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シグマ躍進の発端
シグマがシステムカメラ「fp」を表参道で発表した時、このメーカーが本当にカメラメーカーとして、伝統のニコン、キヤノン、ペンタックス(リコー)、オリンパス、新興大手のソニーやパナソニックと比べられるメーカーになったのだなと、しみじみと感じつつ、しかし少なからず感動を覚えた。
そもそもの発端は2018年9月。ドイツ・ケルンで発表されたライカ、パナソニック、シグマの共同発表。この時、この3社がLマウント規格を発表し、新しい世代の35mmフルサイズなシステムカメラを開発すると衝撃的な発表をしたのだ。すべてのコンパクトシステムカメラの元祖ともいうべきライカ、世界的大企業のパナソニックと肩を並べて同格での提携というだけで涙モノなのは、シグマという会社が“カメラメーカーを作りたい”との一心で創業された小さなベンチャーだったからだ。
まさかこんなに面白いことをしてくれるとは!
システムカメラはレンズが命。ところが老舗はレンズマウント規格を独占する。独自にカメラを開発しながらも、他社向けレンズの開発・販売で生きながらえてきたのがシグマだった。ところがベンチャー精神旺盛なシグマは、フォビオンという極めて独自性の高いイメージセンサーメーカーを買収。独自のカメラを開発し続けてきた。その経緯あってのLマウントである。ライカとパナソニックを盟友とし、孤独な戦いに終止符を打ったのだ。が、そうなると、もちろんライバルは強大な2社。そこにぶつけてきたのが、フルサイズセンサーを搭載しながらも、カメラの核となる部分だけを小さな塊としたミニマル志向のfpだったのだ。
「システムカメラ」という言葉は、レンズやストロボなど周辺機器を含めたシステムで構成しているからこそ。fpはシステムカメラの形を踏襲しつつ、その解釈を拡大しているところが面白い。「fp」とは、それぞれフォルテッシモとピアニッシモの頭文字。最小限の核となるボディにフルサイズセンサーを詰め込み、システムによる拡張で映画撮影用カメラ(と映画用のシネレンズ)にまで対応できる。最小限のフルサイズだけれど、最大のシステムにも対応できることを意味しているのだ。
マルチユースのシステムカメラ
たった370gのボディ。そこにシグマだけではなくライカ、パナソニックのレンズを組み合わせるだけではなく、キヤノン製を含む多様なレンズにも対応。さらには映画撮影用レンズも装着できる。静止画と動画の切り替えもシンプル。極めて潔いミニマルな設計思想に、無限とも言えるシステムアップの世界。まさに“あなた好みに”変形していく愉快さがこのカメラにはある。
そんなfpが某大手カメラ店チェーンで4月にNo.1になったとか。理由を聞けば納得。USB-Cケーブルで接続するだけで、なんの苦労もなくfpをウェブカメラにできるのだそうだ。他社も専用アプリで追従しているようだが、フルサイズセンサーに370gのミニマルボディだからこそ、ウェブカメラとしてもみんなが飛びついた。従来の形にとらわれない新しいシステムカメラ。久しく感じていなかったカメラへのワクワクを感じさせる1台だ。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2020年 10月号
PRICE
オープン価格
評価
動画・静止画を素早く切り替えられる点はいいが、極小ボディだけに操作性には限界も。しかしシステムアップの可能性は高く、さまざまな場面で最適なカメラを構成する核として魅力的。周辺機器やアクセサリの充実に期待したい。
コストパフォーマンス:4
使いやすさ:3
拡張性:5
携帯性:5
画質:4
【問い合わせ】
シグマ カスタマーサービス部
TEL 0120-9977-88
https://www.sigma-photo.co.jp