【フェラーリ名鑑:29】V8ミッドシップシリーズはターボの時代へ

ミッドシップV8フェラーリは自然吸気からターボへ「458イタリア」「488GTB」(2009-2018)【フェラーリ名鑑:29】

【フェラーリ名鑑:29】V8ミッドシップシリーズはターボの時代へ
フェラーリのV8ミッドシップシリーズは新たなフェーズを迎え、458 イタリアから488 GTBへと発展する。
フェラーリのストラダーレ=ストリートモデルの中核を担うのはV8ミッドシップシリーズ。360から430で現代的なデザインとシステムを獲得したV8ミッドシップシリーズは、さらにパフォーマンスを高めるべく458 イタリア、そして488 GTBへと進化していく。

Ferrari 458 Italia / 488 GTB

2009年9月「458 イタリア」デビュー

フェラーリ458イタリア_07
2009年にデビューしたV8ミッドシップシリーズの後継モデル「458 イタリア」。

それまでのF430に変わるニュージェネレーションの8気筒モデルとして、フェラーリが「458 イタリア」をワールド・プレミアしたのは、2009年9月に開催されたジュネーブ・ショーでのこと。すでにそれ以前から、現在では定番ともなったティーザー戦略で、ジュネーブで何か大きなニュースがフェラーリから発信されることは明らかにされており、それはおそらくF430に続く8気筒ベルリネッタだろうということは、そのネーミングやスペックを除けば十分に予想できた。そのぶんデビュー時に感じた衝撃は、やや小さかったのかもしれない。

実際にジュネーブで初対面した458 イタリアが非常に斬新で新しさを感じたモデルに見えたのは、やはり特徴的なヘッドランプで強い個性を発揮したフロントマスクによるところが大きかった。フロントグリルの両サイドに設けられるエアインテークは、ラジエーター等の冷却という機能をもつと同時に、それ自身が弾性ウイングレットとして機能し、高速走行時には変形してダウンフォースを発生させる仕組みだ。フェラーリによれば、200km/h走行時のダウンフォースは140kgとされる。

DCTに改められたトランスミッション

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車名の「458」は4.5リッターV8エンジンから採られた。最高出力570PS/最大トルク540Nmを発揮。

ミッドに縦置き搭載されるエンジンは、458という車名が示すとおり4497ccのV型8気筒DOHC(自然吸気式)。組み合わせられるトランスミッションは、前作のF430まではシングルクラッチ式だったが、この458 イタリアに至り、ついに7速F1マチック=DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)に進化を遂げている。

シングルクラッチでは、いかにクラッチの切断時間が短くなったとはいえ、それは厳密にはゼロでないから、例えばコーナリング中にパドルを引いてシフトするような場面には抵抗を感じることがあったのは事実。それがDCTを得た458 イタリアでは、躊躇なくシフトできるようになったのだ。ちなみにミッドのV型8気筒エンジンの最高出力は570PSを発揮した。

リトラクタブル・ルーフのスパイダーと限定モデルのスペチアーレ

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利便性と対候性の高いリトラクタブル・ルーフを採用するオープンモデル「458 スパイダー」は2011年にデビュー。
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458シリーズのスペシャルモデルとしてリリースされた「458 スペチアーレ」。

2011年のIAA(フランクフルト・ショー)では、新たにオートマチックのリトラクタブル・ルーフを採用した「458 スパイダー」が発表された。ウェイトはクーペのイタリア比でプラス50kg、ボディの捻じり剛性は35%の低下を強いられるが、その優雅なスタイリングで販売は好調だった。

また2013年には、この458世代のスペシャルモデルに相当する「458 スペチアーレ」、2014年にはそのオープンモデルとなる「458 スペチアーレ アペルタ」が誕生。後者は499台の限定車として発売された。

本格的なターボ時代を実感させた「488 GTB」

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458シリーズのマイナーチェンジモデル「488 GTB」。前モデルとはかわり、車名の数字は1気筒あたりの排気量から採用されている。

348からF355へ、そして360からF430へ。この前例を考えれば、フェラーリが458 イタリアにビッグマイナーチェンジを加え、ひとつの世代における驚異の進化を果たすだろうことは誰もが予想できた。そしてその予想は、2015年のジュネーブ・ショーにおいて「488 GTB」として現実のものとなる。458のシルエットをそのまま継承しつつも、リヤフェンダー周りのデザインは、かつての308世代のそれにインスピレーションを得て、大胆な造形に変化。また、フロントノーズにはF1マシンのウイングにインスピレーションを得たデザインが採用された。

ちなみに、このとき同時に注目されたのは、この488 GTBが発表される直前に、長年にわたりフェラーリを成功へと導いた、ルカ・ディ・モンテゼモーロ氏が同社の会長を退いたこと。その影響にもメディアの興味は集中していた頃だった。

670PSを発揮するV型8気筒ツインターボ

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最高出力670PS/最大トルク760Nmを発生する3.9リッターV8ツインターボエンジン。
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2018年に発表された488 ピスタ。エンジンスペックは488 GTBと変わらないが、車重は90kgも軽い。

488 GTBのエンジンは、実に670PSもの最高出力を発揮する3902ccのV型8気筒ツインターボ。前身の458 イタリアでは総排気量+気筒数だった車名の数字は、この488では1気筒あたりの排気量へと再び改められた。

ターボに使用されるコンプレッサーホイールを低比重のチタンアルミ合金製に、またボールベアリングの採用やツインスクロール化といった技術による優れたレスポンス性も、488 GTBに展開されたターボ技術の特徴だ。さらに2015年のフランクフルト・ショーでは「488 スパイダー」がデビューした。

その後、2018年にはスペシャルモデルの「488 ピスタ」、「488 ピスタ スパイダー」も台数を明らかにせず生産を開始。それらは今後、貴重なコレクターズアイテムとなることも間違いないだろう。

SPECIFICATIONS

フェラーリ 458 イタリア

年式:2009年
エンジン:90度V型8気筒DOHC(4バルブ)
排気量:4497cc
最高出力:419kW(570PS)/9000rpm
最大トルク:540Nm/6000rpm
乾燥重量:1380kg
最高速度:325km/h

フェラーリ 458 スパイダー

年式:2011年
エンジン:90度V型8気筒DOHC(4バルブ)
排気量:4497cc
最高出力:419kW(570PS)/9000rpm
最大トルク:540Nm/6000rpm
乾燥重量:1430kg
最高速度:320km/h

フェラーリ 458 スペチアーレ

年式:2013年
エンジン:90度V型8気筒DOHC(4バルブ)
排気量:4497cc
最高出力:445kW(605PS)/9000rpm
最大トルク:540Nm/6000rpm
乾燥重量:1290kg
最高速度:325km/h以上

フェラーリ 458 スペチアーレ A

年式:2014年
エンジン:90度V型8気筒DOHC(4バルブ)
排気量:4497cc
最高出力:445kW(605PS)/9000rpm
最大トルク:540Nm/6000rpm
乾燥重量:1340kg
最高速度:320km/h以上

フェラーリ 488 GTB

年式:2015年
エンジン:90度V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3902cc
最高出力:492kW(670PS)/8000rpm
最大トルク:760Nm/3000rpm
乾燥重量:1370kg
最高速度:330km/h

フェラーリ 488 スパイダー

年式:2015年
エンジン:90度V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3902cc
最高出力:492kW(670PS)/8000rpm
最大トルク:760Nm/3000rpm
乾燥重量:1420kg
最高速度:325km/h

フェラーリ 488 ピスタ

年式:2018年
エンジン:90度V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3902cc
最高出力:530kW(720PS)/8000rpm
最大トルク:770Nm/3000rpm
乾燥重量:1280kg
最高速度:340km/h

フェラーリ 488 ピスタ スパイダー

年式:2018年
エンジン:90度V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3902cc
最高出力:530kW(720PS)/8000rpm
最大トルク:770Nm/3000rpm
乾燥重量:1380kg
最高速度:340km/h

※すべてメーカー公表値

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

粛々と、着実に電動化を進めるフェラーリ。今回集めた3モデルはミッドシップである点を除けば、異なる点の多いスポーツモデルだ。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…