーリのV12モデル「FF」だ。

Ferrari FF / GTC4 Lusso

斬新なシューティング ブレークで登場した「FF」

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車名の「FF」は、4輪駆動と4シーターの“フォー”から採られた。実用性を備えたフェラーリとして高い評価を得ている。

2011年に、それまでのフルサイズ2+2GT、612 スカリエッティの生産が終了すると、フェラーリはさほど長い時間を必要とすることなく、その後継車の発表を行った。

それまでのピニンファリーナによる流麗なボディスタイリングからは一転、シューティング ブレークのスタイルにも通じるシルエットは、そのモデルがいかに機能性に富むモデルであるのかを主張するだけの説得力に満ち溢れたものだった。その車名は「FF(フェラーリ フォー)」。それが正式なネーミングである。

V12自然吸気エンジン&4WDシステム

フル4シーターにシューティングブレークスタイルを与え、既存のフェラーリモデルにはない独自のアピアランスを実現。
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簡易的な+2シーターではなく、実用に耐える独立式のリヤシートを採用。スポーツモデルとしては大容量なラゲッジスペースも魅力。

FFには、それまでのフェラーリにはなかった、さまざまな試みが採用されていた。それを象徴するアルファベットこそが「F」であり、それはもちろん“Four=4”を意味する。4WDの“4”、4シーターの“4”、いち早くFFを購入したカスタマーは、過去のフェラーリにはない斬新さを高く評価した。

FFに搭載されるエンジンは、6262ccのV型12気筒DOHC(自然吸気式)。フロントに搭載されるこのエンジンから4輪にトルクを伝達する方法は比較的シンプルなもので、クランクシャフトの後方から後輪向けのトルクが7速F1マチックに向けて、そして前方からは2速ギヤボックスに向けて出力される仕組みである。

ただし、4WDの走行モードに入るのは4速までと限られる。最高出力は660PSとされ、アイドリングストップ等を行うHELEシステムも日本仕様などでは標準装備化されていた。

シートは2+2ではなくフル4シーター。後席の快適性は非常に高い。後席のさらに後方には450リットルほどのラゲッジルームが備わるが、後席を収納すれば約800リットルの容量まで拡大する。もちろん過去にはこのようなフェラーリなど存在しないことから、レジャーなどにも使えるはじめてのフェラーリとして話題となった。

30PS向上した「GTC4 ルッソ」は2016年にデビュー

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FFから進化を果たしたGTC4 ルッソは2016年に発表。車名に付された「Lusso」は高級あるいは豪華を意味する。
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フロントベイに搭載される6.3リッターV12は最高出力690PS/最大トルク697Nmを発生。4輪操舵システムの採用もトピックだ。

そして2016年2月になると、FFのビッグマイナーチェンジ版ともいえる「GTC4 ルッソ」がデビューを飾る。GTCとはフェラーリがかつて250や330などで使用したネーミングだ。イタリア語で“高級”、あるいは“豪華”を意味するルッソもまた、250で人気のモデルだった。

GTC4 ルッソは、一見するとFFと共通のボディを使用しているようにも見えるが、実はルーフラインからそのデザインは見直されている。柔らかな丸みを帯びたことで、より優雅なグランツーリスモ(GT)としてのキャラクターを感じられるようになった。

搭載されるエンジンは、FFと同様の6262ccの排気量をもつV型12気筒DOHC。最高出力はさらに30PSのエクストラを得て690PSを発揮する。FFで新採用された4WDシステムである4RMはそのままこのGTC4 ルッソにも受け継がれているが、それに加えて新たに4輪操舵システムを採用。

高速域での安定性と、低速域でのシャープなコーナリングを実現するほか、市街地などでは最小回転半径が縮小されたことにより、取り回しの良さが際立つようになったのも大きな特徴だろう。

V8ツインターボを搭載する「GTC4 ルッソ T」

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GTC4 ルッソのバリエーションモデルとして、V8ツインターボを搭載してリリースされたGTC4 ルッソ T。高い運動性能を発揮した。

さらに2016年9月には、3855ccのV型8気筒ツインターボエンジンを搭載する「GTC4 ルッソ T」が追加設定される。これは、カリフォルニア Tに搭載されて好評を博したV8ツインターボエンジンを移植したもので、後輪操舵システムを受け継ぎながらも駆動方式はシンプルなRWDにしたことなどから、V12モデルのGTC4ルッソより、ウエイトが50kgほど軽量になっていることが大きな特徴。4シーターとはいえ、魅力的なスポーツ走行が楽しめるようになった。

もちろん、ラゲッジルームの容量やシートのサイズ、そして装備の内容など、実用面では12気筒モデルから大きな変化はない。V8ツインターボが発揮する最高出力は610PSと、12気筒のGTC4 ルッソと比較して80PSほど低い設定となるものの、それでもその走りはフェラーリ自ら“スポーツGT”と主張するほど運動性能は高く、0→100km/h加速3.5秒を実現する。

SPECIFICATIONS

フェラーリ FF

年式:2011年
エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)
排気量:6262cc
最高出力:486kW(660PS)/8000rpm
最大トルク:683Nm/6000rpm
乾燥重量:1790kg
最高速度:335km/h

フェラーリ GTC4 ルッソ

年式:2016年
エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)
排気量:6262cc
最高出力:507kW(690PS)/8000rpm
最大トルク:697Nm/5750rpm
乾燥重量:1790kg

フェラーリ GTC4 ルッソ T

年式:2016年
エンジン:90度V型8気筒DOHCツインターボ(4バルブ)
排気量:3855cc
最高出力:449kW(610PS)/7500rpm
最大トルク:760Nm/3000– 5250rpm
乾燥重量:1740kg
最高速度:320km/h

※すべてメーカー公表値

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…