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Audi A6 Avant e-tron concept
市販化を予告する現実的なフォルム
2021年に発表されたA6 e-tron コンセプトと同様に、今回発表されたA6 アバント e-tron コンセプトも、アウディが独自に開発し未来を見据えた「PPEプラットフォーム」に基づく専用の電気駆動システムを採用。同時に、A6 e-tron コンセプトと同じディメンションが与えられた。
ラグジュアリークラスに属するこのコンセプトカーの寸法は、全長4.96m、全幅1.96m、全高1.44mで、そのラインはアウディの現代的なデザイン言語を採用している。クローズドシングルフレーム、横幅一杯に広がるリヤライトストリップなどの主要なデザイン要素は、アウディの電気自動車「e-tronシリーズ」との関係性を強調するものだ。
エクステリアの造形は、スポーツバックと同様シンプルなデザインを特徴とする。そのボディラインとエレガントなプロポーションは将来の市販モデルを予告するもので、アウディブランドの電動ラグジュアリークラスがどれほどダイナミックでエレガントなクルマになるのか、そのヒントを提供するものだという。
ポルシェと共同開発したPPEテクノロジー
今回、アウディのリーダーシップの下でポルシェと開発したPPEテクノロジーを初めて採用。PPEはこれまでに例のない幅広いモデルに対応できるように設計された電動プラットフォームで、最初にアウディ A6シリーズが属するCセグメントで採用し、続いてSUVやCUVも追加される。PPEプラットフォームをベースにしたアウディの量産モデルは、2023年の後半から順次市場に導入される予定となっている。
PPEの採用はその後、Bセグメントにも拡大される予定。さらにPPEは最上位のDセグメントでも優れた技術プラットフォームとして利用することが可能となっている。アウディ AG技術開発担当取締役、オリバー・ホフマンは、A6 アバント e-tron コンセプトについて次のようにコメントした。
「私たちは、A6 アバント e-tron コンセプトにより、新しいPPEテクノロジープラットフォームをベースにした将来の市販モデルに採用する具体的な姿を提示しました。45年のサクセスストーリーを誇るアバントを、ただ単に電動化しただけではありません。何よりも必要なのは、高度なテクノロジーを採用して人々に感動を与えることです。特にこれにはパワフルな800Vのテクノロジー、急速充電270kWへの対応、WLTPに基づく一充電走行距離最大700kmの航続距離が含まれています」
PPEテクノロジーにより700㎞もの航続距離を確保
A6のエンブレムが示すように、このコンセプトカーはビジネスクラスに属すことを明確に強調する。1968年に登場したこのモデルファミリーは(1994年まではアウディ 100という名称で販売)は、世界最大のボリュームセグメントにおいてアウディを代表する1台。1977年以来、シリーズには常に「アバント」モデルが設定されてきた。アバントは革新的かつ非常にエモーショナルな方法で、ステーションワゴンを再解釈したモデルだと言えるだろう。
ダイナミックなラインと非常に優れた多用途性を備えたアバントはまったく新しいカテゴリーを生み出し、その後、競合他社は次々のこのコンセプトに追従するモデルを発表した。「Avant garde」(アバンギャルド)と1995年にアウディが広告で使用していたスローガンの造語であるアバントは、発売されると同時に高い人気を博し、美しいステーションワゴンの代名詞として認知されるようになった。
今回、PPEテクノロジーを採用することにより、長距離走行に使用するクルマとしての実用性を備えながらも、ダイナミックなドライビングパフォーマンスを表現することが可能になった。将来的に市販される「A6 e-tron」は、最大700㎞(WLTP基準)の一充電走行距離が確保される。
シリーズでもっともパワフルなモデルは、0-100km/hをわずか4秒未満で加速。800Vのシステムと最大270kWでの充電に対応し、急速充電ステーションでわずか10分間充電すれば、約300kmを走行することができるという。
紛れもなく「e-tron」をアピールするデザイン
A6 アバント e-tron コンセプトのダイナミックなプロポーション、エレガントなライン、そしてアウディブランドの特徴となっているアバントらしいリヤセクションのデザインを見れば、このクルマが風洞実験室から生み出されたことが一目瞭然だろう。
エアロダイナミクスはアウディの長い成功の歴史において常に重要な役割を果たしてきた。第3世代の「アウディ 100/C3」が達成したCd値(空気抵抗係数)0.30は、その当時のすべてのクルマの中で最高の数値であり、現在でも自動車史における伝説となっている。アウディは1982年にはすでにライバルから抜きんでた存在となっており、その後何年もの歳月を経た現在でも、リーダーとしての存在感を示している。
先に発表された電気自動車ファミリーのA6 e-tron コンセプトは、機能とフォルムを再び完璧に融合することで、このサクセスストーリーに新たな章を追加した。Cd値0.22はCセグメントに属する電気自動車としては前例のない優れた数値となる。
今回、公開されたA6 アバント e-tron コンセプトは伸びやかなルーフラインにより、そのCd値はセダンを0.02上回っており、空気抵抗が極めて少ないことを意味している。これによって電力消費量を削減し航続距離を伸ばすことが可能になった。
アバントとしての伝統を体現したエクステリア
22インチの大径ホイールと短いオーバーハング、フラットなキャビン、そしてダイナミックなルーフラインは、スポーツカーを連想させるプロポーションを提供。 明確なエッジが存在しないデザインにより、凸面と凹面がスムーズにつながってボディパネル全体にソフトな陰影がもたらされている。特にサイドから見ると、あたかもひとつの大きな塊から削り出したように見えるだろう。
緩やかなスロープを描くリヤサイドウインドウのデザインと傾斜したDピラーは、アバント・モデルの典型的な特徴となる。Dピラーはショルダーラインから上方へと立ち上がり、流れるようなラインを描きながらリヤエンドへとつながっている。印象的な「quattro」ブリスターは、ボディの幅広さを強調すると同時に、ボディサイドに有機的な曲面を形成している。
前後のホイールアーチは、彫刻的な造形のロッカーパネルで接続。ブラックのインレイが特徴的なロッカーパネルは、この位置にバッテリーが搭載されていることを示し、アウディブランドの電気自動車「e-tron」を象徴するデザイン要素となっている。また、他のe-tronシリーズと同様、Aピラーの基部には先進的なカメラベースの「バーチャルエクステリアミラー」が装着された。
e-tronを象徴するデザインエレメントを随所に採用
フロントから見ると、アウディブランドの電気自動車であることがすぐに分かるだろう。そのハイライトは、ドライブトレイン、バッテリー、ブレーキを冷却するためのエアインテークを左右に備えた、大型のクローズド(閉じられた)シングルフレームグリル。フラットなヘッドライトベゼルは、フロントエンドの側面まで伸び、水平基調のボディラインを強調する。
風洞実験室から生まれた空力効果は、リヤセクションに明確に表れている。アッパーリヤエンドは空気の流れを切り裂くようなデザインを採用。カラートリムを備えたリヤスポイラーは水平基調のシルエットを視覚的に強調する。さらに、このスポイラーはエアロダイナミクスを改善するために重要な役割を担うものだ。
下部セクションは、大型リヤディフューザーのエアアウトレットがバンパーエリアと統合。カラートリムを採用したこれらのコンポーネントは、風の流れを整えながらエアフローを車両の下へと導く。これらの完璧な組み合わせにより空気抵抗が低減し、リフトが最小化された。
ショーモデルのスポーティなシルエットは、ネプチューンバレーと呼ばれる温かみのあるグレーのカラーによって強調されている。このボディカラーは、日陰ではモダンで控えめな外観を特徴としているが、太陽の下では顔料の効果が最大限に発揮され、光の当たり方によってさまざまに色合いが変化。柔らかいゴールドカラーで見る者を魅了している。
車高の低いモデルにも導入可能なPPE
PPEプラットフォームは電気自動車専用に設計されているため、電動モデルとしてのメリットを最大限に活用することが可能。今回公開されたアバントも含め、将来登場するPPEをベースにした車両の重要な特徴は、前後アクスル間に搭載された約100kWhのバッテリー容量となる。
車両ベース全体を有効に活用することで、比較的フラットなバッテリーレイアウトを実現。このレイアウトにより、PPEプラットフォームの基本的な構成を変えることなく、車高の高いSUVモデルのみならずA6 アバントをはじめとした車高の低い乗用車にも使用可能になった。
PPEは車両のバッテリーサイズとホイールベースを柔軟に変更することが可能なため、様々なセグメントの車両に採用することができる。PPEモデルの長いホイールベースにより、パッセンジャーコンパートメントには、広々としたスペースが生み出される。これは、あらゆるセグメントにおいて大きなメリットとなる。さらに、技術面から見ると、電気自動車はトランスミッショントンネルを必要としないため、一般的に内燃エンジン搭載車よりも広いスペースを享受できる。
もちろん、トランスミッショントンネルがなくとも、アウディのオーナーは「quattro」全輪駆動ドライブシステムを選択することが可能。近未来のPPEモデルには、フロントとリヤアクスルにそれぞれ1基の電気モーターを搭載したバージョンが用意され、電気モーターを制御することで、オンデマンドの4輪駆動システムを実現する。
700kmを超える優れた航続距離
e-tronファミリーには、エネルギー消費量と航続距離を最適化したベースバージョンも用意。この場合、1基の電気モーターがリヤアクスルに搭載される。今回、アウディ A6 アバント e-tron コンセプトは、2基の電気モーターを搭載。最高システム出力350kW、最大トルク800Nmのトルクを発揮する。
サスペンションは、フロントには電気自動車用に最適化された5リンク式サスペンションを、リヤにはマルチリンクタイプのサスペンションを採用。さらにこのコンセプトカーはアダプティブダンパーを備えたアウディエアサスペンションも装備している。
アウディ A6 アバント e-tron コンセプトの技術的なハイライトは、800V充電テクノロジーだろう。e-tron GT クワトロと同様、急速充電ステーションを利用すれば、最大270kWの出力により非常に短時間で充電することができる。また、25分以内でバッテリー容量を5%から80%まで充電可能だ。アウディはPPEテクノロジーとともに、この革新的なテクノロジーをミッドレンジとラグジュアリーセグメントの量産モデルに初めて導入する。
駆動システムと出力により異なるが、A6 e-tronファミリーの一最大航続距離は700kmを超えるため、長距離走行にも適していると言えるだろう。