【ランボルギーニ ヒストリー】カウンタックの後継「ディアブロ」誕生

名作カウンタックの進化形として登場した「ディアブロ」(1990)【ランボルギーニ ヒストリー】

【ランボルギーニ ヒストリー】カウンタックの後継「ディアブロ」誕生
マルチェロ・ガンディーニのデザインを纏い、カウンタックの後継モデルとして誕生した「ディアブロ」。
クライスラー傘下となったランボルギーニは、カウンタックの跡を継ぐ次期型V12ミッドシップスポーツの開発に勤しむ。そうして生まれたのが、イタリア語で悪魔を意味する伝説の闘牛から命名された「ディアブロ」だ。

Lamborghini Diablo

カウンタックの後継車として開発

カウンタック同様、ガンディーニの手によって描かれたデザインは、如何にもランボルギーニ。カウンタックの正統後継車であることをひと目で認識させる。

新たにランボルギーニを手中に収めたクライスラーが何よりも優先したかったのは、12気筒ミッドシップのカウンタックをニューモデルへと進化させ、さらにプロダクションモデルのラインナップを整理することだった。

カウンタックの最終進化型であるアニバーサリーは、確かに魅力的な商品ではあったが、社内のエンジニアリング・チームは、すでにカウンタックに代わる新型車の開発プロジェクトがP132の社内コードを掲げてミムランの直々の指示によって1985年にはスタート。カウンタックの先にあるべきものの姿を模索する動きが積極的になり始めていた。

最高速度の目標値は315km/h以上

当時のランボルギーニは資金的にも余裕がないため、カウンタックをベースにディアブロを開発。唯一異なるのはカウンタックでは実を結ばなかった4WD版(後のディアブロ VT)の実現を視野に入れて開発されたことだった。

カウンタックをフルモデルチェンジすること。これはカウンタック アニバーサリーの生産途中にミムランから新たにランボルギーニの経営権を譲り受けた、アメリカのクライスラーにとっても最優先すべき案件だった。ミムランはP132プロジェクトをスタートするにあたり、それを「十分な視界を確保した快適で安全な」、「カスタマーからの親近感が得られる」、そしてもちろん「カウンタック以上の運動性能を実現」するとともに「世界各国の排出ガス規制をクリアする」モデルにすることと命じていた。

目標とした最高速度は実測値で315km/h以上。ジュリオ・アルフィエーリをチーフに、そしてルイジ・マルミローリという優秀な頭脳を擁していた当時のエンジニアリング・チームは、あたかも創業直後のダラーラとスタンツァーニのコンビが再びランボルギーニに復活したかのようだった。

デザインはカウンタックと同様、ガンディーニに

カウンタック アニバーサリーに続くモデルとはいえ、全体的にシンプルなラインで構成されるディアブロのデザイン。とはいえ、実車の迫力は相当だった。

さまざまな検討を重ねた結果、エクステリアとインテリアのデザインはカウンタックと同様に、すでにベルトーネから独立して自身のデザインスタジオを興していたガンディーニに依頼。シャシーやパワートレインの基本構造はカウンタックのそれを受け継ぐことが決定された。

当時のランボルギーニには、新たなパワーユニットを開発する資金的な余裕はなく、P132においてもカウンタックと同様にパワーユニットを前後逆方向に後方のエンジンルームから搭載するという設計を継承するほかに選択肢はなかったのだ。ただし、P132では新たな試みが行われることも決定した。それはかつてスタンツァーニがチャレンジしようとした4WDモデルの設定。コンパクトなビスカスカップリングを用いることで、それを実現しようと試みたのだ。

V型12気筒エンジンはカウンタック アニバーサリー譲り

ミッドに搭載されるV型12気筒エンジンは、カウンタック アニバーサリーから排気量を拡大することで、492PSを実現。37PSのパワーアップを果たした。

P132には「ディアブロ」というネーミングが与えられ、1990年に誕生した。この時点で8気筒モデルのジャルパは生産が終了しており、生産が細々と続いていたLM 002も1993年にはモデルラインナップから姿を消す。つまりディアブロは、1990年代のランボルギーニがほぼ唯一生産したモデルともいえる。それに対する期待度は、ランボルギーニはもちろん、クライスラーにとってもきわめて大きなものであったことは当然だろう。

最初に登場したディアブロに搭載されたエンジンは、5702ccのV型12気筒DOHC48バルブで、これはカウンタック アニバーサリー用のものをベースに、ボア、ストロークの両方を拡大したものだ。カムシャフトはそれぞれに独立したチェーンで駆動され、さらにクランクシャフトへとつながるもう1本のチェーンが存在する。ブロックとヘッドは、いずれもアルミニウムとリチウムによる合金製。60度のバンク角は、かのビッザリーニによって設計された、350 GTV用のV型12気筒エンジンからはじまったランボルギーニ伝統の設定だ。

シザースドアも継承

カウンタックよりも室内空間は広がり、実用的になったインテリア。セミバケット形状のシートなど、よりスポーティな仕立てが際立つ。

ガンディーニによるデザインには、クライスラーの意向でいくつかの修正が加えられたが、それでもいかにもランボルギーニ製のスーパースポーツといったその姿は、現代の目で見ても大きな魅力を感じる。

左右のドアはもちろんシザースドア。カウンタックに比べてキャビンの居住性が大幅に高まったこと、そしてフロントに備わるラゲッジルームの使い勝手もディアブロの魅力としては見逃せない部分といえる。

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ ディアブロ

発表:1990年
エンジン:60度V型12気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:5707cc
圧縮比:10.0
最高出力:361kW(492PS)/6800rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1490kg
最高速度:295km/h

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

ミウラP400の生産ラインとされる写真。ずらりと並ぶV12エンジンは壮観だが、実際に生産されているとは思えないほど整然としている。

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自動車メーカーは単に商品を売るだけではなく、その歴史やブランドをクルマに載せて売っている。しかし、イメージを確固たるものにする道のりは決して容易ではない。本連載では各メーカーの歴史から、そのブランドを考察する。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…