次期型「ランボルギーニ ウラカン」が搭載する超高回転V8ツインターボ

「ランボルギーニ ウラカン」の後継車が搭載するV8ツインターボは10000rpm級超高回転ユニット

V10に代わって登場するV8ツインターボPHVパワートレイン。排気量は4.0リッターだ。
V10に代わって登場するV8ツインターボPHVパワートレイン。排気量は4.0リッターだ。
「ランボルギーニ ウラカン」の生産終了と同時に、珠玉のV10自然吸気ユニットはその役割を終える。そして後継モデルにはどんなエンジンが搭載されるのか。その概要がついに明らかになった。

ウラカン後継モデルに搭載

バンク角は90度。Vバンクの間にターボチャージャーを搭載するホットV方式。
バンク角は90度。Vバンクの間にターボチャージャーを搭載するホットインサイドV方式。

2003年に登場したガヤルドに搭載されてデビューしたV10エンジンは、その後約20年に渡ってランボルギーニの中核を担ってきた。同社の魂と言うべきフラッグシップがV12エンジンモデルであることは疑いの余地はないが、販売の中心は間違いなくガヤルド、そしてウラカンへと続いたV10エンジン車だ。ガヤルドとウラカンを合わせた販売台数はおよそ4万台、もちろんランボルギーニの歴史の中でも最大の台数であり、近年のランボルギーニの発展はこのV10エンジンがなければなし得なかった、といっても過言ではないだろう。

そのV10エンジンも、ウラカンの終了と共についにその役目を終える。ウラカンの後継モデルに搭載されるパワーユニットがどうなるのかは、以前からクルマ好きの間で噂されていたが、ついにランボルギーニからその概要が明らかにされた。

「Lamborghini634」というコードネームが与えられたウラカン後継モデルに搭載されるのは、V8ツインターボエンジンにモーターを加えたPHV。先に発売された12気筒エンジンの最新モデル、レヴエルトもPHVだがエンジンは自然吸気。Lamborghini634はランボルギーニのミッドシップスーパースポーツカーとしては初めてのターボエンジン車となる。エンジンは完全な新開発で排気量は4.0リッター。公開された写真を見ると、バンク角は定石の90度、2つのターボチャージャーはバンクの中に配置されるホットV方式を採用する。オイル供給はドライサンプ方式でエンジン高を可能な限り低く抑え、コンロッドはチタン製で軽量化と高剛性を両立、インジェクターは350barの直噴式を採用するなど、そのディテールはスーパースポーツカーにふさわしいスペックが並ぶ。

レーシングエンジン並みの超高回転

ドライサンプによりホットVながらエンジン高は低い。左側のモーターの後ろに8速DCTが接続される。
ドライサンプによりホットVながらエンジン高は低い。左側のモーターの後ろに8速DCTが接続される。

クランクシャフトはフラットプレーンタイプなので排気干渉もなく高回転まで一気に吹け上がる。その最高回転数はなんと10000rpmというから驚いてしまう。市販エンジンであれば自然吸気でさえ9000rpmも回れば脅威的な高回転ユニットと言われる(ポルシェ911GT3の4.0リッター水平対向6気筒自然吸気が9000rpm、レヴエルトの6.5リッターV12気筒自然吸気が9500rpm)のに、ターボエンジンで10000rpmというのはこれまでの常識を覆す超高回転で、もはやレーシングエンジン並みだ。最高出力の800PSも9000〜9750rpmという超高回転で発生する。最大トルクは730Nmで、ターボエンジンらしく4000〜7000rpmという広い回転域で発生するのが特徴だ。

モーターはレヴエルトと同様に3基。1基はエンジンと8速DCTとの間に配置され、その最高出力は110kW(150PS)、最大トルク300Nm(30.6kgm)、ということ以上のアナウンスは今のところない。だが間違いなく残りの2基のモーターはそれぞれがフロント左右輪を駆動し、トルクベクタリングを行うことになるだろう。フロントモーターの出力は不明だが、レヴエルトは3基のモーターの最高出力が110kW(150PS)、最大トルク300Nm(30.6kgm)なので、Lamborghini634もそれと同様となることが予想される。エンジン単体のパワーがレヴエルトを25PS下回っており、モーター出力が同じであると想定すると、トータルのパワーはレヴエルトの1015PSより25PS低い990PSあたりか。

レヴエルトと同じ2軸式の横置き8速DCT

写真で見るとリヤモーターはかなり薄型だが、レヴエルトと同じものだとすると1基あたりの重量は18.5kgという軽量。バッテリー搭載位置や容量などは明らかにされていないが、レヴエルトと同じくセンタートンネル部分に搭載してホイールベースの短縮と重量物の中央配置、そして低床化を図っていると思われる。また8速DCTはレヴエルトと同じく2軸式の横置きで、パワーユニット全長が短くなるような工夫が図られているようだ。

ランボルギーニのチーフ・テクニカル・オフィサー(CTO)のルーヴェン・モールはこのエンジンについて以下のように雄弁に語っている。

「サンタガータで新開発されたV8ツインターボエンジンは、ランボルギーニが誇るV10がさらに進化したものと言えるでしょう。トルクカーブはまるでレーシングエンジンのようであり、フラットプレーンクランクの採用によって高性能と極めて印象的なサウンドを実現し、また重量の軽いチタン製のコンロッドは回転をスムーズにします。このエンジンはツインターボにもかかわらず10000rpmを実現します。これは本当に驚くべきことです」

20年間もランボルギーニの中心的存在だったV10エンジンがあまりに素晴らしかったために、その後継ユニットがどのようなものになるのか、不安と期待が入り混じった想いでいるファンも多いことだろう。しかし公表された概要を見ると、新たに登場するV8ツインターボエンジンは今まで以上に我々を楽しませてくれそうだ。

Lamborghini634は2024年内の発売が予定されている。これでランボルギーニのラインナップはすべてPHV化されることになるが、それはもちろんスーパースポーツカーブランドでは初めてのことだ。

発表会場となったチェントロ・スティーレ。そこで我々を待っていたのは、「REVUELTO」(レヴエルト)のプレートを掲げた一台の新型12気筒ミッドシップだった。

「1000PS超のV12PHEVスーパースポーツ」新型ランボルギーニ レヴエルト誕生

ついにランボルギーニがアヴェンタドールの後継となる新型V12フラグシップスーパースポーツ「レヴエルト」を発表した。同社初となるプラグインハイブリッドである。ランボルギーニ設立60周年の金字塔となるか? チェントロスティーレで行われた事前発表会を取材した山崎元裕が報告する。

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。古典的ジャイアンツファン。卵焼きが好き。愛車は993型ポルシェ911。カメラはキヤノン。