21世紀に蘇った“新型カウンタック”をオリジナルと比較する

新旧カウンタックの違いを検証。ランボルギーニのスーパーカーが遂げた50年の進化

ランボルギーニ カウンタックのLP 400とLPI 800-4
ランボルギーニの生んだ傑作スーパーカー、カウンタックに最新モデルが誕生した。写真上がオリジナルのLP 400、下が最新のLPI 800-4。今回はその新旧カウンタックを比較する。
アウトモビリ・ランボルギーニは、2021年8月に新型車「カウンタック LPI 800-4」を発表。かつて一世を風靡した傑作スーパーカーを、現代の技術で21世紀に蘇らせた。112台の限定モデルとしてリリースされた最新のカウンタックに、オリジナルとの共通項は存在するのか。LP 400とLPI 800-4を比べてみたい。

Lamborghini Countach LP 400 × Countach LPI 800-4

ミウラのバトンを受け取ったカウンタック

ミウラからカウンタックへ──1974年、自動車史上最も大胆なバトンパスが行われた。すでに伝説となっていたV12ミッドシップスーパーカーの後継として、ランボルギーニはさらに挑戦的なモデルを発売。この大胆なアプローチにより、彼らは独自のクルマづくりの姿勢を世間へ強烈に印象づけることに成功した。

カウンタックのプロトタイプが最初に披露されたのは、1971年3月のジュネーヴショー。マルチェロ・ガンディーニがデザインしたその姿は、まるで未来そのものだった。あまりに斬新な容貌のため、あくまで“ショー向け”に作られたものと人々に思われたほどであった。

しかし、それから3年後。そのビビッドなスタイルそのままに量産化がスタート。以降、カウンタックはスーパーカーブームを牽引する1台として君臨し、16年にわたり販売されることになる。ちなみに「countach」はイタリア・ピエモンテ地方の方言で、驚いたときなどに発する言葉。現地では“クンタッチ”や“クーンタッシュ”と発音され、「カウンタック」の呼称は日本特有のものである。発表前のプロトタイプを初めて見た近隣の農家の人間が、そのデザインを見てあげた驚愕の声が「countach!」だったから、などネーミングの由来には諸説ある。

“21世紀のカウンタック”が112台限定で登場

オリジナルのプロトタイプ発表からちょうど50年後の2021年、アウトモビリ・ランボルギーニは「カウンタック LPI 800-4」を発表した。アヴェンタドールをベースにしたハイブリッドマシン「シアン(Sian FKP37)」のテクノロジーを応用して、カウンタックは21世紀最新鋭のスーパーカーとして復活を遂げたのである。

生産台数112台のみに限定されるスペシャルモデルとして登場した“新生カウンタック”はどんなクルマなのか。祖先と比較しながら、そのキャラクターを探ってみたい。ちなみに112台という数字は、初代のカウンタックが「LP 112」の型式で設計・生産されたことに由来するという。

ウェッジシェイプ+シザーズドアを継承

LPI 800-4の地を這うように低く、ウェッジシェイプの効いたボディは、ランボルギーニ社内のチェントロ・スティーレが手掛けたもの。そのシンプルでクリーンなラインは、明らかに鬼才マルチェロ・ガンディーニの描いた初代のそれにオマージュを捧げている。

横長のグリルデザインや、ヘッドライト(流石に新型はリトラクタブルではないが)、ボディサイドのNACAダクトなどのディテール部分も、初代LP 400の要素を上手に再解釈して現代的なデザインとして仕上げている。もちろんドアは上方に跳ね上がるシザーズ式だ。

デザイン要素はそのままにサイズは大幅に拡大

2台のムードは似ているが、ボディサイズはもちろんまったく違う。

■ボディディメンション■
LP 400=全長4140×全幅1890×全高1070mm、ホイールベース2450mm
LPI 800-4=全長4870×全幅2099×全高1139mm、ホイールベース2700mm

LPI 800-4の大きさは現行のアヴェンタドールに極めて近く、1595kgの乾燥重量はシアンと同値。ちなみにLP 400の空車重量は1370kgだった。

継承されたV型12気筒エンジン

LPI 800-4は「V12エンジンを縦置きミッドシップ」するという点ではLP 400と同じだが、スーパーキャパシタを電源とするマイルドハイブリッド機構を搭載する最新メカニズムを採用している。結果、半世紀前のマシンを圧倒的に凌駕するパフォーマンスを実現した。

■パワートレイン■
LP 400=総排気量3929cc、ボア×ストローク82×62mm、最高出力375cv/8000rpm、最大トルク360Nm/5000rpm、0-60mph(約97km/h)加速6.8秒、最高速度192mph(約309km/h)

LPI 800-4=総排気量6498cc、ボア×ストローク95×76.4mm、最高出力780cv/8500rpm、最大トルク720Nm/6750rpm、モータ最高出力34cv、モーター最大トルク35Nm、システム最高出力814cv、0-62mph(100km/h)加速2.8秒、最高速度355km/h

LP 400が実際に300km/h超の最高速度を実現できたかどうかについては疑問の余地があるものの、いずれにしても「その時代における最高峰の性能」を標榜しているという点では新旧ともに共通している。

駆動方式とトランスミッションは現代技術でアップデート

なお、LPI 800-4はその驚愕のパワーを確実に受け止めるべく、駆動方式には4WDがチョイスされた。なお、タイヤは専用設計のピレリPゼロで、サイズは前255/30ZR、後355/25ZR21。オリジナルカウンタックのミシュラン XWX 14インチとは比べようもないほど立派なシューズを履かされている。

トランスミッションは、祖先が5速MTだったのに対し、新型ではシングルクラッチ式の7速セミAT「ISR」を採用。オリジナルのステアリングは生涯をノンパワーアシストで通したが、もちろんLPI 800-4は可変ギヤレシオ機構を搭載したLDS(ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング)仕様がデフォルトである。

2022年第4四半期からデリバリーを開始

ランボルギーニ カウンタックのLP400、LPI 800-4、25周年アニバーサリーモデルの3台
ランボルギーニ カウンタックのLP 400(写真左)とLPI 800-4(同中央)、最後尾は創業25周年を記念して1988年に登場した“アニバーサリー”。ランボルギーニはいつの時代にも、ひと目みて“それ”と分かるスタイルを貫き続けてきた。

LPI 800-4の公式な価格は公表されていないが、税抜きで200万ユーロ(約2億8000万円)という説も聞こえている。ちなみに初代LP 400の価格はおよそ2000万円だった。物価水準の違いやV12エンジンの稀少性、112台の限定生産となるプレミアム性を鑑みれば、2億円超えは当たり前と考える向きも少なくないはずだ。なにしろ、発表前の段階で112台の納車先はすでに決定していたのだから。

LPI 800-4は2022年第4四半期のデリバリー開始を予定している。個性派揃いのスーパーカーの中で随一の存在感を誇ったかつてのカウンタックのように、21世紀のカウンタックも再び伝説を築くことができるだろうか。

会場にはカウンタック LP 5000 QVも展示されていた。まさに新旧カウンタック揃い踏みという奇跡の光景。

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伝説のスーパーカー、カウンタックのオマージュとして誕生したカウンタック LPI 800-4。…

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著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…