【フェラーリ名鑑:24】スポーティなオープンエアクルーズを提供する2+2

2+2のフロントV8フェラーリの魅力「カリフォルニア」そして「ポルトフィーノ」(2008-2017)【フェラーリ名鑑:24】

【フェラーリ名鑑:24】スポーティなオープンエアクルーズを提供する2+2
V8エンジンをフロントベイに搭載し、オープントップで2+2シートをもつフェラーリ カリフォルニア 。
スーパースポーツカーブランドとして展開するフェラーリだが、利便性の高い2+2シーターモデルも市場の求めに応じて生産してきた。ここではモンディアールシリーズの後継としてデビューした「カリフォルニア」から「ポルトフィーノ」を解説する。

Ferrari California / Portofino

2008年、エントリーモデル「カリフォルニア」デビュー

2008年にデビューしたフェラーリ カリフォルニア。2+2シートに電動式リトラクタブル・ハードトップを採用する。

2+2GTのモンディアール・シリーズが生産を中止した後、フェラーリはしばらくV型8気筒エンジンを搭載する2+2モデルの生産を行っていなかった。だが市場ではそれを望む声は小さくなかったのだろう、2008年のパリ・サロンでフェラーリはその後継車ともいえるニューモデル「カリフォルニア」を発表し、2009年から本格的な販売を開始した。

カリフォルニアというネーミングは、これもまたフェラーリのファンの耳には心地良く響くものだ。かつてピニンファリーナ製のボディを組み合わせて誕生した250 GT スパイダー カリフォルニアは、250シリーズの中でも最も優雅で人気の高いモデルとしてファンから羨望の眼差しを集めた1台。そのネーミングが復活したばかりか、フルオートマチックで容易にオープン&クローズが可能なリトラクタブル ルーフをもつことなど、実用性においても現代に復活したカリフォルニアの魅力は非常に高かったのだ。

V型8気筒エンジンをフロントに搭載

カリフォルニアはまた、フェラーリのラインナップにおいては、そのボトムレンジを担うモデルでもあり、新たなカスタマーをフェラーリというブランドへと導くエントリーモデルとしての役割も果たしていた。デザインはもちろんピニンファリーナによるもので、ボンネット上のスリットや、フロントフェンダーのスリットには、250 GT スパイダー・カリフォルニアのイメージが残されている。

前身ともいえるモンディアールと大きく異なるのはエンジンの搭載位置で、このカリフォルニアは460PSの最高出力を発揮する4297ccのV型8気筒エンジンをフロントに搭載した。ちなみにこのカリフォルニア用のV型8気筒エンジンは、458イタリア用のそれとは異なり、90度クランクを採用したもの。直噴式の燃料供給を採用したのも話題となった。リヤに搭載され、重量配分の最適化を実現するトランスミッションは、デュアルクラッチ式の7速F1マチック。なおこのカリフォルニアはフレームもボディもすべてがアルミニウム製だ。

30PS向上&30kg軽量化した「カリフォルニア 30」

2012年にはマイナーチェンジが行われ、さらに30PSのエクストラと、フロントセクションの剛性強化、そしてサスペンションセッティングの変更などが行われた「カリフォルニア 30」が誕生。

“30”とは30PSの強化ともに30kgの軽量化(剛性などの強化策が施されながらも重量は維持)を意味する。また同時に、よりスポーティなハンドリングを可能とする「ハンドリング・スペチアーレ」がオプションにより選択できるようになった。

V8ターボを搭載した「カリフォルニア T」

ストリートモデルではF40や288 GTOなどのスペチアーレにしか採用しなかったターボを解禁したカリフォルニア T。

そして真のビッグマイナーチェンジはその2年後、2014年に行われる。この時に誕生した「カリフォルニア T」に搭載されたエンジンは、3855ccの直噴V型8気筒ツインターボ。車名のTはもちろんターボを表す。排気量はそれまでのカリフォルニアから大きく縮小されたものの、最高出力はターボによって大幅に向上し、552PSという数字が新たにスペックシートに記された。

エクステリアでは灯火類やマフラーのデザインが変更されたほか、フロントグリルやボンネット、フロントフェンダーのアウトレット等もリニューアルされ、より洗練されたスタイルが実現している。

2017年「ポルトフィーノ」として生まれ変わる

ポルトフィーノの3.9リッターV8ターボは最高出力600PSを発揮し、最高速度は320km/h以上というハイパフォーマンスを実現する。

そして2017年には、フェラーリの2+2GTは「ポルトフィーノ」へとフルモデルチェンジした。ハードトップを採用したクーペ・カブリオレのデザインは、このポルトフィーノでも同様。そのスタイルはカリフォルニア・シリーズにも似ているが、ポルトフィーノはフェラーリのデザイン・センターが担当した。

直噴のV型8気筒ツインターボエンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するという基本設計に変化はなく、エンジンはカリフォルニア Tのそれをベースとするものの、ピストンやコンロッドなどの主要部品は変更され、吸排気システムやマネージメントシステムにも改良の手が加わった。最高出力は遂に600PSを達成。最高速度は320km/h以上。フェラーリのエントリーモデルとはいえ、その動力性能や運動性能は、まさに世界の第一線に並ぶ実力を有しているのだ。

SPECIFICATIONS

フェラーリ カリフォルニア

年式:2008年
エンジン:90度V型8気筒DOHC(4バルブ)
排気量:4297cc
最高出力:338kW(460PS)/7750rpm
最大トルク:485Nm/5000rpm
乾燥重量:1630kg
最高速度:310km/h

フェラーリ カリフォルニア 30

年式:2012年
エンジン:90度V型8気筒DOHC(4バルブ)
排気量:4297cc
最高出力:360kW(490PS)/7750rpm
最大トルク:505Nm/5000rpm
乾燥重量:1630kg
最高速度:312km/h

フェラーリ カリフォルニア T

年式:2014年
エンジン:90度V型8気筒DOHCターボ
排気量:3855cc
最高出力:412kW(560PS)/7500rpm
最大トルク:755Nm/4750rpm
乾燥重量:1625kg
最高速度:316km/h

フェラーリ ポルトフィーノ

年式:2017年
エンジン:90度V型8気筒DOHCターボ
排気量:3855cc
最高出力:441kW(600PS)/7500rpm
最大トルク:760Nm/3000–5250rpm
乾燥重量:1545kg
最高速度:320km/h

※すべてメーカー公表値

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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根強い人気を誇ったフェラーリの2+2シーターモデルは、1972年にデビューした「365 GT/4 2+2」で大幅なイメージチェンジを果たす。ピニンファリーナによる直線基調のスタイリングをもつ通称「400シリーズ」は、排ガス規制に翻弄されながらもロングセラーになった。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…