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HUMMER EV Edition 1
ハマーEVを実現したGMのEV新機軸
米国最強のトラックとも言われるハマーが、1000馬力超、しかもEVのSUVとしてマーケットに戻ってきた。試乗したのは、2022年夏。GMCが傘下に入っているゼネラルモーターズが北米ミシガン州に持つテストコースで、ピックアップボディの「エディション1」をドライブしたのだ。感想は「すごい」のひと言。
ハマーEVは、従来のハマーの後継車の位置づけで、2019年に発表された。まずSUT(スポーツユーティリティトラック)とも呼ばれる「ハマーEVピックアップ」が登場し、遅れて2023年前半にクローズドタイプの荷室をもった「ハマーEV SUV」が発売される予定だ。
ハマーEVが実現したのは、「アルティウム」と名づけられたGMのモジュラー式バッテリーゆえだ。車両のタイプに合わせてバッテリーの数(つまり出力を左右する容量)を変えられる。
大柄なボディを緻密に制御する
今回私が乗った「エディション1」は現時点ではもっともパワフルな仕様で、バッテリー容量は246.8kWhに達する。ちなみに日産サクラのバッテリーは20kWh。おかげでハマーEVエディション1は1000HP(約746kW=1014ps)の最高出力と、350マイルの航続距離を誇る。
デザインは、パワフルな内容をそのまま表現している印象だ。幅広さが強調されているボディと、さらに張り出したフェンダー、それに上下幅が狭く車幅いっぱいに広がったフロントグリルと一体型ヘッドランプ、といったぐあい。
テストコースはオフロード用なので、小山あり下りあり、岩場あり砂利あり泥あり、といったぐあい。ハマーEVはどこもソツなくこなす。そして砂利の平坦な道では、アクセルペダルを多めに踏み込んでも、V8ガソリンエンジンのSUVとちがい、リアが外側にふくらむこともない。挙動がていねいに制御されているのに感心。
めちゃくちゃ速い4.5t車
コブが連続する波状路では、エアサスペンションと、ハイトの高いタイヤが、凹凸によるショックをきれいに吸収し、かつ、フラットな姿勢を保つ。きついターンでは後輪操舵システムのおかげで取り回しにすぐれることも確認できた。
大胆ともいえる外観だが、走りは安定していて、かつ静かで、こりゃすごい、というのが私の感想。高速道路でも速そうだが、「タイヤの性能に左右されるので、いまのタイヤだと時速106マイル(約170km/h)が限界ですね」と前出のGMCのエンジニア。
なにはともあれ、体感的にもめちゃくちゃ速い。車重は4.5トンあるというのに、0-100km/h加速がたったの約3秒。6.5リッターV12に全輪駆動システムと4輪操舵システムをそなえたフェラーリ・プロサングエの3.3秒をしのぎ、ポルシェ911ターボよりコンマ2秒遅いだけ。
図抜けた電動SUV
ハマーEVのダッシュボードには、TFT液晶の大型モニターがふたつ。中央の13.4インチのインフォメーション用のモニターで、さまざまな機能が操作できる。たとえば「アルトラビジョン」。18ものカメラを車内からモニターでき、なかにはボディ下面もあって悪路などで役にたつ。
軽快な走り、頼りがいのある悪路走破性、快適な乗り心地、ボディサイズに対して意外なほど扱いやすいマヌーバビリティ……。ハマーEVは図抜けた電動SUVである。価格は8万4650ドル(約1200万円)から(編註:634psのハマーEV2。エディション1は完売)。
「(今回試乗した)エディション1は発売したら10分で売り切れてまして、3Xをはじめとする量産モデルにしても、北米でもとうぶんは待っていただかないと」とGMCの担当者。ただし日本では、残念ながら、販売の予定はないそうだ。